インバウンドの今
佐藤藍子(女優)×眞野ナオミ(起業家)
2019
12.06
様々な形で日本と海外のリエゾン役を務める眞野さんは東京オリンピックに向けて、観光業に携わる人だけでなく、国や自治体の関係者にも役立つ「インバウンドマーケティング」を紹介する1冊『「おもてなし」という幻想 10年先の日本をつくるインバウンド立国論』という本も出版されています。
眞野さんは、これまで、長野オリンピックのマーケティングやホスピタリティを担当するなど、長年、日本と海外をつなぐ仕事に携わってこられました。さらに、プライベートでは、2児の母でもいらっしゃいます。
グローバルな視点で日本を見る
- 佐藤
- ナオミさんのお仕事は具体的にはどういう形なんですか?
- 眞野
- インバウンド向けの特別企画をする、小さなブティック会社なんですけれども、どちらかと言うとコンサルティング会社ですね。海外から来る特別な要望に対して我々は特注やプロデュースをしていくのが主なんです。ただ観光地を巡るというよりかは、例えば、海外の女性の経営者団体が女性の職人や女将さんなど日本にいる女性を中心に巡りたい。そういうのを普通の旅行代理店はプロデュースできないので、そこをコンサルティングをして、お手伝をさせていただく、どちらかというとイベント企画会社に近いですね。その他、日本庭園がすごく好きで、日本庭園を有名な庭師さんと一緒に周りたいとか、その庭師さんを半年後には自分の庭に呼んで、自分の庭に日本庭園を作って欲しいとか、本当に皆さ日本に対して関心を持ってらっしゃる。先日は、日本の爬虫類だけを見て周りたいとか、色々あるんですよ。
- 佐藤
- もう学会のレベルになっちゃうくらいですよね。
- 眞野
- そうですね。実をいうと学会とかも手伝いもさせていただいたりですとか、あとは例えば企業さんだったりすると、うちの会社のTOPのセールスマン50人に学べるような企画を作って欲しいとか、人と人をつなぐことも多いです。
- 佐藤
- ナオミさん若い時はアメリカで育ったんですね?
- 眞野
- はい。生まれてから3歳と一旦東京に戻ってきて、6歳から15歳までアメリカにいたので、もう高校半ばぐらいまでアメリカにおりました。
- 佐藤
- 眞野さんの本の中には、お父様が日本と海外のリエゾン役になりなさいって言って育ったと書いてあったんですけど、やっぱり日本人でありながら、多感な時期を海外で過ごして、日本をちょっと客観的じゃないですけども、いろんな角度から見る能力が備わってるわけじゃないですか、だからこそこのお仕事はナオミさんしかできない。
- 眞野
- いやいやそれはとんでもないんですが、逆に言うと海外で、ずっと日本に早く帰国したいなと思って育っていると、みなさんが当たり前に思っているものを気づきやすいんだとは思うんですよね。自分の中に外国人の目線と日本人の目線が共存しているので、これは実は外国人から見たらめちゃくちゃ面白いだろうなと、しかもそれを自分の国のことだったりするとどう面白く伝えればいいか、ストーリーテリングの部分もお手伝いをさせて頂いて、少しでも相手に伝わりやすいように落としこんでいくっていうのかな、というのが仕事なんじゃないかな。
海外のお客さんとの関係性
眞野さんは、これまで、長野オリンピックのマーケティングやホスピタリティを担当するなど、長年、日本と海外をつなぐ仕事に携わってこられました。さらに、プライベートでは、2児の母でもいらっしゃいます。
- 佐藤
- 最初に企業をしようとした時は、壁にぶち当たるじゃないですけど、すごく勇気やパワーが必要だったりすると思うんですけど、それを家庭の妻であり2児の母親でもあって、そのエネルギーはどこから出てくるんだろうとか思って。
- 眞野
- 最近ね、年取って(笑)。なかなかバランスが取れてるかどうか、母親業としても妻としても全てが望む通りまでできているかっていうと、24時間の中で自分で自分との戦いなんですよね。ただやはり日本人であって、特殊な境遇の中で育っているので、日本がこんなに素晴らしい国なのに外国人にもっともっとそれを伝えたいと言うのが根本的なライフワークとしてありますね。確かにおっしゃる通り、苦労も絶えずに、インバウンドという言葉も今はこれだけ皆さんに分かる言葉として普及しているんですけれども、私が一社目を立ち上げたのが2007年だったので、その当時はもちろんオリンピックもまだ決まってなかったですし、逆に言うと外国人が何で来なければいけないんだって言われる。「外国人は迷惑なんだ」っていう風に怒られて、門前払いになったこともあったんですね。逆に本当に当時からサポートしてくださっていて、例えばお寺の方や住職の方たちですとか、十何年にわたってサポートしてくださっているんですけれども、彼らも最初のうちからというよりかは、お客様を呼んでそのお客様が本当に関心を持って質の高いお客様をご紹介してくださって、こういうお客様が来てくださるならお手伝いするよって言ってくださる方がだんだん増えてきたんだと思います。ご迷惑をおかけしたことも多々あって、それこそ怒られて土下座したこともありますし、海外のお客様なので価値観が違ったり、例えば、平気で時間通りに来なかったり、お食事も急にお腹の体調が悪くなってキャンセルすることはよくあるんですけれども、やはりお客様を我々も教育する、お客様とすごく近い関係にいるので、キャンセル料とかそういう問題ではなくって、何日もかけて、この方はあなたのために食材を準備してくださっているので、席を空けてしまうこと自体が失礼なんだよというと、皆さん理解をしてくださるので、我々も観光客ではなく一人一人を大切なお客様としてとらえているので、本当に大切に大切にお客様を育てているというのが現状ですね。