新時代にふさわしい女性像

長谷川京子(女優)×中野信子(脳科学者)

2020

01.03

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長谷川さんはこの度、25歳の時以来16年ぶりとなる写真集『Just as a flower』 を発表されました。今年41歳になられた長谷川さんがすべてをさらけ出して挑んだ意欲作。匂い立つ色気や本能をかきたてるカットが詰まった一冊で女性が見て美しいと感じる、仕上がりになっています。

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人のために何かをしたくなる


中野
長谷川さんの写真集、すごい素敵で、

長谷川
ありがとうございます。
中野
海のシーンがあって、私はこのぶよぶよの体でスキューバーをするので、海によく行くんですけど、

長谷川
いやいやいや
中野
これぐらいかっこよかったらもっと楽しいかなと思うことはありますが

長谷川
これに目がけて、めちゃくちゃ調整はしなかったんですけど、やっぱりゴールが自分にあって、鍛えすぎてはいけないし、痩せすぎてもいけないなぁと。
中野
そういう感じなんですね。うっすら腹筋が見えて適度にまろやかな感じ。

長谷川
そうですね。そもそも男性ターゲットに重きをおいていたので、これがはじめから女性だったらたぶんもっと鍛えたと思います。
中野
おーー。
長谷川
でもどうかな?わからない。私の個人的な見解ではバキバキに鍛えた女性が色っぽいかなと思うとちょっと違うし、本当のヘルシーっていうところを。
中野
ナチュラルさが、ひょっとしたらサブテーマにあるのかなと思いました。
長谷川
そうですね。そういう意味では、修正も極力控えて、脇にできるシワとかもあまり、消さずに、いかしでやったので、
中野
砂にまみれたシーンがナチュラルですごい素敵。

長谷川
あえてそこをみなさんと共有することが自分の成長にもつながるし、自分を受け入れるという意味にもなるし、見てくださる方もそこに共感とかリアリティを感じてもらえるかなという意味で。

中野
すごい面白い、本を作る時に自分の成長を軸にされて、大事にされているんですね。
長谷川
そうですね、やったからには、何かを自分で得たいという貧乏性なんですけど 
中野
いやいやいや。
長谷川
ここ数年で言えば、やっぱり自分のためというのがどんどんなくなってきてて、人にはいろんなレベルがあって自分を主張したい欲求とか、まずはわかってもらい、ちょっと要求がクリアになった何個目かに自分のためではなくて人のために何かをしたくなるというレベルが来るって言うけど、自分はもう年齢的にそこなのかなと思って。もちろん褒められたら嬉しいですけど、自分が楽しくやったことが周りも共有できて幸せになってくれることが今一番幸せですね。
中野
それ最高ですね。
長谷川
でも自分が努力して周りに幸せになってもらおうとは思ってないんです 。
中野
自己犠牲ではなくて。
長谷川
自分も楽しい、まわりも楽しいのが、理想的な構図かな。
中野
確かに。


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40歳を過ぎて感じること


先日、長谷川さんは、「ベストジーニスト2019」に選出され授賞式では、美しい背中が見えるデニムコーデを披露しました。写真集でも新たな一面を見せて、さらに、輝く長谷川さん。40代を迎え、彼女の心境はどう変化していったのでしょうか。

長谷川
写真集の制作途中で芽生えてきたものなんですけど、女性には、ちょっと生きづらさとか解放できてない部分がすごくあるなと思って、今回はそれをちょっとセクシャルな部分で表現をしたんですけど、同世代の女性が元気になったりとか、私も頑張ると言ってくれたりとか、男性ターゲットで作った本なんですね、最初は、40歳を過ぎても女の人はいいねって思ってくれて、それがその女性にもかえればいいなぐらいに思っていて、
中野
女性の息苦しさは大人の女性からはセクシャルでありすぎると怒られて、でもセクシャルな部分をあまりにも出さないと男性からあいつ女を捨ててるとか言われ、そこすっごい細いから。
長谷川
そうですよね。OKラインが細いですよね。
中野
そこから落ちないように一生懸命バランスを取りながら、やっていく苦しさがあると思うんですけど、

長谷川
それは自分も年齢なのか、タイミングでちょっと自分の役割みたいに思ってしまった部分もあるんですけど、女性であることを肯定する事は決して悪いことでもないし、無理しないでそのままっていうのかなぁ。

中野
おっしゃりたいことはわかります。
長谷川
生き延びていくために自分が馬鹿なふりをしなきゃいけないのもおかしいし、ちょっと若いふりをしなきゃいけないのもおかしいけど、かといってフェミニストをうたって強く生きてくのもちょっと時代じゃないかなって、正直、令和になってすごい風向きががらっと変わってきて、別に自分らしくあればいいじゃんという自分の中で考えがあって、色っぽいよねというのは女性の自己肯定感につながるなと思う。もちろんそこにある一定の限度もあって、私はあまり下品に見えるのが好きではないんですけども、下品のものさしって人それぞれですもんね。先日、ベストジーニス賞を頂いて背中パックリ開いた服で、裸にジーンズみたいな格好で行ったんですよ。その時にちょっと露出してしまったかなと、思い返して反省したときに、知り合いの人に、「でも京子ちゃんがめちゃくちゃ楽しそうだったから、ニコニコ笑って全然そこに目がいなかったし、ハッピーだけが伝わったよ」と言ってくださって、それに対してこれをすることで何かを狙うとか、よこしまなエゴが入ったら皆さんきっとその気みたいを感じとるけど、ただ楽しくて、お祭り気分でやったことなので、そこを信じないとやっていけない仕事だから。
中野
そうかもしれないですね。変な焦りとか欲がある時はいい人に会えないんですよね。
長谷川
そうですね。わたしは感覚でしかわからないですけど。自分がいい状態だと、変な人が寄ってこない。
中野
不思議ですよね。焦っていたり、後ろめたい思いがある時ほど変な人に引っかかるというか、多分会ってる人の総量はみんな一緒で変わらないんですけど、貧すれば鈍するという言葉があるじゃないですか。
長谷川
それって何なんでしょうね。価値観が合うから引き寄せるのか。

中野
長期的に見て私と本当に気があって一緒に仕事をやっていける人とスナック菓子みたいな人の違いというか
長谷川
わかります。おいしいし、いいことを言ってくれるんだけど、実はそれは一過性のものにすぎないし、自分よがりな言葉にすぎないってわかってるんだけど、言ってもらうと気持ちいいみたいな。
中野
だから、自分を健康でいい状態に保っておくしかないですね。


長谷川さんの最新写真集『Just as a flower』は宝島社から発売中です。

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そして、中野さんは喪黒福造というキャラクターを分析しながら、喪黒の“騙しと誘惑の仕方”を脳科学の視点で考察し、「人間の心のスキマ」を解き明かす「悪の脳科学」を、集英社新書より発売されました。

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