Mr.Childrenのアルバムジャケット秘話

森本千絵(アートディレクター、コミュニケーションディレクター)×近藤良平(振付家、ダンサー)

2022

06.17

null

独立のきっかけ



近藤
僕、思いつきはいっぱいあるけど、それを実際に映像やモノにしてもいいと思ったのは「goen°」を通してですね。

森本
私はどっちかと言うと、形や物質に定着したり、残る映像を作る仕事だから。

近藤
そうなると、より公のものや手触りになったり、そういう風な広げ方があることを知り、思いついたことをなんとなくいろいろと言いたくなるんだよね。

森本
とりあえず会ってワインを飲んだり、その時間は多く過ごしましたよね。私にとって近藤さんは、面白い生き物と言うか、面白い外付け想像力みたい。最高のパワーを見つけたので、料理でもあるじゃないですか、入れると絶対に美味しくなるみたいな、オールマイティな調味料ではないけど、何の仕事が来ても新しいアイディアを出すのに近藤さんの存在をふりかけると化学反応が起こるだろうと当時はがむしゃらでした。そして、いろいろとふりかけているうちに、近藤さんは身体を通すものだから、美術の勉強をしてきた人に限らず小さい子からご高齢の人までを私と繋いでくれるアイディアになった。

近藤
大きくなりましたね(笑)。

森本
そうすると私に頂いているお仕事が、より多くの人に幅広く共感してもらえることに繋がっていって、それがコロコロと転がって、そういう仕事ができる人だと私が思われちゃって。

近藤
でも、こっちから見ていると、なんで、そんなに人が集まってくるの?

森本
私が好きな人がまた別で近藤さんと繋がっていて、いろんなご縁が起こった。コンドルズの人たちは、公演が始まっているのに、まだ作っているじゃないですか。例えば、3日間公演があって、初日を迎えたのに普通にアイディアを出していて、千秋楽の日もまだ話している。でも楽しそうで、そのアイディアを全員が平等に出して、「いいね」なんて言っていて、それぞれお話し聞いたら教授であったり准教授であったり IT関連であったりと仕事を抱えていて、コンドルズで集まって公演をやって、こんな風に信頼関係があって、頑なに代理店で一生懸命働いていた時、そんな人達に出会い、私、独立できるかもと思った。他にもMr.Childrenの仕事とかいろんなキッカケが同じ時期にはあるんですけれども何か大きな箱の中にいなくても、どこにいても表現ができる仲間がいる。何歳になっても続けられる自信に繋がって、気がついたら会社を辞めちゃったんです。誰よりも最初に近藤さんに相談して、「goen°」の名前も相談しましたよね。

近藤
2つぐらい候補があったね。

森本
事務所の立地も相談したし。

近藤
親戚のおじさんみたいなっているね。

森本
近藤さんに出会わなかったら多分「goen°」という会社名や場所づくりにはなってないというか、もっとちゃんとしていたと思う(笑)。


身体性を感じるアルバムジャケット



null

近藤さんとの出会いが、デザインチーム「goen°」の立ち上げにもつながったという森本さん。さらに、タイミングとしてあったのが、会社員時代からアートディレクションを担当しているMr.Childrenの存在です。現在、goen°がプロデュースするSHOP&SPACE『goen°』では、「goen°」15周年とMr.Children30周年を記念したアートワーク展が開催されています。

森本
Mr.Childrenのアルバム「HOME」のジャケットは家系図になっていて、よく考えたら家系図が思いついた時も最初に近藤さんのところになぜか飛んで行きましたよね。

近藤
「すごくいいアイディアを思いついた。これをやりたい」と。

森本
家系図で映像を撮影することになったから、家族を体で表現するとどうするのか相談しましたよね。

近藤
撮影が大変だろうとふさわしいメンバーがコンドルズにいると、一人、送り込みました。

森本
その人が、「goen°」の最初の社員になるんですね。そして、コンドルズをやるからと、「goen°」を辞めていったんですよ(笑)。

近藤
そこからコンドルズの要素が入っていくんですよ。

森本
紐を渡しあったり、向き合ったり、あの時、家系図が面白いから大きな踊りはしなくていいと言ったんですよ。正面を向いたり、そっぽを向いたりするだけで家族っぽいよねと言われてMr.Childrenの「HOME」というアルバムを聴きながら目の前ではコンドルズがいて、その二つがブレンドされたときに、「goen°」が生まれました。

近藤
直接、関わっていない作品も含めて身体性を感じちゃうのよ。例えば、「SUPERMARKET FANTASY」の距離感とか、人と人が見つめ合うとか、空を見上げるとか。

森本
私は教えを浸透していますかね?

近藤
だからこれ自分が作ったんだっけな?という気持ちになるんだよね(笑)。


これまでの記事

その他の記事