子育てがひと段落して
桐島かれん(モデル)×内田也哉子(文筆家)
2022
05.13
桐島さんは、モデルとして活躍する傍ら、ライフクラフトブランド「ハウス オブ ロータス」のクリエイティブディレクターも務め、世界中を旅して得た、さまざまなインスピレーションを生かした服や雑貨をプロデュースされています。一方、内田さんは、エッセイ、翻訳、作詞、ナレーションの他、音楽ユニットや女優など、多岐に渡り活動されています。
家族ぐるみのお付き合い
- 内田
- こんにちは。お久しぶりです。
- 桐島
- 也哉ちゃん、お久しぶり。
- 内田
- 普段はママ友と、ランチやカフェはしているけどね。
- 桐島
- 出会いは、UTAが生まれた後だったから。
- 内田
- 産んだのは21歳。
- 桐島
- もっくんと一緒にうちに遊びに来てくれて。
- 内田
- あの素敵な洋館。
- 桐島
- その後、たまたま子供たちが同じ学校で、私は子供が4人いて、3番目の娘が也哉ちゃんのお嬢ちゃんと大の仲良しで。
- 内田
- そう。今、ふたりともN.Yの大学に行っていて。
- 桐島
- 私たちが会うよりも娘同士の方が。
- 内田
- そう多分ほぼ毎日会っているよね。学校は違うけど、すぐ近くに住んでいて仲良し。
- 桐島
- 也哉ちゃんと私は結構、歳が離れているんですけれども、若いわりには、すごくしっかりしているところと、そうでない純粋な少女みたいなところと不思議なバランスで一緒にいると気持ちが和むというか、穏やかな気分になれる。
- 内田
- かれんさんの YouTube もインスタも見ているけど、お嬢さんのはんなちゃんが作った「せっかちなかれん」という素晴らしいショートフィルムがあって、それを見て涙が出てきて。
- 桐島
- なんで?
- 内田
- まず、あの小さかったはんなが自分のお母さんを客観的な目で、そして愛おしい目で自分の世界感を織り交ぜながら、表現していて素晴らしい。本当に感動して、私たち20何年間、子育てをしているけれど、こういうご褒美が待っている。子供が母親という自分の存在を見てくれている。一人の人間として女性として見てくれることがちょっと私にはまだまだ辿り着けない。
- 桐島
- 4人のうちの次女がアート系で。
- 内田
- みんなそれぞれ4人とも違う才能を開花していて、みんなバランスがいい。
- 桐島
- それぞれですね。性格は似ているけど。
- 内田
- いつもかれんさんに会うと色々聞き出そうとするけど、かれんさんは「私、何もしてない」と言うの。謙遜だと思うけど、私から見るとしっかり子育てしていたし、
- 桐島
- 母親にいつもバカにされていたよ。「なんで、子供の面倒なんて見るの。仕事しなさいよ」って(笑)。
- 内田
- そうよね。逆だったからね。でも、かれんさんは両方を同時にできたよね。ホームメイキングとファミリーレイジング、家庭を耕すことが同時進行で、お仕事のフィールドにも生かさせていて
- 桐島
- 実は、子供が本当に小さい頃は、ほとんど子育てに集中していたので、ホームメイキングかな。
- 内田
- いつぐらいから徐々に?
- 桐島
- 何かしたいエネルギーが出てきたのは、いきなり、自分の家を開放して、お店を始めた時。子供を育てながら何かできないかなと、子供を連れて世界中に買い付けに行って、子供が夏休みの間だけオープンするお店を始めた。それまでは子育てしかしてなかったから、社会から完全に切り離されて。
- 内田
- そういう孤独感は味わっていたんだ。
- 桐島
- 孤独感よりはフラストレーション。也哉ちゃんも大変だったでしょ? 今振り返ると。
- 内田
- 早かったからね。
- 桐島
- 自分の青春みたいなものがなかったわけじゃない?
