静止画と動画、それぞれの強み
石川直樹さん(写真家)×吉開菜央さん(映像作家、振付師、ダンサー)
2019
03.22
22歳で北極から南極まで人力で踏破。23歳で七大陸最高峰の登頂に成功し、その後も世界各地を旅して撮影を続ける石川さん。そして、吉開さんは、ダンサーであると同時に身体的な感覚や現象を題材にした映像作品を発表しています。
現在、石川さんは、初台にある東京オペラシティアートギャラリーで東京での初の大規模個展「石川直樹 この星の光の地図を写す」が開催中。北極、南極、ヒマラヤ8000m峰といった極限の地を撮影した写真、世界各地の洞窟壁画を訪ねたものや、日本列島の南北に点在する島々を探索するシリーズなど、初期から現在に至るまでの活動を未発表作品を織りまぜ、総数およそ300点で紹介されています。シリーズごとに部屋の雰囲気が違ったり、実際にテントの中に入って、映像を鑑賞することもできたりと、様々な角度から石川さんが写した地球の姿を見ることができます。
初台にある東京オペラシティアートギャラリーでは、3月24日まで、石川さんの大規模個展「石川直樹 この星の光の地図を写す」が開催中。そして、同じ東京オペラシティアートギャラリーにある、NTTインターコミュニケーション・センターでは、先日まで、「オープン・スペース 2018 イン・トランジション」が開催されていました。これは、現代のメディア環境における先端技術を取り入れたメディアートなどを見ることができる展覧会。その参加作家のひとりが、吉開さんで、今まで見たことのないような作品を発表されていました。
世界を体感できる写真展
現在、石川さんは、初台にある東京オペラシティアートギャラリーで東京での初の大規模個展「石川直樹 この星の光の地図を写す」が開催中。北極、南極、ヒマラヤ8000m峰といった極限の地を撮影した写真、世界各地の洞窟壁画を訪ねたものや、日本列島の南北に点在する島々を探索するシリーズなど、初期から現在に至るまでの活動を未発表作品を織りまぜ、総数およそ300点で紹介されています。シリーズごとに部屋の雰囲気が違ったり、実際にテントの中に入って、映像を鑑賞することもできたりと、様々な角度から石川さんが写した地球の姿を見ることができます。
- 石川
- はじめまして、石川直樹です。
- 吉開
- はじめまして、吉開菜央です。
- 石川
- 今日は、来ていただいてありがとうございます。
- 吉開
- こちらこそ呼んでいただてありがとうございます。
- 石川
- 知り合いとか友達ではなくて、本当に今日、初めて会って、吉開さんの名前は4〜5年前から、写真家の黒田菜月さんから聞いていて、吉開さんの「ほったまるびより」とかも見ていて、
- 吉開
- そうなんですね。ありがとうございます。
- 石川
- すごく気になっていて、一回お話したいなと思ってお声がけしました。
- 吉開
- はい。ありがとうございます。私、石川さんの展示を見て、本当にすごい簡単な言葉になっちゃいますが、その場所に行ってるみたいな気持ちになりました。こんなのは、初めてだし、その空間自体がすごく良かったです。普段、見られないような地球の場所から繋がっているじゃないけど、そういう感覚をあの場所ではもらえて、素晴らしいなと思いました。
- 石川
- 写真は平面的なものだけど美術館のような天井の高いところで展示する時に、インスタレーションとして考えなくてはいけなくて、自分自身も慣れてないんだけど、明るい部屋からすごく暗い部屋に行って、洞窟壁画の写真で洞窟を、そこから海の星々みたいな感じで写真を浮かべるように展示をしてみたり、そこからバットを開けて、白い明るい世界に行ってみたりとかも、本当に体で感じられるような空間にしたいと思って。やっぱり、写真は、ある瞬間が止まっているもんだから、なかなかその感覚的な事に訴えるのはすごく難しくて、でも吉開さんが感想を言ってくれたのは、嬉しいんだけど、感触とか、もっと直に考えようとしていくと映像の方がいろんなこと、微妙な機微とか、体の身振りの揺れとか、そういうので何か感じるところがすごくあるので、吉開さんに興味を持って、お話を伺おうかなと思ってお声がけした次第なんですよ。
- 吉開
- 逆にわたしは、静止画の強さをすごい感じましたけどね。普段、動くものに慣れたり、音がするものばかり考えているから、ひとつの止まった画を日常生活でじっと見ることは、なかなかない。だから静止画だけを見る時間はすごい贅沢だと思ったし、逆に静止画で、ここまで心が動くんだと思って、なんかちょっと悔しいわけじゃないけど、静止画は強いって思いました。
触覚映画とは?
