映画「朝が来る」が実現したコラボ
河瀬直美(映画監督)×辻村深月(小説家)
2020
10.23
奈良県出身の河瀬さんは、初の劇場映画『萌の朱雀』で、カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を27歳で史上最年少受賞。一貫した「リアリティ」の追求はドキュメンタリー、フィクションの域を越え、世界各国の映画祭で高い評価を受けています。
一方、『鍵のない夢を見る』で、直木賞を受賞された辻村さん。『かがみの孤城』では、本屋大賞を受賞。そのほかにも『凍りのくじら』、『太陽の坐る場所』、『本日は大安なり』、『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』など、幅広い作風と繊細な心情描写で人気を博している小説家です。そして今回、辻村さんによる原作で河瀬さんがメガホンを取った映画「朝が来る」が、10月23日から公開となります。
リアルな場での再会
- 河瀬
- こんにちは。
- 辻村
- こんにちは。
- 河瀬
- 久しぶり。
- 辻村
- ようやく映画が公開になって嬉しいです。
- 河瀬
- 本当は6月5日公開だったので。
- 辻村
- でも、その間に「カンヌレーベル2020」に選出され、おめでとうございます。
- 河瀬
- ありがとうございます。 56本の中から実は4本に選ばれたんだよねえ。
- 辻村
- すごい!おめでとうございます!
- 河瀬
- ありがとうございます!そして、カンヌのメイン会場で、その4本をカンヌ市民にむけて上映する会があるんです。
- 辻村
- おめでとうございます!すごい嬉しい。見てもらえる事が本当に嬉しい。
- 河瀬
- でも秋になって、映画祭もハイブリッドで開催しているところも多くて、実際に劇場で見てくれてる人も世界には少しばかり増えてきた感じ。
- 辻村
- よかったです。
監督と原作者が伝えたかったこと
映画「朝が来る」は、長く辛い不妊治療の末、自分たちの子を産めずに特別養子縁組という手段を選んだ夫婦と、中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母の2つの人生を描いたストーリー。映画の中では、さらに、「特別養子縁組」で迎え入れられた息子、朝斗の視点が交錯します。
- 河瀬
- 最初にお会いした時に原作を読ませて頂いていて、これは朝斗の視点を私は映画でしっかり描きたいと言ったんですよね。
- 辻村
- そうですね。河瀬さんが「朝が来る」を撮りたいと言ってくださってると最初に聞いた時に嘘でしょうと思って、嬉しくて、顔合わせの際にホテルに行ったら、河瀬さんがいらっしゃって、自己紹介も名刺交換もしてないし、飲み物すら決めてない時に目が合った瞬間に「朝が来るを映画化するにあたっては朝斗の目線は必要不可欠だと思ってます」と最初におっしゃって、その時にこれが世界の河瀬直美かと思って、圧倒されながら、やっぱり物語や作品の本質をわかっていらっしゃる方はいきなり本題から話して大丈夫なんだなという、すごい心強いものを感じたんですよね。
- 河瀬
- 私は原作を読んで、そこの部分は、深月ちゃんは絶対に外せなかったんやろなと思った。でもストーリーとしては絶対になくてもいいのよ。
- 辻村
- そうなんですよ。実際にあそこ何で入ってるんですかと聞かれたり、なくてもいいんじゃないですかという意見が連載から本にする時に出たぐらい。だけどやっぱりふたりの母の物語として紹介されることが多かった小説をそうでない、あの真ん中にいるのはあくまでも子供の意思であり、その子の個性やその子が何を見てるのかはないがしろにできないのを最初に教えて下さったので、そこを分かって下さってるならもう後は何も心配することはない、お預けしたいと思いました。ありがたかったですね。
映画「朝が来る」はTOHOシネマズ日比谷ほか、全国ロードショー中です。