孤独だった幼少時代
桐島かれん(モデル)×内田也哉子(文筆家)
2022
05.20
桐島さんのお母さまは、作家の桐島洋子さん。アメリカ人の男性と恋をして未婚の母となった洋子さんは、仕事が忙しく、留守も多かったそうです。一方、女優の樹木希林さんと、ミュージシャンの内田裕也さんの一人娘として生まれた内田さん。いわゆる家族団欒を知らずに育ったというお二人は、いったいどんな幼少期を過ごしていたのでしょうか。
放任主義の家庭に生まれて
- 桐島
- うちは放任主義だった。
- 内田
- それはうちの家庭環境とも似ているけど常に愛とはなんぞやではないけど、それをずっと突き詰めているわけではないけど、家族を大切にしながら、家の中のことを充実させていく。単純にそういうものが好きだったけど、何か自分の幼少期では足りなかった物と言うと語弊があると思うけど。
- 桐島
- 也哉ちゃんは一人っ子だし、多分、鍵っ子でしょ?
- 内田
- そう。ご飯も一人で作って食べていた。
- 桐島
- うちも母はほとんど家にいなかったし、入学式や卒業式とか学校にも来てくれたこと一度もないし。
- 内田
- うちもない。
- 桐島
- 同じような経験をしてきていて、それで強くはなるかな。也哉ちゃんは自分のスタイルが確立しているじゃない。例えば、ファッションも生き方もそうだし、ライフスタイルもだし、誰誰さんみたいにしなきゃとかない。
- 内田
- それが抜け落ちてしまった(笑)。
- 桐島
- 希林さんもそういう人でないから、女の子だからこうしなさいとか、女の人だったらこういう格好をしなさいと言われたこともないでしょ。私もそんなこと言われたことはなかったし、多分旦那さんもそういうのを求めるタイプでないし。
- 内田
- そういう部分では共通項があるけど、かれんさんに本当に憧れて、どんな人でも男女問わずかれんさんみたいな生き方ができたらいいなと思う。人として美しいのは、もちろんだけど、かれんさんの中から泉のように湧き出る潤いみたいなものも、みんなに提供してくれるじゃない。本や映像、言葉だったり、だからそういうことで私たちは潤されるけど、どうやってそんなにモチベーションを常に、泉を絶やさないでいられるんだろうとは常に思っているし、いつも聞くけどでも、やっぱり本当に生まれてきたこと、地球や世の中を愛していると思う。
- 桐島
- 自分の生活、生きていることに感謝はしている。
- 内田
- まだ結婚する前はそれなりにぶつかったり、落ち込んだりしました?
- 桐島
- 40代まではこれでよかったかなと決断で悩んだりしたけど、もうすぐ60歳になるし、程度の失敗を繰り返してきたら、どうするべきかは察知できる。無駄もなくなってきたし、どんどん楽にはなっていく。手放していくし、無駄なものを排除していくし、そうしていくべきだし、楽にしていかなくちゃと、思ってしまう。
自分で切り開いていく
- 内田
- 私は人に興味があるから、自分が生きられなかった時間を人を通して疑似体験する。それは読書もだけど。
- 桐島
- なんでそんなに人に興味を持つの?
- 内田
- ずっとティーンエイジャーになるまで孤独な時間を過ごしてきたから、離婚はしてなかったけど母は、シングルで役者という仕事を持っていたからほとんどいなかったし、鍵っ子で放任主義だったけれども基本、ご飯は食べさせる。当時ちょっと早かったけど、マクロビみたいな玄米と一汁一菜を無農薬な野菜で食べさせておけば、それが愛として伝わるからこの子が何時に帰ってこようが誰とどうしてようが一回も聞かれたことないし、勉強しなさいなんて一度も言われたことない。
- 桐島
- 同じです。
- 内田
- だから逆に不安になっちゃうのね。
- 桐島
- わかる。
- 内田
- 自分で自分を管理することが身について、例えば、学校に関してもずっとインターナショナルスクールに行っていて日本語が不安だから途中から日本の公立の学校行ってみようというのも自分で全部プランニングして、フランス語もやってみたいからスイスに行ってみようとか、そういうのを、もし、母が手厚くやってくれていたら怠け者だから何にもしなかったと思うけど、常に危機感があったから、自分しか頼れるものがなくて。
- 桐島
- 自分で切り開いていくしかない。だからレールみたいのが全くなくて、それは自由だけど、一番過酷なのよ。普通は家庭があれば、例えば、ボーリング場のガーターに落ちないように親がしてくれるけど。だから、不安はあったと思う。19歳くらいの時は、「青の時代」と呼んでいるけど、「グレーの時代」かな、鬱々としていて、私は何だろう的な。その時、古典の文学を読んで、それで救われたかな。それが今でも引き出しになっている。ただ、私は何? というものはないんだよね。自分探しは理解できない。自分は自分じゃん。
- 内田
- そこに気が付けているかれんさんがすごいと思う。世の中、自分探しのワードに溢れているけど、結局、自分はこの植物と一緒で生きているわけだから、確固たる私はこんな形で、こんな内容でというものは形があるようでないもんね。だから、そこを追求する必要はなくて、むしろ「be here now」でないけど今を生きることが結果、命を閉じる時に振り返ったら、これが私だったということだものね。
- 桐島
- そういうこと。だから、生きている時は探せないよね。也哉ちゃんはいつもいろんなクエスチョンを持っている。でも、それは自分探しではない感じ。ブレるブレないというのはあるけど。
- 内田
- いつも揺れてはいるけど。
- 桐島
- 揺れてないと人はボキッと折れてしまうから。でも也哉ちゃんはそうでなくてバランス感覚がいい。