舌の記憶に刻まれている「食体験」

藤原ヒロシ(音楽プロデューサー)×庄司夏子(シェフ)

2020

08.07

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衝撃を受けたお店



藤原
なっちゃんは、ろくに仕事もしてないとずっと思ってたんですよ。なぜなら、ご飯を食べに行くと夕飯時に絶対いるから。いつも自分から予約をとっていくタイプでもないんですけれど、ご飯好きな友達に誘われて行くと、その場にいることは結構あったじゃないですか?

庄司
ありましたね。

藤原
この人、“自分の店をやってると言ってて、やってないな”とずっと思ってたんですよ。それはともかく僕は高級レストランもすごい好きですけど、コンビニ食とか冷凍食品も好きなので両方いけるんですね。

庄司
よくインスタで見てます。

藤原
深夜のスーパーに行って、見たことない冷凍食品を買ったりもするので、全体的に食は楽しめる感じですかね。昔から美味しいものも好きなので、「ナリサワ」がオープンした時だったり、ちょうどその頃、洞爺湖の「ミシェル・ブラス」がきたり、その頃はブームだったんですかね。それから「世界のレストラン・ベスト50」ができたり、盛り上がってきた感じ。海外に行くことも多かったので、予約の取れない店を友達がとってくれたり。今でこそ当たり前のように料理に驚きみたいのもあるけど、当時はなかったから、今だとちょっと恥ずかしいけど「この石、食べられるの?」みたいなのとか、当時はおもしろかったし、液体窒素とかも科学実験みたいでおもしろかったですね。

庄司
上海のミシュラン三つ星レストラン「ウルトラバイオレット」にも行かれてましたよね?

藤原
「ウルトラバイオレット」は言葉でいうと、ダサい感じがするんですよ。料理の一個ずつがプロジェクションマッピングで柄が変わってとか、液体窒素とか言ったら”古い”みたいな感じあるし、僕もそう思うし、聞いても絶対そうだと思うんですけど、ちょっと古い、何だったらダサいテクノロジーを使っても、あれだけ人を楽しませることができるのは、すごいなと感じます。ちゃんと考えられていて、使い古されたテクニックを使っても新しく人を感動させられるのは勉強になります。

庄司
私は、高校生の時にバイト代を全て外食に費やしてたんですけど、今閉店してしまったんですが、ハイアットリージェンシーにあった「ミッシェル・トロワグロ」、本店は、フランス・ロアンヌにある三ツ星で、そこの日本の店舗で食べたスペシャリテの一つの「グルヌイユ」カエルの足を使ったタマリンド風というお料理にすごい感動して、調理場に入らせてもらってカエルの調理前のものを見せてもらったりとか、それが印象に強く残ってて。

藤原
食材としてもショッキングなことがあった?

庄司
そうですね。食材としても現代フレンチの中でカエルが使われてて、さらにそれがとんでもなく美味しかったんですよ。スパイシーでちょっと酸味もあって、それが高校生の私にはすごい衝撃的で、私たちのお客様は、いろんなお店にもコンスタントに食べ歩きをしていて食の体験の経験値が高いので、自分にとって今ここが一番評価が高いとか雰囲気だとか、他の店にないものを提供してるようなお店には積極的に行くようにしています。

藤原
僕は本当のオンタイムではないんだけど、行きたいといってて「エルブジ」とかは行けなかったんですよ。「ファット・ダック」は行けたんですけど、その流れで何となく日本もそこでやってた人もいるじゃないですか、一番すごいなと思ったのは「レフェルヴェソンス」のお茶あったでしょ?半分温かくて、半分冷たいお茶。あれは感動しました。

庄司
私もあれはびっくりしました。


「ファッション」と「食」との関係



藤原さんといえば、音楽活動の他にもデザインチームを主宰し、多くのブランドや企業とコラボレーションを行い、”キング・オブ・ストリート”とも呼ばれるほど、そのファッションセンスは世界でも知られています。そして、庄司さんも大のファッション好き。自身のクリエーションはファッションからインスピレーシォンを得ていたり、ファッションブランドとの仕事も多く手掛けています。

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藤原
2年くらい前に「オステリアフランチェスカーナ」の「フランチェスケッタ」というビストロに行ったんです。イタリアのモデナにあるんですけど、たまたま車で通りかかった時に行ったんですね。それで出てきたイカ墨のリゾットが、イカスミの黒い部分と白イカの白い部分で白黒のリゾットだったんですよ、層に分かれて。イカスミというと黒だけど、そもそもイカは白だなと思って、すごい綺麗だし、おいしいし、そういうセンスはちょっとずついろんなとこ出てくるかなと思いました。食とファッションは、対極にあるものかと思ってたんです。「食」は1時間で終わり、食べてしまったら無くなってしまうものだけど、「ファッション」は、ものなのでそのまま一生残り続けるものだから、本来対極にあるものかなと思ってたんですけど作る方からしたらどうなんですか?

庄司
料理は、食べたらなくなってしまうんですよ。でもお肉のソースとかこれを作るのに二日かけないとできないお料理は結構あるんですよ。お皿の中でお客さんは見て、口にして食べて、それはなくなってしまうじゃないですか。それに対しての価値、おもてなしの部分とか、準備をしてる、そういうストーリー性とかも全ての価値に付加していきたい、どんどん何か知っていただきたいなって思って私はなるべくファッションの永久的に残るものと、すぐ無くなってしまう儚いもの、対比してるものだけどそこが一緒に共存するとなんて素晴らしい作品が出来るんだろうっていうのは結構あって、それは今のお店でも表現しようとしている段階ですね。



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