次世代にバトンをつなぐ思い

井上道義さん(指揮者)×森山開次さん(ダンサー、振付家)

2019

01.18

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公演が間近に迫っている、モーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』でタッグを組んだおふたり。オペラとダンスのコラボレーション、英語字幕付きでの日本語上演、斬新な舞台装置など新しいチャレンジに果敢に取り組んでいます。

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自分自身の表現を見つけていくための方法



井上
何か知りたいと思ったらちょっと前までは、仏教でも天竺、インドまで行って、奥義を得て帰ってきましたという話もあった。でも、今はスマホを見ると、いろんな答えがすぐに出る。でも出た気になるだけ。答えが簡単に出るのが怖いんだよ。

森山
僕たち舞台に立っているダンスの魅力のひとつとしては、そこで動いて、何か実感をして舞台の芸術を大事にしていきたい。ダンスのいちばんの特権は、動いた実感がそのままダイレクトになるので、それが西洋のことを題材にしてようが、体の中には、確実に実感がある。それをもっとやり続けたいという思いはあります。

井上
森山さんはダンスを21歳からはじめましたって言ったけど、僕は35歳まで、本当にオペラの勉強を何もしてなかった、できなかったっていうか、僕の辞書になかったの。ある時ぞっとして勉強を始めたんだけど、僕らの時代、もっと言えば小澤征爾さんの時代はもっと大変だったら、海外には船で行かないといけない、僕の時代ではせいぜい高かったけどアエロフロートに乗って行けた。でも今はもう10万円で往復できるでしょ、今はなんでも便利になって答えがみんなありそうなんだけど、そこにはいわゆる答えらしいものがあるわけで、自分の答えがあるわけじゃない。自分の答えは何かってことを探すのは、もうギリシャ人でもアリストテレスの時代でも今の時代でも同じなんじゃないですかね。だから思いっきり一つのことに向き合っていく、その為の一生というのはおもしろいよね。


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クリエイティビティ溢れるおふたりの休日



井上
僕らの生活は週末はないんですよ。いつが日曜日かほとんどわかんない。

森山
わからないですね。

井上
週末のようなものを作りたかったら作らなきゃいけないから、この日は休むことにしようとずいぶん前から決めてね、僕の場合はバイクに乗って、山を走るし、泳ぎますね。伊豆によく行くんですけど、シュノーケルをやると魚もいっぱいいるし。

森山
いいですね。僕は今話しを聞いていて、そういうのは本当にないなと思って羨ましですけど、いつも時間ができると、何か作ったり、書いたりしてますね。昨日の夜も絵を描いていましたけど、その前の日はお面を作ったり。

井上
かなり本格的なんですよ。

森山
実は今回、僕が作ったお面も使おうかなと思っているんですけど、今回のために20〜30個作りましたね。ベースに和紙を貼っていって作ってくんですけど、女性のお面と男性の面を作って、ドン・ジョバンニはマスクをつけるというイメージがあると思いますけど、いわゆるありきたりのマスクばかりではなくて、オリジナルのマスクも使えたら良いなと思って作りました。オフはもういつも何か作っているんです。

井上
仮面という意味では自分の普段ではない顔を欲しいというのは、最近のハロウィンのバカ騒ぎ、あれは仮面を被りたいんだよ。自分じゃない自分になりたい。それはこのドン・ジョバンニの中にも表れていて、森山さんが仮面を作るときは、自分の顔を変えたいの?

森山
自分の顔を変えたいという思いと自分の持っている、中のものをひとつの形で表現したい、両方ですかね。今回、仮面をかぶってもらうことで、みんながそれぞれに考えていることでも、同じことを考えている部分もどっかにあるわけで、仮面を使ったりすることで、より人間の中身を描いていけるかなと思っていますね。


モーツァルト 歌劇『ドン・ジョヴァンニ』全幕 東京公演は、東京芸術劇場コンサートホールで2019年1月26日(土)と 27日(日)に上演されます。

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