生活に欠かせない植物とアート
常盤貴子(女優)×鈴木康広(アーティスト)
2019
11.15
植物が日々の生活に与える影響
- 常盤
- 私、最近、フラワースタイリストさんの方と知り合ったことによって、花に対する興味がすごく出てきまして、切花もそうなんだけど実際に植物を植えて、ガーデニング的な、
- 鈴木
- 育てる?
- 常盤
- そうそう。でもそれってすごく年月がかかることなんですよね、今植えて今楽しいだけではない、それが成長していくのが楽しみ、どんどん大きくなってどんどん様を変えていって、それを楽しむ。正直ちょっと前に出すぎて、歩くのに邪魔なところまで出てきたりとかもするんですよ、でも、それがいとをかしって思ったりとか、「この邪魔な木、綺麗だな」と思ったりとかするその感性がいま自分で気に入ってる。切ってしまえば終わりなんだけど、でも切ったとしても、それを今度邪魔だと思ってたものを飾る、活けるのもまた一つ楽しいことだなと思うようになって。
- 鈴木
- 邪魔になってしまうものを切って活けるって最強ですよね。
- 常盤
- 最強の発見をしました。
- 鈴木
- 僕、道端に生えている植物にものすごく惹かれるんですよね。毎日歩く道でもその生えている植物を見るだけで、僕は楽しんでるなって思いました。変化も感じるし毎年違うし、それを写真に撮るから余計に去年と違うとか、それをツイッターにアップしたりもしていて、実況とかしてました。葉っぱと葉っぱのせめぎ合いとかを。
- 常盤
- 笑。
- 鈴木
- 色が違う葉っぱ同士がジリジリと集まってきて戦ってるように見えてきたんですよね。常盤さんがおっしゃったようにそういう何気なく伸びたなっていうのを切らなきゃみたいな時に、めんどくさいとか思うと多分コンクリートの塀とかなっていくと思うんですよ、でも実はその隣の人元気なんだなとかお互い伝えあったりとか、伸びたのを切らないとご迷惑になるかもしれないとか、飛んできた葉っぱを隣の人が片付けてくれてありがとうとか思ったりとか不思議な重なりが目に見えない役割になるような気がして、いろんな周辺のことに気づけることはすごく大きな変化なのかなと思う。
アートで感性を確認し合う
- 常盤
- 私と夫は誕生日が近いんですね、10日間ぐらいずれているんですけど、それぐらいだと正直プレゼントをあげ合うっていうのも微妙じゃないですか、いただいたらすぐあげるみたいな。
- 鈴木
- プレゼント交換ができますね。
- 常盤
- 交換はできるけど、何年も一緒にいるとそんなにいただくこともない感じになって、もういいよみたいになってくるじゃないですか、それで私達が編み出したのが1年に1回、近所のアートショップのイベントで、一枚絵を買うこと。それはお互いにプレゼントし合ってる意識だから、お金を出し合って1枚を買う。
- 鈴木
- 一緒に、割り勘ですね。
- 常盤
- 割り勘。だけど、わたしはあなたにプレゼントした。あなたはわたしにプレゼントした。
- 鈴木
- いいですね。
- 常盤
- 毎年だとそんなに気に入ったものがない時もある、その時は来年にプールするんですよ。そうすると来年もうちょっとグレードの高い物を買えるかもしれない、でも、かといってその次の年に小さい絵が気に入ってしまったらそれはそれでいい。
- 鈴木
- 金額ではないってことですね。
- 常盤
- そうそう。自分たちが本当に欲しいと思ったものを財産にすることにして、そういう買い方、結構気に入ってて、自分のものにしていく感じもいいなぁと思って。
- 鈴木
- それを選ぶ時の価値基準というか、常盤さんが良いと思ったけど旦那さんが違うことは?
- 常盤
- これが、だいたい合うんですよ。
- 鈴木
- 失礼しました。
- 常盤
- 最初に私がパッと見に行って次の日に夫が見に行って、答え合わせ的な感じで、何が好きだったのか言い合うんですね。そしたら大体一緒なの。逆にずれていたら、今年はやめようってなるんですけど。それで感性を共有し合うみたいなところも確認できるから結構面白いですよ。
- 鈴木
- すばらしい。いい話です。ヒントになりました。
- 常盤
- 皆さんはどういうものを買ったりするのかな?なんか小物だけでもやっぱり芸術作品と言われるものを購入するのは結構勇気のいることじゃないですか。
- 鈴木
- 作家のものは、版画とかいくつも作れる仕組みといえども、やっぱり一点ものだから、他で売ってないものを相手にしてるのがポイントですね。
- 常盤
- 勇気いりますね。それを我が物にするとその一生付き合っていく覚悟じゃないですか、そこまで考えなくていいのかな。
- 鈴木
- そうみたいです。僕の仕事場で同じプロジェクトの方が、たまたまその研究室を訪ねたら、銀でできているリンゴのオブジェみたいなが置いてあったんですね。僕、りんごがとても気になる人間なんで「これ何ですか?」って言ったら「これは実はロバート・ラウシェンバーグのマルティプルなんだ」っておっしゃって。アメリカを代表する作家なんですけど「こんなに触れるとこに置いていいんですか」みたいな感じだったんですけど「よかったら鈴木さん、これ持っていってください」とか言うんですよ
- 常盤
- えーー!
- 鈴木
- 「何かと交換しませんかとか」ってその場で言われて、その人がすごい人だから僕の中にこれと釣り合うものがあるかと思って。でもそういうもんだと思ってるみたいです。大事にしてくれる人とか、誰かが持ってるりんごだから鈴木さんが持ってるのはいいんじゃないかって言われて。確かに僕が譲り受けたら僕はおそらく大切にするし、また誰かの手に渡すことができるんじゃないかなと思って。地球上にありさえすれば、何か良いみたいな。そういう感覚も様々なのだなと思って、その人も鈴木さんが持ってるって言いたくなるからいいんじゃないかって言うんですよ。「これと釣り合いそうなものがあるかを調べてきますね」と言ってとりあえず保留みたいな感じでまだ置いてあるんですよ。でも提案してみようかなと思って。
- 常盤
- すごいいい話。
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