肩書きにしばられない発想の源
片桐仁(俳優、彫刻家)×小西真奈美(女優、歌手)
2020
03.27

チャンスを活かしてジャンルを広げる
片桐さんは、芸術家としての顔も持ち合わせています。一方、小西さんは、一昨年、自らが作詞・作曲を手がけたアルバムを発表。その中でラップも披露されています。
- 小西
- 仁さんは、お笑い、俳優、彫刻家、声優さんも!
- 片桐
- 声優はあまりやってないですね。声の仕事はしていますけどね。
- 小西
- いろんなお仕事されていますね。それって自ら望んでそうなったのですか?
- 片桐
- 全然違います。やってみませんか?と言われて、本当に受身の人生なので。
- 小西
- (笑)。使い分け?
- 片桐
- 使い分けできるほど器用に立ち回れていると思ったことないですね。
- 小西
- 私、思うんだけど、お笑いをやっている方は絶対お芝居うまいなと思って。
- 片桐
- それも絶対ないですよ。
- 小西
- そうですか!
- 片桐
- お芝居が上手いお笑いの人がいるっていうだけです。コントとお芝居はだいぶ違いますからね。
- 小西
- どう違うんですか?
- 片桐
- 演出家の方に言われた言葉で、お客さんの見ているテンポの半歩先ぐらいのテンポで遅いと、早くやってくれって言う人結構いるんですよ、そんなにお客さんに合わせて、ゆっくりゆっくり説明しようなんて思うなみたいなこと言われて、僕はお笑いやってた人間としては衝撃だったというか面白いなと思って、お笑いは逆でお客さんを見てやるし、面白いことを言う時に顔が見えなきゃ嫌だし、お客さんもそう思ってると思うから、むしろ演じる側は客席に入ってくみたいな感覚なんですよね。
- 小西
- 例えば、ある一定のテンポがあるけどお客さんの顔を見てちょっとテンポスローにするとかもあるんですか?
- 片桐
- プロの漫才師さんは絶対にそれありますよ。今日のテンポはこうだなとか、あと、会場が広くなると、笑いのタイムラグがあるので間を広げるとか、セリフをゆっくり言うとかはありますね。演劇は必ずしもそれやらないから、あと、ウケた後、わーと笑いが収まる前に次のセリフ入れるみたいなタイミングがお笑いはすごく大事にするから、ちょっと間がずれるんですよ。演劇だとそれを全く気にしない俳優さんもいるし、それは舞台の中で起こっている、そこで生きてるからなんですね。でもお笑いはお客さんと「ですよね」っていう。
- 小西
- 対話みたいな感じ!
- 片桐
- そういう感じに近いんだろうなとは思うんですよね。そういう対話みたいな演劇もあるし、こっちで勝手にやってるお笑いもあるでしょうけど、突き詰めるとそこがだいぶ違うと思うんですけどね。それを器用に演じ分けてるつもりは全くなくて、演出家さんによってみんな言うことも違うんで、あとお客さんがどうとるかも違うじゃないですか、真奈美ちゃんも曲を作ったりとかラップをやったりとか、音楽はどうなんですか?
- 小西
- 楽しい。私子供の頃から絵を書く、彫刻を作るとかクリエイティブなことをやるのがとても苦手な子だと思っていたんです。
- 片桐
- 図工とか書道とか音楽とかがあまり好きではなかったんですか?
- 小西
- それが好きだったんですよー。好きなのに胸をはってこれが私の絵画ですとかというタイプじゃなかったので、そんなに得意なほうではないと思っていたんです。でも根底に好きがあって。
- 片桐
- それはいいですね。
- 小西
- それで、ラップを歌うお仕事があって、そこにラッパーといえば、この人達みたいな、KREVAさんとか、RHYMESTERのMummy-Dさんとが出ていらして、「真奈美ちゃんのラップいいから曲作った方がいいよ」と言われて、その時はカバーなんだけど私なりの頭で鳴っている音を皆さんが一緒にエンジニアさんとか作ろうとしてくださっているそのクリエイティブなことをする現場がすごく楽しくて、出来たものをサウンドイメージを言って、スタジオに入って、打ち込みなんですけど機材で音を選んで、トラックを作ってとやっていったらもう面白くなっちゃって。
- 片桐
- 演劇とかドラマとか映画とそういう現場とはまたちょっと違う感じで。
- 小西
- 全然違いました。女優は自分がその役になる。
- 片桐
- 自分がでちゃうんですけね。
- 小西
- 出るんですけど、私だったらこのセリフは言わないとかではなくて、 音楽はもう自分の中から全部出てくるから、ゼロから作るのがすごく面白かったです。

クリエイティビティがもたらすこと
小西さんは、音楽活動をはじめたことで、女優としての表現にも変化があらわれたようです。
- 小西
- 音楽をやり始めて面白いなと思ったのが、ある映画の撮影をしていた時にロケバスで移動中に夕焼けの景色を見ていたら、勝手にその作品のメインテーマが頭の中で鳴り始めて、そのままに現場に入ったら自分の中で難解だなと思っていたシーンがスルッといけて。
- 片桐
- へーー!
- 小西
- 私だけひとり脳内挿入歌 。
- 片桐
- すごいな。それ究極の女優じゃないですか、音楽作りの現場が始まった後ですよね?
- 小西
- 後です。始まって1年ぐらい経ってからかな。
- 片桐
- それなら、ミュージシャン出身の俳優さんはそういう状態になる人がいるかもしれないですね。
- 小西
- だから音楽作り始めて良かったと思って。
- 片桐
- その曲は結局作ったのですか?
- 小西
- 作りました。せっかく出てきたから作っちゃえと。
- 片桐
- 歌詞もあって?
- 小西
- 私わりと歌詞とメロディーが同時に出てくるタイプで。
- 片桐
- そのプロがやるやつですよ(笑)。
- 小西
- (笑)。面白い経験だなと思って。
- 片桐
- 難しいシーンはどういう感じだったんですか?
- 小西
- 感情があるんだけどあんまり表に出してはいけなくて、だけど絶対的にそれは必要で、誰にもバレないほうがいい、さらに、あまりに寒くて、口もまわらないし、コントロールもきかなし。
- 片桐
- 全く集中できないですよね。そんな状態でも音楽が流れてきて。
- 小西
- 頭の中にその曲が流れてきたら、スムーズに入れたので。
- 片桐
- 見事に融合しましたね。
- 小西
- 助かったなと思って。クリエイティブなことをするのはおもしろいなって。生きてる全部がものづくりにいきてくる感じ。
- 片桐
- 生きてる全部がものづくりにいきてくる。その言葉いただいていいですか!
- 小西
- (笑)。
- 片桐
- 女優業もいままで生きてきたものがそこに出るとか言われるし。
- 小西
- そうですね、だけど、長い目で見た時にあの経験がいかされていたんだろうなということはあっても、音楽ならその瞬間に自分の中にどんときたものを曲だったり歌詞だったりにできるですよ。

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