今泉監督の映画作りの原点
井浦新(俳優)×今泉力哉(映画監督)
2021
10.15
今泉作品の理系の構築感
- 今泉
- 高校が男子校だったので、彼女がいる人とか、遊んでいる人も周りにいましたけど、自分は、卓球しかしていなかったんですよ。小中高卓球をしていたんですけど、部室に漫画の『ピンポン」とか『行け!稲中卓球部』があったりして、女性と遊んだりもなかったので、好きな人が途切れずいたのはいたんですけど、小学校の時に好きだった人を好きでいて、中学校に入ってもまだ好きだったりして、中学校の時にまた違う人を好きになったりしたんですけど、中学校の時に好きだった子を高校時代も好きでいてみたいな感じでした。会うこともないのに、次に好きになる人ができるまで、好きでいるので。一回だけ、文化祭の時に女子高の子が来て、告白ではないけど電話番号を聞かれる経験をして、聞かれた時に携帯も時代的に持ってなくて、家の電話番号を書いて渡そうとした時に「電話していいですか?」と言われて、なんとなく好きな子がいるから自分の中でいけないことに気がして「電話はあんまり」と言ったら、受け取ってもらえずに終わって、あの人は、俺を好きだったのかなとずっと謎にその人を引きずってて顔も覚えてないんですけど、逆に好意を持たれたことがなかったゆえの引きずりがすごくて、何でそんなもったいないことと周りに言われれば言われるほど、でも中学校の時、好きだった人をまだ好きな自分がいたので、あと家にかかってくるのもと思って、
- 井浦
- 家電時代。友達や好きな人に電話をするとなったとしても、まずやっぱり相手のお父さんやお母さんにまず自己紹介から始まるところからスタートでしたもんね。
- 今泉
- そうなんですよね。父親が出る可能性なのにその家に電話をかけるあの感じとかは、ありますよね。
- 井浦
- そういうのは、ドキドキしましたよね。今泉監督は卓球少年時代は卓球に明け暮れながらも小説とか本は読みあさっていたのですか?
- 今泉
- 小説とか本を読むのが苦手で、完全に理系で、でもそれは小学校の時から国語とかがちょっと苦手なのをうちの父親が気づいていて、文章を読むのが大変だったから「映画とか見たら」と。父親もじいちゃんも映画が好きで、じいちゃんに映画館に連れて行ってもらっていたので、それは原点かもしれないですね。小説は大学卒業ぐらいまで恥ずかしいことに10冊も読んでないぐらい読むのが苦手で国語の教科書とかは読めるんですけど幼少期に小説や物語を読む体験とか癖がついてないんで未だにすごく遅くて。
- 井浦
- 今泉作品の理系の構築感なのかなと思って。監督の作品は知らず知らずのうちに青春の男女のキラキラした物語が文学的と記事でもそういう風に表現されたりもしていますが、いわゆる文学とは違う独自の編集の仕方だったりして、もしかしたら理系的な編集の仕方で、結果、見る人たちが監督の中の理系的な想像力を文学的と捉えられているのかもしれないと思うと、もう一度見直したくなりました。
リアリティーを突き詰める
- 今泉
- 多分、恋愛もいろいろ書いたりしていますけど、恋愛も小説に関しても、経験の数が少ないからこそ、本当に細かいやりとり、言われた言葉とかを覚えているのは多分あると思っていて、小説の数は読んでないし、昔よりは読むようになりましたけど、好きなものを読み返したりする方が多かったり、じいちゃんとかお父さんの影響でテレビで映画を見ている時に、すごい文句を言いながら見る人達だったんですよ。一回で倒れるから「ジャッキーチェンは漫画だ」とかいう人で、面倒くさい視聴者みたいな感じだったんですけど、子供時代にそうなのかと思って。映画に対するフィクションの魅力は感じつつも、いろんな嘘の許容が狭いのはジャンルが違うけど、そういうリアリティ側にこだわりがあったりする。芝居でも映像でも何か思い出して話す間、ちょっと上のほうを見て話すと芝居っぽくなるから、自分はあんまり好きじゃなくて、抑えたりする時もあるんですけど、そういう芝居の型とかフィクションはこうみたいな疑いとか許容の狭さみたいなのは、あの時に「ジャッキーチェンは漫画だ」と言われた思想が未だにあるのかもと思ってますね。
- 井浦
- リアリティを突き詰めていく中で、これから、その真逆のエンターテイメントに振り切った方も撮ってみたいビジョンはありますか?
- 今泉
- 面白がれる範囲だと思うんですけども、映画はいかにフィクションでいかにも作り物での豊かさというか自由度があるのに、リアリティなもの、自分の中での生っぽさというか、自分の方法論はいろいろあるんですけど、逆にリアリティを詰めておけば映画の中で一箇所だけフィクショナルにやった瞬間にすごく立ち上がったり、そういう豊かさんみたいなのは今後も学んでいったり、作ってく中でやりたいなと思うんですけど、全体をエンタメにするのはちょっとまだ技術的にも自分の好み的にもすぐにはやらないと思ってます。
映画『かそけきサンカヨウ』は、10月15日よりテアトル新宿ほか全国ロードショーになります。