心に残る映画
倉本康子(モデル)×よしひろまさみち(映画ライター、編集者)
2020
06.12
ターニングポイントとなった作品
- 倉本
- よしひろさんは、お仕事で映画を見るわけだけど、最近、自分が見たくて見た映画はある?
- よしひろ
- 基本、仕事が絡んでくるのね。この20年間このパターンだから生活の一部と一緒だよ。ただ、この事態になって新作を見ないといけないところ、どんどん延期になって、じゃ何を見ようとなって配信とか自分の家にあるDVDとかを漁って、すごく懐かしいのを見始めてしまって。
- 倉本
- 何を見た?
- よしひろ
- 実は、この仕事をなんで始めたんだろうというきっかけを考えてみたら、別にきっかけは何もなくて、成り行き上でこの仕事をやってるだけなんだけど、映画を生業にしようと思えるようになったのは、ディズニー映画の「美女と野獣」なの。
- 倉本
- そうなの?!
- よしひろ
- 意外でしょ!
- 倉本
- 初耳。
- よしひろ
- 「美女と野獣」を劇場に繰り返し見に行ったの。共働きだったから親がいない間、学校が終わって夕方から一本映画を見に行くのを普通にやっていたのね、その時は、はしごしたりとか、いろんな映画を見ていたのに、「美女と野獣」は、最後大泣きしてしまって、その泣いた理由がわからなかったの。なんでこんなに泣いているんだろう、もう一回見に行こうみたいな感じで、もう1回見に行ってやっぱり同じシーンで泣いて結局、8回くらい劇場に通った。
- 倉本
- ターニングポイントだね。泣いたのはどういうシーン?
- よしひろ
- みなさんが感動されるわかりやすいラストシーン。野獣の魔法が解けて王子さまの姿形に戻ったところ。あの盛り上がりが、いまだに見ると、「うっ…」ってくるのよ。ボロ泣きはしないけど。
- 倉本
- 有名なシーンだけど、お姫なのか王子のどっちに肩入れするの?
- よしひろ
- それ、分析したの。私が泣いていた理由、別の場所にあったの。彼らの愛が成就したから嬉しい、感動したとか、ベルがこんなに苦しんでいたとか、野獣が優しくなったとか、そういうことでもなくて、野獣がマイノリティだったことだったの。
- 倉本
- そういうのでシンパシーを感じている部分があったってことだ。
- よしひろ
- あったんだよね 。ちょうどアニメ版が公開された時期、私、ゲイとして気付き始めた時期だったから、このままだと日本に住んでいても、女性とも結婚しないし、男性とも結婚できなという法律があるし、私にとって結婚というゴールはもうないんだっていう風に気付きはじめてる時だったの。そういうのがいろいろあって、野獣がマイノリティとして差別を受けて、偏見をすごい受けていたところから、その偏見を受け入れるベルという存在が現れた。別に感動したのが愛ではないんだよね。偏見を持たなくなって、差別もしないベルの素直な気持ちや人を内面で見るところを一番表しているシーンだったから、ボロ泣きしちゃったんだと思う。「美女と野獣」のDVDが当然、家にあるんですけど、この前、久しぶりに見て、やっぱりいい映画だわと思って、いろいろ探したらまさかのレイザーディスクまで出てきたわよ。
- 倉本
- 古っ。
- よしひろ
- もうプレイヤーないって(笑)。
気分がアガる映画
- 倉本
- 私の一番好きな作品は、フランス映画の「赤い風船」。未だには人生1位の映画。私も8回以上見てるし、もちろんデジタルリマスター版が出た時の DVD も、本もVHSも持ってるのよ。
- よしひろ
- まだVHS残してるの?
- 倉本
- 元々持ってるのは、VHSだからね。
- よしひろ
- 捨てなかったんだ。
- 倉本
- 捨ててない。
- よしひろ
- えらい。それだけ思い入れが強いということだよ。私ももうかけられるかわからないプレイヤーはあるんだけど、数本だけ残してあるもん。捨てられない。あと、多分 DVD 化されないなっていう。
- 倉本
- なるほどね。そういうのもあるよね。今、こういう時期だから、元々の自分の性格もあるけど明るい映画をすごい見たくて、楽しめるおすすめの映画とかない?
- よしひろ
- 今、酔っ払いながら見るなら「ハングオーバー!」じゃない。
- 倉本
- 最高。好きだから。
- よしひろ
- 画面の中もこっちも酔っ払っているし。何も考えないで見られるからいいと思う。
- 倉本
- 飛行機の中でよくチョイスするよね。
- よしひろ
- わかる。何も考えないで、とりあえず画面だけ追っていれば、なんとかなるみたいなね。
- 倉本
- ちょっと揺れも怖いんだけど、楽しい映画を見ていると気も紛れるから。
- よしひろ
- しかも国際線に乗っていたら絶対飲んでるしね。
- 倉本
- そうそう!
- よしひろ
- あとは、アメリカの学園コメディもの「ハイスクール・ミュージカル」とか、絶対に人が不幸にならないやつ。ちょっと悪いいじわるな役がでてきたとしても最後、ちゃんと大団円みたいなのはいいなと思っていて、その点でいうと「ヘアスプレー」がすごいおすすめ。本当だったら今年の6月から渡辺直美さん主演でミュージカルをやる予定だったんだけれども、この状態だから中止になってしまって。ミュージカルが苦手な人でも大丈夫だと思うんだよね。
- 倉本
- そうだね。ミュージカルって得手不得手あるもんね。
- よしひろ
- 突然、歌い始めて日常が描かれるのは確かに謎だよね。
- 倉本
- 日常にそういう人いたら、困るけどね。
- よしひろ
- うちの近所たくさんいるけどね。
- 倉本
- 楽しい近所だね。
- よしひろ
- 私もその一人よ(笑)。