- 内田
- 今、子どもたちを見ていると、いいな、そんなに青春でと思う。
- 桐島
- でしょ。いろんな彼氏がいてとか、遊びに行ってとか、ないまま。
- 内田
- もちろん自分で選択したことではあるけど、母も結婚する時に言っていたのは、先に家庭を耕して、それで40代から好きなことに行けばいいと。今まさにそういう気持ちのシフトチェンジだけど、そんなに急激に爆発できない。爆発する必要ないんだけど(笑)。
コロナ禍で始めた事
子育てがひと段落し、今、興味が赴くまま、ジャンルも超えて活動の場を広げているお二人。内田さんは、俳優として、李相日監督による映画「流浪の月」に出演されています。一方、桐島さんは、先日、「桐島かれんの緑のある暮らし Life with Plants」というご本を発表されました。150種類以上の観葉植物と暮らす日々のこと、プランター菜園で収穫した食材を使った料理、お気に入りのグリーンショップの紹介や、かれんさん流のインテリアアイデアもたっぷりつまった一冊です。
- 内田
- 今回、読ませていただいた「桐島かれんの緑のある暮らし Life with Plants」 ですが、コロナ禍での世話好きなかれんさんが、今までもやっていたけど植物、自然に向き合って、150種類以上のプラントの図鑑になっていますね。
- 桐島
- うちの中、ジャングル状態なの。
- 内田
- この前、お邪魔した時も。
- 桐島
- あれから、また、すごいことになっているから。今は外でお花を植えたり、ガーデニングや野菜を作るのも楽しくなって、でも、これは、コロナ禍で始まったことで、ウクライナの戦争みたいに一歩先がわからないけど、人間の秩序より遥かに大きなに自然があって、戦争が起きようが植物たちはいつもと同じサイクルでいて、そのサイクルに少し近づくと、平安を感じられる。子育てもそうだけど。
- 内田
- 子育ては個性があるからいろんな出来事やハプニングがあるし、相手の気持ちも考えなくてはいけないけど、
- 桐島
- 植物は駄々もこねないし、夜泣きもないし、とにかくちゃんと良い環境を整えてあげれば、すくすくと育ってくれるから。
- 内田
- でも、どうしてそんなにお世話好きになったのでしょう。
- 桐島
- 人に対してはお世話好きではないから。
- 内田
- 子ども以外は?
- 桐島
- 子どもはあまり世話をしないタイプ。意外と放任で、あとは身の回りを整えるのも好きだからね、自分の空間を好きなものに囲まれていたい気持ちが強いタイプではあるので、その一部としてグリーン、観葉植物もあったけれど、それはアクセント的な存在だった。今回は、それをはるかに超えた感じ。也哉ちゃんは何かやっている? 近々、映画が公開と聞いたんだけど。
- 内田
- 本屋大賞を受賞した「流浪の月」が映画化され、松坂桃李さんと広瀬すずさんの主演で、私は桃李さんのお母さん役。
- 桐島
- ついに、也哉ちゃんがお母さん役なの?! 信じられない!
- 内田
- そうそう。でもほんの少しで、そもそも役者に囲まれて育って、役者にはなれないと思ってきたけど、時々知り合いから「黙っていればいいから」とか「技術は求めないから、なんとなく違和感がほしいから」と呼ばれると、私も好奇心旺盛だし、韓国からくるチームを見てみたいと思って。
- 桐島
- どんな内容でしょうか?
- 内田
- 桃李さんがある事情で成長段階で障害を抱えているのね。でもそれは心理的なものも絡んでいるから、本当は家族に理解してもらえたら、もう少し健やかに生きられたのに理解のない母親のせいで、とても苦しむという
- 桐島
- シリアスなんだ。
- 内田
- すごい、シリアス。でも社会問題や恋愛だったりもするけど、見終わった後は、ちょっと上質なファンタジーのような不思議な感覚。私は人に会いたいし、自分の演技はさておき、観察しに行ったら一本の映画になりました。
- 桐島
- 楽しみですね。
*「桐島かれんの緑のある暮らし Life with Plants」は宝島社より発売中です。
*2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんのベストセラー小説を広瀬すずさんと
松坂桃李さんの主演で映画化した『流浪の月』は、現在、全国ロードショー中です。