書くことがセラピー

中林美和(モデル、会社経営者)×LiLy(作家)

2021

04.23

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LiLyさんは、昨年末、28冊目となる最新長編小説「別ればなしTOKYO2020」を発表されました。コロナ禍、猛スピードで変わる世界を描いた恋愛小説になっています。プライベートで10年来のおつきあいという仲のいいおふたり。中林さんは、作家としてのLiLyさんをどう思っているのでしょうか。

執筆の舞台裏



中林
私は、LiLyの本がすごい好きで、誰にも打ち明けられない心の底の底の声、友達にも言えないことがどの本にも書いてあって、その気持ちを代弁してくれているといつも思っていて、LiLyの本を読む度に心がすごい救われるの。それはどうやって書いているのかなと思って。

LiLy
嬉しい。ピンポイントのアンサーだけど、私が書き始めたのは小学生の頃で、友達にもお母さんにも絶対言いたくない気持ちにモヤモヤしていたの。やっぱり、お母さんに心配をかけたくないとか、友達に言ったら変だと思われるとか、意外と世の中には、自分の本音を言う場所がないと小学3年生の時に気づいて、鍵付き日記帳を買ったの。でも、鍵付き日記帳にもやっぱり本音は書けないの。誰かが見ているかも、自分が死んだら親が見るかもとか、日記の中ですら見栄を張るのよ。自分の理想像だったり、お母さんが読むことを仮定したり、ちょっと盛ったり。やっと2年ぐらい経った時に本音を書けるようになったの。それが自分の中でセラピーになっていて、これが私の本音だ!別に盛ってないし、お母さんに心配かけるかもだし、友達にひかれるかもしれないけど、本音だからいいやって、鍵を外してデビューした感じ。

中林
登場人物が自分とは全然違うんだけども、読んでいる側もセラピーになるというか、ワーワー泣いてしまったり、1冊を読み終わるとすごいデトックスされている、それがすごい魅力。

LiLy
綺麗事ではない汚らしい人間の感情が大好き。ただそれをそのままだと胃もたれする。傷つくこととか、褒められたような気持ちではないこととか、嫉妬とか焦りをどう昇華するのか。昇華という文字が大好きで、上がってお花にする、醜いリアルを美しいものに変える瞬間が好きで、その瞬間を求めて長編を書いている。

中林
素晴らしいね。

LiLy
それを読んでくれる人も昇華されるなら、嬉しい。

中林
自分とリンクした瞬間にボロボロと涙が出る。


鍵付きの日記帳



中林さんは、以前、試行錯誤しながらも、子どもと一緒に泣いて笑った日々を綴った「おんぶにだっこでフライパン!―4人育児の奮闘記」というエッセイを出版されました。

LiLy
美和ちんが4人の子供を育てていて、「一番大変だった時期のことをエッセイで書いた方がいいよ」と言って、本当に書いたじゃん。そのこともすごい覚えている。カフェで一緒に執筆したね。一緒に執筆ができる友達もなかなかいないから。

中林
エッセイを一冊書いたけど、すごい大変な能力だね。LiLyは何冊も出しているからすごいと思う。その精神力が。

LiLy
その理由から小説の方が好き。エッセイは書き終わった後、血だらけになる。

中林
傷もつくしね。

LiLy
傷だらけだよ。しかも、自分を切ったつもりが知り合いも元彼も切ってしまうし。

中林
嫌なこととか昔のことを思い出すのが、すごい辛かった。そこに蓋をしていたのに蓋を開けて、それについて書かないといけないのがすごい辛かった。書いた後は、デトックスされたから、発売しなくても物を書くのはいいかもしれないね。

LiLy
いいと思う。だから鍵付き日記帳を子供にあげたの、「ママは、絶対に読まないから、本当に思っていることやしたいことは文章にして」と。言葉にすることが夢を叶える近道だから。

中林
それは真似するといいかもね。私も日記帳を買いたいと思った。



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