子どもの「食」の悩み
コウケンテツ(料理研究家)×くわばたりえ(クワバタオハラ)
2021
02.19
“おいしい”と言って食べることの大切さ
- くわばた
- お子さんは野菜をいっぱい食べます?
- コウ
- 全然食べないです。限られていますね。昨日まで「ブロッコリーが美味しい」と食べていたのに、ある日突然食べなくなるとか、意味が分からないですよ。
- くわばた
- 手の込んだ料理に限って食べてくれないんですよ。
- コウ
- あれ、何なんですかね?
- くわばた
- 「見た目が気持ち悪い」とか、食べてないのにまず見た目から入るんやみたいな。
- コウ
- わかります。子供の好き嫌いは永遠の謎ですもんね。
- くわばた
- 昔、離乳食で悩んでいる時にコウさんの記事を読んで、「僕は料理研究家なのに子供が離乳食を食べないことに悩んでいる」と書いてあって、そりゃ、私のは食べへんわと思って、気が楽になったんですよ。ただ自分の職業が料理研究家で子供が離乳食を食べないのは悩まれたん違うかなと?
- コウ
- 悩みました。料理を生業にしているのに子供が食べてくれないのは一番だめじゃないですか。病院に連れて行こうかと思ったぐらい。なんで食べへんのっていうのは確かにありましたね。
- くわばた
- どう工夫したんですか?
- コウ
- ほんと試行錯誤で、食べるだけの人の役割、主にお父さんが大事と最近思っていて、取材で海外の家庭によく行かせてもらうんですけど、すごくパパが食卓を盛り上げてくれるんですよ。ちょっと理想論かもしれないんですが、出されたものを「まずい」、「うまい」の判定ではなくて、とりあえず、盛り上げる。「うまい」と言って食べたら、いい空気が食卓に流れる気がするんですよ。子供はそれにつられていくと思うんですよ。
- くわばた
- 美味しいと言っている人を見るのは子供にとってはいいし、作った側には、すごく作りがいがある。おかわりって言葉好きなんですよ。
- コウ
- 魔法の言葉ですよね。
- くわばた
- 昔、親戚の子供が家に来た時に、長男は野菜が嫌いやったのに、ちょっと上のお兄ちゃんがもりもり食べたんですよ。そしたら絶対に手をつけへんのに、一口食べて、「本当だ 美味しい」と言っていた時に「無理やり食べなさい」、「大きくならへんよ」ではなくて、「美味しい」って言うてる人を見ていたら、食べたくなるんや。それがちょっと憧れのお兄さんやったり、お父さんやったりするから、お兄ちゃんも食べたくなったのかな。見せるのが一番かもわかんないですね。
- コウ
- そうなんですよ。子供は楽しそうなことに対する興味とか、それに対する吸収力は凄いじゃないですか。無理やりやらされたり、怒られた時は言うこと聞かないんですよね。
成功体験を覚えさせる
- くわばた
- お子さんはお料理のお手伝いはします?
- コウ
- お家が仕事場にもなるので、朝から晩まで父親が料理をしているから、長男はミニカーと同時にフライパンで遊び出すみたいな感じでした。
- くわばた
- お兄ちゃん、お料理するのですか?
- コウ
- めちゃめちゃやります。この前も友達が家に遊びに来た時に “ベーコンきゅうりサンド” を作ってあげていたんですよ。
- くわばた
- すごい! お父さんの見ていたんですか?
- コウ
- 一緒によく作っていたんですけど、自粛期間にとにかく、僕、朝ごはん作らない宣言をしたんですよ。上の子は10歳と8歳なので、「自分のご飯は自分でやろう」ってなって、自分で今やってくれているんですよ。今、3日連続で、うちの子供たちは餅しか食べてないんですよ。餅をグリルで焼くか、 耐熱容器に水を入れてレンジで加熱、きな粉をかけて食べる、と勝手にやってくれるようになったんですよ。めちゃめちゃ楽ですね。
- くわばた
- コウさんの小さい時はどうやったんですか?
- コウ
- ちょっと変わった家庭環境で、それは母と父に感謝ですけど、父は家のことは全然やらなかったんですが、世の中のことで、ご飯を食べることが一番大事という考え方だったんですよ。だから家族で買い物に行って、みんなで料理を作るのが当たり前だったので、物心ついた時からキッチンにいて、何かしら手伝っていましたね。
- くわばた
- 何歳から料理を手伝わせていいのかわからないんですよ。
- コウ
- やらしてあげてください。とにかく基本的なことだけを教えてあげたら、絶対に子供はマスターするので。なかなかそれが難しいんですけどね、でも学びますから。
- くわばた
- 子どもにお手伝いしてもらうコツはありますか?
- コウ
- 料理に関して言うと、1料理、1工程をまず第一歩にしていて、例えば、肉じゃがを作るとすると、最初から最後まで一緒にやろうとするんですよね。これ大変じゃないですか。続かないし、お互いイライラしてくるし、最後にはもう二度とやりたくないと思う方が多くて。それなら、もう遊びの一環で、「今日、肉じゃがを一緒に作るけど、あなたのミッションは、じゃがいもを4等分に切る。これを3つ完璧にやって」というミッションを与える感じにするんですよ。大事なのが、終わりを最初に伝えること。「じゃがいもをこういう風に3つに切ったら、今日のミッションは終わりね」と予め言うと、子供は切り替えができるケースが多いんですね。僕、一時期、全国の幼稚園、小学校で料理教室をしていたので、それを言うと満足して成功体験として終われる。終わった時に「すごい助かった」と言ってあげると、ママの役に立てたという子供の成功体験はすごい成長に繋がる。それが料理を通して僕が学んだことですね。
- くわばた
- 本当は助かってないんですよ。私がやったほうが早いって言いたいんですよ。でも私が子供でお母さんに「助かった」と言われたら、それが一番嬉しいですよね。確かにそう思う。