実現していくモチベーション

行正り香さん(料理研究家)×田中麗奈さん(女優)

2018

12.21

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行正さんは、高校3年生の頃にアメリカに留学、カリフォルニア大学バークレー校を卒業されました。その後、広告代理店でCMプロデューサーとして活躍後、料理研究家へ。そんな行正さん、実は英語の成績がビリだったそうです。


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行正流、英語習得術



田中
NHK WORLDでは「Dining with the Chef」 のホストを務め、世界に向けて英語で日本料理をプロモートされたり、英語コンテンツ「カラオケEnglish」 も制作。英語学習を解説した本「ビリから始める英語術」なども出版されています。英語教育を手がけるようになったきっかけは?

行正
これは自分の娘たちのためなんです。娘たちを、英会話教室にずっと通わせていても「What’s Up!」ぐらいしか言わなくて、宿題をくれる塾に行っても、また「つまらない」って言われて、もうだめだと思って。でも私は英語は、世界を歩くためには、必要な靴で、英語ができることによって情報は10倍になるし、どこか旅行に行ってもトリップアドバイザーを読めるのと読めないのでは、おいしいレストランにたどり着けるかつけないかとか、すごく違う。だから自分で作りました。

田中
「カラオケ English」とは、すごい面白いネーミングですよね。

行正
カラオケは、歌詞が流れてきますよね、その時に色が変わるじゃないですか、あの方式を活用したんですね。だから、例文を見るんだけれども、そこに色が変わっていって、お母さんが指差しをするように文字を覚えていける、カラオケを歌うように常に声を出して、自分の声を録音して、間違っていたらそれを比べて、訂正してという感じで、休む暇のない教材なんですね。

田中
発音していくことが大事。

行正
多分、セリフでもそうだと思うんですけど、声に出して読まないと実際に演技は難しいと思う。

田中
そうですね。やっぱり声に出すというのは大事だと思いますね。自分の脳に刷り込まれていくっていうか。

行正
私自身の一番の悩みは、学習教科書を開いた瞬間に眠たくなってしまうんです。

田中
やっぱり脳ですかね?

行正
それで私、高校時代にビリだったんですよ。英語だけではなくて全ての教科が。

田中
これは励みになります。

行正
それで留学しようと思った時に、本や辞書を持っていっても絶対に何も役に立たない。だから人の話しているものを全部真似しようとは決めていて、英語の先生に出会った時に、私がもう寝ていることをすぐに察知されまして、その先生に呼び出されて、怒られるのかなと思ったら、声に出して自分の声を録音して、それを持ってきなさいっていう風に毎日私に宿題をくださった。それで声を出しているうちに脳がやっと起きたんです。英語ができるようになったら他のものにも興味が生まれて、そうやっていろいろ繋がっていった感じですね。

田中
なるほど。


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余計なことの情報に惑わされない


自分の声を録音してチェックするという行正さんが手がけた「カラオケ English」は、昨年、日本e-Learningアクティブラーニング特別部門賞も受賞されました。料理研究家にとどまらず、英語教育コンテンツを一から開発、またプライベートでは2児の母親でもいらっしゃる行正さん。お忙しい日々の中ですが、そこには、ひとつの信念がありました。

田中
本当にすごく多岐にわたって活動されているところが本当に素晴らしいと思うんですけど、り香さんの舵を切る源や思いとは?

行正
例えば、自分がすごく忙しい時にいろんなレシピを見てもなかなか手間がかかるものが多いなとか、あるいは自分の子供はどう考えても落ちこぼれるに違いないとか、ある程度見えてくる。忙しい人は私と同じように困っているに違いない、でもその困っている人に何か解決方法を提案できたら、それはある意味ビジネスになるんじゃないかなという考え方ですね。私の場合は余計なものを全部省いていくんですね。英語の学習にしてもこれだけ覚えればいいってものだけに絞っていくのが大切。ポイントを探して、なるだけ余計なことの情報に惑わされないようにする。

田中
今は、ネットを見たらいろいろ書いてありますから惑わされる時代ですよ。その合理的というか効率的にどうできるかというところがすごいポイントですね。

行正
わたしは、広告の仕事をしていたので、15秒や30秒に収めるというトレーニングを17年間していました。たくさんの情報をクライアントさんからいただいて、その中からたったひとこと、たった1品、たった、たった1ビジュアルを抽出していた作業なんですね。結局レシピにしても英語を教えることも実はとても似ていて、バラバラのモザイクを簡単な順番から組み合わせていくのに近いんですね。広告も実はそれに近いので、そのトレーニングがすごく自分にとって情報を整理するのに役に立ったかな。

田中
情報を整理するのは大事ですね。でも自分にとって大事なもの、自分とってすごく心地いいものをチョイスしていくのが大事なんですね。

行正
デザインは、教育デザインにしてもインテリアデザインにしても全てのデザインは、足し算と思うじゃないですか、だけど本当のデザインは、引き算なんですね。あまたある全ての中で何が一番大事と思うかということを引っ張り出していって、それを強化するのがデザインになる。英語であれば私だったら声を出して自分の声で言ってみるのは一番大切、その後に読み書きがくるから、一番大切なものを前に持ってくる。パスタだったらトマトソースはやっぱり大事だから、そのトマトソースを徹底的に研究して、上手にできるようになると、他のパスタも全部できるようになるんですね。何を一番大切に思って何だけは捨ててはいけないかということを考えると、インテリアも英語も実はすごく楽になる。

田中
今を生きる働く女性として、大切にされていることはありますか?

行正
働いていると女性は、ある意味いろんな迷える贅沢を思っているんですね。例えば結婚にしても、子供にしても、仕事にしても。その迷うのは、すごく私は時間が無駄だと思っているので、やるんだったも全部やる。ある意味、覚悟さえあれば、やっていけるんですね。

田中
なるほど。でも、例えばどっちも欲しいみたいになったら?

行正
教えてもらったいい言葉があって「Life is all about “trade-offs」”トレードオフするんだよ”と言ってくれた人がいたんですね。どういうことかというと、ひとつをゲットすることは、ひとつを捨てること。常に一つを選んだら一つは目をつぶって捨てる。常に選択していくことが人生なんだよって言われた時に、頭の中でストンと落ちたんです。

田中
なるほど。


行正り香さんは、肉好きの、肉好きのための、肉のレシピ本「肉の本 今夜は、お肉を食べよう。」を扶桑社より出版、おもてなしに役立つお肉料理がたくさん掲載されています。

駒沢公園ハウジングギャラリーにある三井ホームのモデルルーム「プレミアムレジデンス駒沢」にて公開収録

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