初台にある東京オペラシティアートギャラリーでは、3月24日まで、石川さんの大規模個展「石川直樹 この星の光の地図を写す」が開催中。そして、同じ東京オペラシティアートギャラリーにある、NTTインターコミュニケーション・センターでは、先日まで、「オープン・スペース 2018 イン・トランジション」が開催されていました。これは、現代のメディア環境における先端技術を取り入れたメディアートなどを見ることができる展覧会。その参加作家のひとりが、吉開さんで、今まで見たことのないような作品を発表されていました。
- 石川
- 吉開さんは、触覚映画《Grand Bouquet/いま いちばん美しいあなたたちへ》という作品を発表していて、触覚映画なんて耳慣れない言葉で、僕は体験したんだけど、一度、吉開さんの言葉で、どんなものだったのか教えてくれますか?
- 吉開
- まず、NTTの触覚研究所というところがあって、そこで、渡邊淳司さんという方が触覚の研究をされていて、一緒に今回、触覚という技術を使った映画を作らないかと企画をもちかけてもらい、一緒に作りはじめたものなんですけど、具体的にはスピーカーを胸元とお腹と背中、3箇所に密着させ、スピーカーに音が流れると振動するので、その振動によって触覚を感じながら画と音と触覚で映画を体験するというようなものになっています。
- 石川
- 一人でしか見られない映像で、椅子に座ると、見たことないようなベストを強くしめられて、何がはじまるのかなと思っていたら映像がシャワーで浴びるような音と振動であっという間に時間が過ぎたんですけど、いろいろ記憶とかを揺さぶられる作品だった。一体どういうところからあれは始まったのかとかストーリーも説明しにくい映像ですよね?
- 吉開
- そうですね。でも、わたしの中では、今まで作ってきた中ではいちばんストレートなストーリーのような気もしているですけど、思いついたのは、実は触覚映画を作りませんか?と言われたことよりも1年前だったんですよ。すごいやりたいと思っていろんなプロデューサーの人に送ったりしたんですけど、「いくらお金があったらできるんだろうね」と先立つものがない状態で。なので、触覚映画と聞いた時に1年前に考えた話がすごく相性がいいなと思って、「これどうですか?」となっていったんです。内容としては、木の根っこの塊のようなすごい黒い細い繊維が集まった塊と言っているんですけど、それと、一人の人間ですね。女性が本当に何もない無限に広がるような空間で、2人が対峙してコミュニケーションを取ろうとしているんですけれども、それが黒い塊からの一方的な問いかけになってしまっていて、その問いかけに対して女の人は言葉を持っているのに、声にして出せない、伝えられない。それで、そんな自分の体内から花を代わりに吐き出してしまうという話だといろんな人には説明してます。
- 石川
- 黒い塊は言葉では説明しにくいものなんだけど、それがぶつかってくるような感じとか、中に入ってきそうで入ってこないような感覚とかいう、吉開さんの映像は触覚映画に限らず、すごく五感に働きかけてくる、何か意味になる前の感覚。名前などが付される前の意味になる前の触感だったり、感覚みたいなものを呼び起こしてくれるような作品ばっかりで、それの更なる具体性を持ったものが触覚映画みたいなものだったのかなとか、いろいろ見ながら考えていたんですよ。本当に初めての体感できる作品だったので、ちょっとびっくりしたんですよね。