ふだんの食卓
菊池亜希子(女優、モデル)×野村友里(「eatrip」主宰、料理人)
2020
01.24
塩とオリーブオイルがあればいい
子供の頃から食いしん坊だったという菊池さん。先日、「食」にまつわるエッセイ集「おなかのおと」を発表されました。日常の食卓がかいまみえるようなエピソードの中には、「あったかいものはあったかいうちに」と、出来立てほかほかの料理を味わう菊地家ならではの、食卓ルールも登場します。
一方、料理上手で、もてなし好きの母親のもとで育った野村さん。美味しいものを共有したいという思いは母親譲りといいます。
幼少期の思い出の味
- 野村
- 良くも悪くも母の半分だと思うけど、おせっかいというか、食べなさい食べなさいと言ってしまう。小さい時から家に来るとみんなから2 kg 太るとか言われ、それをずっと見てきていて、自分なりに少しその良い塩梅にかっこよくおさめたいけどやっぱり往々にして、おせっかいかな。
- 菊池
- たくさん出しちゃうの?
- 野村
- あと、すぐに出しなさいと言うの。お腹を空いた人を待たせるのより、すぐ出すのが最大の調味料だから待たせないのがルールで、私も突然、人が来ることも多いので、まず、何か出さないという脅迫概念じゃないけど
- 菊池
- 「ちょっとこれ食べて」みたいな。
- 野村
- そうそう。何か気をつかわないもの。
- 菊池
- 今うちの娘が2歳になったんだけど、本当に待てないの。切ってすぐ出せるミニトマトとブロッコリーから一皿ずつ食べて、終わったら「あー」みたいなこと言うから、「次、魚いきます」「次、ご飯行きます」みたいな。我が家は一品ずつ出すスタイルなんです。
- 野村
- わたしは、7時に人がおうちに来る時に、7時に帰る時もあるわけ。そうすると、みんながびっくりして「何か買ってきた方がいい」とか言うんだけど、「大丈夫」って返してまず、おいしいディップとか作っておいたり、塩とオリーブオイルでもいいんだけど、お野菜とか調理しないで味わってほしいものもいっぱいあるから、その間にいろいろやれば、2時間もあれば十分に最後、あったかいものにありつけるし、工程も見られるから。
- 菊池
- 私も最近、塩とオリーブオイルがなんて素晴らしい調味料なんだと思って、これさえあればいろいろ足すよりもよかったりしますよね。
- 野村
- そうなの。
生産者を支持すること
- 菊池
- 友達が家に来ると調味料の話になったりするかも。
- 野村
- 本当においしいみりんは食前酒にもなるのね。ちょっとシェリーのようなコクがあって、本当にリッチだから普段使っているみりんの半分の量でいいかもしれないし、本当に奥行きが出る。
- 菊池
- いつもだいたい同じような調味料で味付けるから、味付けの癖みたいのがあるんだけど、調味料を変えると、すごい味が新鮮になるから、ちょっと高くても買ってみたりする。
- 野村
- わたしもちょっと高くても投票だと思うわけ。ほんの100円プラスするだけで、この人の生き方と考え方に支持しますという。やめないでくださいと思うし、直接のレスポンスになるから。
- 菊池
- そうですね。忙しいと、スーパーで100円でも安いのを選んでしまいがちだけど、本当に気に入ったものを選んで買うのが応援というかサポートにもなれば、
- 野村
- 代わりに作ってくれて
- 菊池
- 調味料は自分で作れないですからね。
- 野村
- 土作りとか気が遠くなるような、時間を割いて作ってくれる方がいると、分けてもらうのにすいません失礼しましたっていう気持ちになるよね。
菊池さんによる「食」にまつわるエッセイ集「おなかのおと」は、文藝春秋より発売中です。
【『おなかのおと』菊池亜希子 - 文藝春秋BOOKS公式ホームページ】
野村さんは先日、表参道のGYREに新しいお店、グロッサリーショップ「eatrip soil」をオープンされました。
さきほどのお話に出てきたような、野村さんが選び抜いた食材や調味料と出会える場所になっています。
【JOURNAL EATRIP 公式ホームページ】