恋愛の脳科学

長谷川京子(女優)×中野信子(脳科学者)

2019

12.20

null

ドラマを中心に数多くの映画やCMに出演。最近では、MCを務めるなど、活動の幅を広げている長谷川さん。一方、脳や心理学をテーマに研究や執筆を精力的に行っている中野さん。科学の視点から人間社会で起こりうる現象や人物を読み解く語り口に定評があり、メディにも数多く出演されています。

null

「大量釣り」と「一本釣り」


長谷川
こんにちは、中野さん。

中野
こんにちは、はじめまして。

長谷川
はじめましてですね。私がMCをやらせて頂いてる「グータンヌーボ2」で滝沢カレンちゃんの回に出演して頂いた時にものすごく興味深くて、わたしが担当したかったと思って、もっと聞きたいことがいっぱいあったんですよね。

中野
そうなんですね。今日はなんでも聞いてください。

長谷川
「グータンヌーボ2」では、どうやったらモテるかという話が

中野
でましたね。

長谷川
まず、 網で大量に釣るか、一本釣りにするかの違いがありますって言って、「網で大量に釣りたい場合は田中みな実に聞いてください。一本釣りの場合は、男性にできる内容をお願いする」っておっしゃっていましたよね。でも、なんで?男性ができることは自分でもできるし、

中野
確かに。

長谷川
ところで大量釣りをするにはどうすればいいんですか(笑)?

中野
(笑)。これは、田中みな実さんに聞くのが一番いいんじゃないでしょうか。

長谷川
あれは大量釣りですよね。

中野
例えば、私が男だったらこの人は危ないなと思っても、引き込まれていくのが止められないと思います。

長谷川
確かに。

中野
例えば、あざといなと思ったとするでしょ、でも、あざといことを僕にするのは、脈ありかなって思うんですよ。もしかして、僕には本気かもって。

長谷川
田中みな実にはそれがありますよね。私でもドキッとするし、女の私でも嬉しい事があるんですよ 、でも、幸せな恋愛していないじゃないですか。

中野
なんでなんですかね。不思議だよね。本命の人には届かないのか、それとも自分が本当は好きではない相手を本命だと思ってしまう病なんでしょうか。

長谷川
そういう意味での彼女の本来の賢さが

中野
知的で本当は真面目なところが可愛さに隠れて、

長谷川
ね。すごい真面目な子だし、思いやりもあるし、面倒見もいいしね。

中野
いいところが伝わりきってないというか、その良いところを愛してくれる人が大量の壁に阻まれて、リーチできていない感じがします。

長谷川
でも、逆にわたしがもし、大量釣りをするとしたらどうしたらいいですか(笑)?

中野
もうできているんじゃないですか!

長谷川
できていないですよ。

中野
その大量釣りをむしろ、これまで、やらずに生きた人生だったのでは?

長谷川
そうですね 。

中野
これトレードオフなんですよね。子供に対する大人の反応が50年ぐらい前に調べられていて、子供を4種類に分けるんですね。子供は男女で2種類に、その男女の中で容姿の良い男子、容姿の良い女子、容姿のそんなに良くない男子、容姿のそんな良くない女子の4種類いて、「4種類の中のどの人が階段から同級生を突き落としたでしょ」というすごい質問をするんですよ。その質問をした時に、4種類の子供の写真を見せるんですけど、「この人です」って一番高確率で答えられたのは容姿の良くない男性、その次に指差されたのが、容姿の良い女性、容姿の良い子は性格が悪いと思われる、その大人たちも男性と女性2種類いるわけですよ、容姿の良い女子を「この子が犯人に違いない」というのは、大人の女性。一方で男性は「この子は、そんなことするわけがない」と。こういう非対称があって、容姿がよく生まれついた女の子はどういう戦略とればいいかというと、大人の女性は守ってくれないので必然的に大人の男性に頼ることになりますね、そういう戦略を身につけていくことになるので、それを磨いていったのがみな実ちゃんかもしれないし、それでも大人の女性になんとか認めてもらいたいと思って、戦略を立ててこられたのが長谷川さんかもしれない。

長谷川
そうですね、もちろん男性にモテたいとは思いますけど、どちらかというと、大人の女性に認められたいほうかもしれないですね。


null

脳科学的恋愛テクニック


長谷川
両方いいところ取りはできないのかしら?

中野
いいところ取りをするにはあんまり美しいと大変です。容姿がそうでもない女性の方が信頼されたり、賢いと思ってもらえたりとか得することもそこそこあるんですよ。ちょっとめんどくさいところは女性の容姿で目減りして見られるところがありますね。それは美人税みたいものがあるんですかね。

長谷川
難しいな。一本釣りをするのは逆に割と警戒されることが多いですよ。

中野
そうですよね。僕なんか相手にして遊んでいるに違いないって思われる。

長谷川
そういう時はどうすればいいんですか?やっぱり、男の人に頼みごとをするのですか?

中野
もちろんですね。その人にしかないいいところを褒めてあげるのは、かなり定石というか大事なことで、人の心には四つの窓があるという「ジョハリの窓」だと、その人が自分で自覚している窓軸、それから他人がその人を見てこうだと思っている軸があって、自分も知っていて他人も知っているところを褒めてもあまり効果がないんです。例えば東大くんを捕まえて「頭がいいね」と言っても、言われ慣れてるから、別に「またこいつもか」と、お金持ちを捕まえて「経済力、すごいですね」みたいなことを言ってもあまり効果がない。でも自分は知っていて他人は知らないかもしれない秘密の窓があって、ここを褒めてあげると、この人は他の人と違って僕のことをよく見てると思ってくれる可能性が高い。例えば、その人がこだわって履いてる靴下とか、その人が他の人はあまり気づいてないんだけども心配りをしているところとか、あともう一つ効果的なのが自分では自覚してないけど他人から見てわかるところを褒めてあげる。「○○さん、いつもこうですね、そこは、すごく魅力的だと思います。」という風に言ってあげると、言われ慣れてないのでドキッとしたり、本当にこの人は僕のことをわかってくれる、自分がわかってない良いところをこの人だったら引き出してくれるかもしれないと思ってくれたら、パートナーとして一緒にやっていかなくてもずっと友達でいたいとは思ってくれすし、そこから何か発展する、恋の可能性があるかもしれません。

長谷川
なるほど。


長谷川さんの最新写真集『Just as a flower』は宝島社から発売中です。

null

そして、中野さんは喪黒福造というキャラクターを分析しながら、喪黒の“騙しと誘惑の仕方”を脳科学の視点で考察し、「人間の心のスキマ」を解き明かす「悪の脳科学」を、集英社新書より発売されました。

null

これまでの記事

その他の記事