作曲はアナログな作業

松下奈緒(女優、ミュージシャン)×河野伸(作・編曲家、キーボーディスト)

2022

04.15

null

松下さんは、2004年女優デビュー。NHK朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」でのヒロインをはじめ、数々のドラマ・映画で主演をつとめ、2006年からは、ピアニスト、作曲家、歌手として音楽活動も行っています。一方、河野さんは、1994年にポップユニット「SPANK HAPPY」を結成。その後は、楽曲の提供やアレンジ、プロデュース、TVドラマのサウンドトラック制作やライブサポートなど多岐に渡り、活動されています。

最初の出会い



松下
こんにちは。

河野
こんにちは。

松下
私たち、もう10年ぐらいご一緒ですよね。

河野
10年ではないですよ。

松下
え!

河野
最初に会ったのは15年ぐらい前で、奈緒ちゃんのツアーに加わる前にアルバムの曲のアレンジを依頼して頂いて。

松下
私がフランスを旅した時に生まれた曲だったと思います。のどかな田園風景のような曲でそれを河野さんにアレンジをお願いしたかったのが最初ですね。あの時、なぜ河野さんにお願いしたかと言いますと当時、ドラマの音楽をやっていましたよね。私、『流星の絆』のサントラが大好きで、すごく聴いていたんですよ。

河野
ありがとうございます。

松下
河野伸さんはストリングスのアレンジとメロディーが綺麗だと思って、是非お願いしてみたいと言ったのが最初でした。

河野
初めて会った時に、女優に会うと構えて行ったんだけど、ノリはバンドマンだと思って。

松下
なんですか(笑)!

河野
すごくホッとした記憶があって、親しみやすいと言うか。

松下
そうですよ。ピアノを弾いている方と思われることがあるんですけど。

河野
音楽と映像だとちょっと違う感じしない? 奈緒ちゃんは両方の現場に行くから、よくわかると思うけど、だからあっちの人かなと思ったら、こっちの人だった。(笑)。

松下
よかった。2012年のツアーから河野さんにはバンマスとしてメンバーをまとめて下さっています。10年同じバンドメンバーでやっていると思うと、感慨深いですね。10年前、始めた頃はクラシック曲が多かったけど、ここ数年、ジャズっぽいものにトライしたり、自分の中での変化も河野さんが全部上手くまとめてくださっています。

河野
でもね。最初にお願いされた時にその前の年の DVD を見せてもらい、1回断ったのよ。「ノリが違いすぎるので無理です」と。

松下
それでも河野さんはオーケストラも書いていらっしゃるし、劇伴の美しい音楽もできる方なので、直感でやってくれると思っていたから、「もう1回お願いしてみて」と言ったのを覚えています。

河野
クラシックばかりでなくて、歌も歌うし、ジャズっぽいのもやりたいし、だからお願いしたということで、最初は渋々ではないけどチャレンジしようと思いました。


null

ドラマを盛り上げる音楽制作の舞台裏



松下
ドラマもたくさんやられているじゃないですか、私は出演させていただくことが多いですけど、ドラマの劇伴はどうやって作っていくのですか?

河野
ドラマは撮影がギリギリだから、画はないわけですよね。だからメインテーマ、サブテーマ、日常にかかる曲、悲しい曲、サスペンス系とか、主人公の曲もあるし。

松下
私たちと同じ台本を読んでいるんですか?

河野
多分同じものを見ていますね。最終的に感動して泣ける作品は台本を読んだだけで泣けるよね。活字で見ても画が浮かんでくると言うか、でも、やりすぎてもダメで、僕は作曲をするだけで、実際に画に曲をはめるのは別の選曲家の方なので、ここのつもりで作ったのに全然違うところに付くこともある。

松下
そういうこともあるんですね。そうじゃないのにと思います?

河野
いやいや。それもいいよね。でも、ここに曲がかかっていてもいいのにとか逆もあるし。

松下
映像付きで見るとなるとドラマを撮り終えないとできないわけですもんね。

河野
基本はオンエアで。

松下
最初に作る時はピアノですか?

河野
早い曲と遅い曲で違って、メロディーをじっくりと作りたい時は、普通のピアノで、五線紙を置いて、メロディーをかきながら。

松下
同じ! わかります。メロディーが肝になるものは、電子的な要素を入れたくないというか。

河野
考えて、忘れないように書いて、もう一回弾いてみて違うと思ったら、消して。だから出来上がりは真っ黒でめちゃくちゃだけどそれを打ち込みに持っていって、整理する感じで作っています。

松下
3分、4分の曲だとしたら、どれくらいで書き上げるんですか?

河野
メロディーだけだったら2時間とか、それをアレンジも含めて肉付けすると、長い曲だと2日かかったり。

松下
私たちの作業は意外とアナログですよね。


これまでの記事

その他の記事