新しい挑戦

森本千絵(アートディレクター、コミュニケーションディレクター)×近藤良平(振付家、ダンサー)

2022

06.24

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森本さんは、今年、主宰するデザインチーム「goen°」の15年周年を記念して、SHOP&SPACE『goen°』をオープンし、現在は、Mr.Children30周年を記念したアートワーク展が開催されています。

友だちが増えていく空間



森本
「goen°」の1階が空くことがわかって、後先考えずに借りちゃったんです。いくら私でも最初は、ちょっと不安になりました。でも、何もない空間に立ってみたら、やれるかもと思って、借りてから、Mr.Childrenの皆さんに、30周年の企画のプレゼントの時に「私、お店から始めるんです」と言ったら、桜井さんたちから「森本さん、何を売るんですか?」と聞かれ、「何を売るかまだ決めていません。」と。そこから、最初に正月飾りを作るところから始まったんですけど、近藤さんにも声かけさせて頂いて、まず、パワースポットにして行こうと思ったので大好きな写真家などあらゆる人に声をかけて、ぎっしり44人近くのグループ展をやったんです。

近藤
実はその展示に感銘を受けたんですよ。いろんな職種の人がいて、その人の持っている気持ちをグループ展という名において集めるのはすごくいい発想だなと思って、ちょっと仲間な気持ちになって。

森本
そして、今は、「Dear Mr.Children展」を開催中で、私がアートディレクターになったきっかけも、近藤さんたちとお会いして「goen°」を作ったきっかけも全部の大事なタイミングは、Mr.Childrenでアウトプットしてきたから「goen°」が、15周年で「goen°」の展示やってくれって言われても多分 Mr.Childrenになる。それだったら30周年のお祝いにこんな狭いスペースでも展示させてくださいと言ったら、あえて「逆に面白いね」と言ってくださったのですが、蓋を開けたら大変。予約制で、もう秒でチケットがなくなってしまい、申し訳ないなと思って、会期は長く6月26日まで設定して、できるだけ私もいるようにしています。店という場をやるとまた友だちができましたね。グループ展から来てくれている人がいて、お店のファンの人ができて、すぐ裏に住んでいるおばさまと仲良くなったり、その人にとっては、Mr.Children との出会いになる。

近藤
理想的な店だな。

森本
7月7日からは「この世界 全てのキャンパス 鈴木杏のアトリエ展」をやるんです。鈴木杏さんがずっと描き続けてきた絵をもとに日本で初めて独自の絵の具を作り出した月光荘さんとキャンバスや絵の具を撒き散らかして、誰でも立ち寄ってショーウィンドウで、絵を描いたら面白いなと思って。「街ピアノ」という番組が好きで、「街アトリエ」をやってみようと思って。

近藤
子供も訪れるね。

森本
夏休みだから。鈴木杏さんもたまにショーウィンドウを描くと言っています。


肩書きはなんでもいい!



近藤さんが、芸術監督に就任された彩の国さいたま芸術劇場は、優れた舞台芸術などの先鋭的発信地として芸術文化に身近に接する機会を提供しています。新しい肩書きも増えた近藤さんに芸術監督としての意気込みをうかがいました。

森本
芸術監督になられて、いつもとスタンスは変わりましたか?

近藤
それは変わらないようなふりをしているけれども。

森本
変わったでしょ? 芸術監督ですよ。蜷川幸雄さんの後ってこと?

近藤
そうそう。 一応、芸術監督室もあって、蜷川さんの遺影が残っていたり、本棚もあったり、でもドキドキしちゃって。総務部とか技術部とかいろんな人たちの視野を広げるのに慣れてないから、ネクタイは、しなくてもいいけどそこが一番変わった気がする。

森本
芸術監督の仕事は演目も決められるんですか?

近藤
それもある。

森本
あと、自分で呼んでくるのは?

近藤
はい。「アメリカン・ユートピア」を呼びたいと言ったら呼ぶんですよ。言うだけ言ってみよう。そう考えると急に面白い反面、責任もありますね。そして、地域とつながること。あと、個人だと限界があるけど、一つくくりが大きくなるので、アートや文化人、伝統の人とかいろんな人に会う可能性は増えたかもしれない。
でも焦ると、いっぱいいっぱいになって、キャラじゃないと思うので、その辺は抜け穴を作ったほうがいいなと思いつつ。
森本
面白くなりすぎてもいっぱいいっぱいになりますね。

近藤
そうそう。程々がいいなと思うね。でも芸術監督という言葉が偉そうだよね。千絵ちゃんだって、肩書きがカタカナで言い過ぎじゃないですか。

森本
なんでもいいですよ。

近藤
僕も芸術監督と言っておきながら実はなんでもいいなと思っている。理想は何も言わずに絵を描いたり。

森本
人と人が出会って風合いから感じる力が育っていれば肩書きはいらないけど言語から、どこぞのものなのかをきっちり把握して入ってきたいい順番の人もいるから。

近藤
その辺が急に僕も一番まともになったところかな。


*「goen°」でのアートワーク展『Dear Mr.Children展』は、6月26日まで開催中です。

*近藤さんがプロデュースするオープンシアター「ダンスのある星に生まれて2022」は、8月20日・21日の2日間にわたり彩の国さいたま芸術劇場他で開催されます。

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