ジャンルを越境するほどのクリエイティビティ

三苫愛(ヘアメイクアップアーティスト)×鳥羽周作(レストラン「sio」オーナーシェフ)

2022

02.04

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鳥羽さんは現在、業態の異なる6つの飲食店を運営。さらには、続くコロナ渦で、新しいレストランの在り方を模索するために「シズる株式会社」を設立し、さまざまなチャレンジは飲食業界でも話題となっています。

「sio」での食体験



三苫
私、行かせていただいたんですけど、最初はすごい緊張しましたが、すごく心地が良かったです。お店の方の制服もすごい可愛くて、

鳥羽
あれ自分でデザインしたんですよ。

三苫
店員さんも素敵な方が多いなと思いました。

鳥羽
音楽もHIP HOPをかけたり、沖野修也さんにセレクトしてもらったりしていて、最初のコンセプトはマルジェラを着て、ユニクロのデニムを履いて来てもらうみたいな、どっちのブランドもいいよと思える人に来てもらえたらいいなと思って作ったお店で、高級感を出さないようにカジュアルに夏は、Tシャツに短パン、ビーサンで来られるけど、美味しいものを食べてもらいたいという思いで作ったお店で。

三苫
最初に出てきた具の入っていないスープが超美味しかったですよね。こんなに食材を感じられるんだと思いました。

鳥羽
嬉しいですね、鳥の出汁にお客様に出す瞬間10秒間だけ干した舞茸をスープに入れて、それを引き上げて出すと舞茸の香りがめちゃくちゃ感じ取れるんです。ただそれだけすけど。乾燥して水分を抜くことで、より香りが凝縮されるんです。湯飲みで出すんですけど、海外ではお皿を持つ文化がなくて、だからお皿が重たいんですよ。唯一、アジア圏の人たちだけ持つので、最初のスタートは、あそこに集中するので、ちょっと味も薄くすることで今からコースが始まるんだみたいな設計図で全部作っているんです。

三苫
量もすごくちょうどよかったです。

鳥羽
気持ちよく帰ってもらうのをテーマにしていて、腹7分目くらいにしているんですけど、10になってしまうと、明日仕事したくなくなっちゃうんですよ。

三苫
コース料理はいつも3品目くらいで、どうしようと思ってしまうんですよね。最後デザートが終わった時点で完璧と思いました。

鳥羽
すごく勇気のいることで、量が少ないと、ともするとコスパが悪いとか、次の店でラーメン食べられるとかなるんですけど、最後のシメに「量もっと食べられますか」とか聞くようにしているんですけど、全体の設計図としては7分目とか7.5ぐらいでちょっと余白を残して体が重くなる前に食べ終えて帰ってもらう。時間も3時間が多いのですが、2時間半ぐらいにきゅっと短くしています。


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トライ&エラーがもたらしたもの



一方ファッションやライフスタイルも注目の的である三苫さん。従来のヘアメイクの価値観にとらわれない自由な提案はまだまだこんな可能性もあったんだ!と、見る人に新鮮な驚きや気づきを与えてくれます。

鳥羽
素朴な疑問ですけど、結構ヘアカラーをチェンジされるじゃないですか、気分的なものなのか、スタンスや表現としてなのかすごい気になっていて。

三苫
昔からヘアカラーを変えることがすごい好きだったんですよね。最初に美容室を受けようと思ったのも可愛いヘアカラーとカットと、そのポイントがすごい好きだったからで、もともと20代の時はいろんなヘアカラーをすることによって、どれが自分に合っているのか、何の服に合うだろうと思って、そのヘアカラーから引き算をするポイントと足し算をするポイントを自分の中で学んだのは本当にいろんなカラーをやっていてよかったなと思うことでしたね。

鳥羽
今のトライ&エラーはクリエイターの考えで、その知見の解像度が上がっていって、このヘアカラーならこうだなという蓄積があるから他人に言語化できる。僕はそれが食べることだと思うし、本当に共通していることがありますね。

三苫
意外にそうですね。例えば、お客さんに提案する時や人にメイクをする時もそうですけど、ぱっと見て何色が似合うとか、絶対にここを切った方がいいのにとか何で前髪伸ばしたんだろうとか、前髪があるほうがいいのにとか、何が似合いますかって言われた時に言えるようになったのは自分でとんでもないヘアカットをしてきたからだと思います。やり尽くしましたね。

鳥羽
話を聞いて思ったのは、愛ちゃんはクリエイティブディレクターだと思いますね。単純にメイクだけではなくトータルを見ていて、そうなると洋服も靴も気になるじゃないですか。

三苫
そうですね。美容師だと物足りない感がありました。

鳥羽
みんな越境をするんですよね。僕の周りもそうだし、僕自身も音楽も気になるし、お皿もおしぼりも、となっていくと、何かを起点に、クリエイティブの部分がちゃんと揃ってないと意味がなくなっちゃうというか、残念なところがあると全部台無しになるので、どんどん細くなって気にすることが増えて、最終的にただ単純に髪を何とかするとかでなってくるじゃないですか。

三苫
今鳥羽さんに言われて気づきました。だから今の自分の仕事にたどり着いたのかもしれないかもしれないです。

鳥羽
一つの括りで括れないこだわりが増えていくと越境する。そういう人はやっぱりトータルで何かやらないと世界観が表現できなくなってしまうというか、すごい分かります。


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