全ては人間関係
コシノジュンコ(デザイナー)×立川直樹(プロデューサー、ディレクター、音楽評論家)
2021
08.20
好奇心に勝るものはない
- 立川
- 情報がダメですよ。自分で出かけたり、好奇心と欲望だよね。
- コシノ
- 好奇心がなくなったら、人間は可愛くないっていうか、生き生きしてない。なんでも冷めた目で見たら駄目よ。
- 立川
- 便利になって、ネットで見られてしまうとか、見たような気になっちゃう。
- コシノ
- 情報がものすごく早いでしょ。早いけど、頭でっかちだと思う。私は、本当にいろんな国に行って、そこの国のものを食べて、そこの人に会って、そこの空気を吸っていて、スマホとは違うよね。
- 立川
- 音楽もちゃんと1枚のアルバムまで進化したわけで、音楽が情報ではない、音楽は作品だから。それをちゃんと聞かないといけないのに、3分ぐらい聞いて、いいねとか、映画も小さい画面で見るのは情報だから参考にするならいいんだけど。この前、僕がジュンコさんの絵を見に行って、素直に思えたのは、あれは写真で見てもよくわからない。結局、おもしろそうだと思うものは見にいくし、面白そうだなと思う人とは会って、ちょっと話してみたいと思う気持ちをどのくらい大切にするかは、ネットでは、無理。
- コシノ
- 人間は、生きているからもっとリアルなのが当たり前だけど、みんなネットで買ったりするじゃないですか、私は不安だけど。
- 立川
- 食事をする場所に行くと、本当に美味しいもの食べに来たのか、ただ写真を撮ってそれを自分でどこの店に行ったと言いたいのか、同じ座っているけど、違うわけ。
- コシノ
- だからもう1回、やっぱり原点に、人間、生きているとはなんだろ、この手で触ったり、舌で味わったり、五感で楽しむことを忘れずに、頭だけで、食べた、行った気持ちになるのは、情報のみであって、自分の肉体や精神には影響しないと思います。
- 立川
- デビット・ボウイも行きたいとこに行くし、会いたい人には会う人生を貫いたじゃないですか。
- コシノ
- 会いたい人と会い、誰とご飯食べるが大切ですよ。なんでもいいから食べるのではダメですよね。こういう時に、やっぱり誰に会うかは、本当にすごく重要。必ず会いたい人に会えるよね。
- 立川
- この人いいなぁと思うと、必ず仕事できるんです。運も芸のうち。
- コシノ
- それですよ。ツキは才能の一つだと思う。その前に好奇心がないとすごい素敵な人が目の前にいても、なんとも思わなかったら意味ないね。そこで出会って、育って、次にバーンと膨らむかどうか予期せぬ出来事は必ずやってくるから。
- 立川
- ちゃんとやってきたものが形にできるか、どうかが多分、決定打みたいな気がする。
- コシノ
- 何か一つのビジョンと言うか、自分がやりたいことは、人には言わなくてもいいけど密かに持っていることがすごく大切。そうするとやってくるんですよね。
- 立川
- あとはやりたくないことをやりたくないって言う勇気も必要だよね。
- コシノ
- それは余計なこと。時間がもったいない。
パリと京都の関連性
コシノさんは、世界文化社より「コシノジュンコ 56の大丈夫」を発表されました。失敗も逆境も力に変えてこられた、パワフルウーマン、コシノさんの言葉の数々。そして、自らの軌跡を語る数々の写真とともに力強く、かつチャーミングなエピソードの数々が掲載され、不安な時代に勇気をもらえる言葉が詰まっています。
- コシノ
- この本の中に掲載されている言葉は、長いことためていたんです。急にできるわけではなくてね、ずっと長いこと、自分で書いてあったり、メモにあちこち書いてあって、それを一回、まとめてみた。写真にしても、ものすごいたくさんあった。立川さんがプロデュースされたデヴィッド・ボウイの写真展が書籍となった1冊もよかったです。私も京都が好きだけど、デヴィッド・ボウイも京都が似合いますね。
- 立川
- 京都に合っているんですよ。伝統と革新がクロスしているから。
- コシノ
- 京都の人自体もコンサバティブかなと思っていても、実は挑戦的。
- 立川
- 僕も性が合う。小さい時から京都が好きで。
- コシノ
- 京都で何度か会っているよね。京都は面白い。
- 立川
- 外国に行くより面白いですよね。
- コシノ
- いつ行っても同じなのに発見があるの。
- 立川
- 正しい闇がまだ残っている街ですよ。
- コシノ
- それですごくパリと似ているの。とにかく京都の人と仲良くなるには時間がかかるわね。何か一つ成功すると、すっと入るのよ。それまでちょっと時間がかかるんだけど。
- 立川
- 認められるか認められないかで門が開くか、開かないかが、決まるところがすごくパリと京都は似ている。持ってないとダメだよね。
- コシノ
- コツコツとは何か執念深く持っていて、花が咲く。パリも似ていますよ。N.Yは全然違うね。若い人だって年齢関係なく、よければ認める。京都、パリに認められたら、やっぱり深いものはあるわね。
- 立川
- 先日、フランスで最も権威ある国家勲章「レジオン・ドヌール勲章」を受賞されたじゃないですか。
- コシノ
- そうですよ。
- 立川
- フランスは本当に勲章をあげる人たちは、ちゃんとしていますよね。
- コシノ
- そうですね。これは国から認められたことだから、KENZOさんも私の前にもらっているんだけど、やっぱり嬉しいですね。私一番関わったのはパリです。パリコレはもう終わってしまったけど、やっぱり何が認められたと言うとやっぱりフランス人との交流ですね。それとパリのモンテーニュ通りにブティックを持っていて、そこで知り合った人は大きいですよ。あの場所は一等地でそこにいる人たちは別格です。競馬場の真ん中でポロのチームも持っていたし、ファッション以外にも関わっているんだけど、ワインの収穫祭にも私のお客様、1000人ぐらい来るんだけど、クリスチャン・ディオール、ニナ・リッチとか、街との関わりイコール人との関わり。ただファッションショーが終わって終わりじゃない。人間関係はすごく大きいですね。
- 立川
- やはり、全ては、人間関係ですよね。