身体との向き合い方

石川直樹さん(写真家)×吉開菜央さん(映像作家、振付師、ダンサー)

2019

04.12

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厳しい自然や秘境を旅して、身体の限界に挑む石川さん。そして、吉開さんは、普段は意識しないような人間の身体の細部にまでフォーカスをあてて表現を追求しています。

一挙一動を意識する



吉開
もともとスポーツはすごい好きだったんですけど、ただ将来スポーツ選手だけにはなりたくないと思っていて(笑)。

石川
俺も登山をやっていると、よくアスリートに例えられたりするんだけど、競争するのが苦手で、

吉開
そうなんですよ。

石川
特にチームスポーツとか、俺がこれを失敗して点を入れられちゃった、どうしようとか、あんまり得意じゃないですよね。だから、スポーツ系じゃないのに、よく「挑戦するなんとか」とか「アスリートがなんとか」そう言われ、全然そういうタイプじゃないんだけど、吉開さんも?

吉開
負けず嫌いではあったんですけど、よく失敗するタイプだったので、もうスポーツ嫌だなという気持ちになって。

石川
俺もダンスとかに憧れがあって、大学時代にちょっとサークルの見学とかに行ったこともあったんだけど、でもやっぱり俺は無理。どうすればいいんだろうね?

吉開
石川さんは作品を作るために、体を動かすこと自体が結構ダンス的なんじゃないですか?

石川
登山の場合でも、リズムじゃないけど、呼吸だね。動きよりも呼吸のほうが重要で、深く早く呼吸をしながら体を整えていく。高山病になっちゃうから、本当に呼吸だけは意識的にずっとやってきたんだよね。

吉開
けっこう気持ちが落ち着くなというところまでいけたりするんですか?

石川
そうだね。やっぱり息切れを続けていると酸素が体に回ってなくて、すぐ高度障害、高山病になってしまう。特に6000m以上の高所登山だと、息切れをなるべくしないままずっと運動維持し続ける。そのためには一定のリズムで呼吸を整えないといけなくて、普通の登山をしたことのない人と、例えば「富士山に登りましょう」と言った時に「石川さん早いから、付いていけないから嫌ですよ」とか言われるんだけど、そうじゃない。強いから早いということではなくて、すごくゆっくりゆっくり同じように歩き続けるから全然大丈夫なんだけどね。山登りとかしたことある?

吉開
本当に憧れはあって、まだ低い山からですけど、地味にはじめたりしていますよ。

石川
けっこう山登り楽しいよ。

吉開
楽しいです。ずって一定のリズムで呼吸をするとおっしゃっていましたけど、山にいると静かだから自分の呼吸の音しか聞こえない。それが楽しかったです。

石川
低い山ではなくて、6000 m とか8000 m の山になってくと、本当にすべて一挙一動に対して意識的になるのね。ご飯を食べるとかもお昼の時間が来たからご飯を食べるとかじゃなくて、明日、自分の体をきちんと動かすためにご飯食べるし、呼吸も街で生活していたら考えないんだけど、山では深く早く呼吸しながら自分の体を整えていくとか本当に全部意識的になる。それを2か月ぐらい続けていると、体が生まれ変わったみたいな感じになるんですよ。

吉開
すごいですね。それ修行ですね。なんか茶道みたいですね。一番効率的な動きをしないと死ぬということですもんね。

石川
そうそうそう。だから修験道とかともちょっと似ているかもしれないんだけど、茶道もそういう感じなの?

吉開
茶道も型があるんですよね。それが一番美しく効率がいいとされているような音のたて方とか、美意識が違うところにあるかもしれないですけど、似たものを感じました。


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呼吸のすすめ



石川
吉開さんはどんな感じで休日を過ごしているんですか?

吉開
ちょっとでも時間があっても晴れていたら、よく散歩に行くかも。すごいありきたりなことで申し訳ないですが。

石川
俺、この日は休みだ!みたいなことはあまりなくて、好きな事ばっかりやっているから毎日が休みみたいなもの。毎日、肩の力が抜けている感じがして、でも、マッサージとかに行って、よく「力抜いてください」と言われ、「力抜いてます」って言うんだけど、「ちょっとまだ抜けてない」みたいな感じのこと言われて。力の抜き方は多分、ダンサーの人は、分かってると思うんだけど、よく骨まで抜けてんのかぐらいの動きをするじゃない、そういうのは羨ましいよね。力を本当に抜くにはどうすればいいの?

吉開
わたしも普段は抜けなくて、かなり気が上がっちゃうタイプなので、どうしたらいいんでしょうね。でも骨盤を呼吸させるといいらしいですよ。骨盤を呼吸させるつもりで息をして、日々生活する。

石川
腹式呼吸は、よくやるんだけど、骨盤はなかなか難しい。

吉開
骨盤で色んなもの受け止めて、骨盤で集中して、

石川
骨盤といったら腹式よりもさらに下だね。

吉開
そうです。

石川
男にもあるんだっけ?

吉開
ありますよ!ないと歩けないですよ(笑)。

石川
そのへんは学ばないといかんね。

吉開
あとは、ゆっくり、6秒くらい吸って肩の頂点を耳につけるようにして、6秒くらいでゆっくり肩を下ろすのを自分の好きだけやったら、わりとふっと抜けたりはします。

石川
6秒とかけっこう具体的だね。実体験に基づいているの?

吉開
そうですね。呼吸を整える時は、6秒吸って、6秒吐きますね。同じほうがいいみたいです。自分の秒数でいいんですけど、同じだけ吸って同じだけ吐いたほうがバランスが保ちやすい。

石川
僕は吐くほうにポイントを置いていて、吐かないと吸えないから、吐くほうをいつも意識していたかも。

吉開
私は結構すぐに力が入っちゃうタイプだから、力が入りやすい人は抜くために吐くのを意識した方がいいと言われていますね 。


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