恋愛観と母親像
西田尚美さん(女優)×本谷有希子さん(劇作家、小説家)
2018
11.23
現在公開中の映画「生きてるだけで、愛。」の原作を手掛けた本谷さんと、この作品に重要な役で出演されている西田さん。「生きてるだけで、愛。」は、他者との繋がりを求める現代の若者たちの心情をリアルに綴るラブストーリーになっています。
おふたりは、ともにプライベートでは、ご結婚もし、お子さんもいらっしゃいます。
映画『生きてるだけで、愛。』は、新宿ピカデリー他全国で公開中です。
恋人同士が惹かれ合う理由
- 西田
- 今、恋愛について思い返してみているけど、あれは何だったんだろう?本当に恋愛をしていたのかな?そもそも何が恋愛なのかもわからなくなっちゃった・・・。
- ふたり)
- (笑)。
- 本谷
- 私は「生きてるだけで、愛」の中で、”あれが恋愛じゃなかったら私は恋愛を知らない”って言う文があって、確か寧子が津奈木といた時、本当にたわいもないエピソードを思い出して、あの時間であの人と一緒にずっといたいなって思った瞬間が、恋愛じゃないんだったら私は恋愛を知らないって言う。あれが恋愛だったかどうかってよく分かんないじゃないですか?あれが恋愛じゃなかったよって言われたら、恋愛をしてなかったみたいな。
- 西田
- どういうのが恋愛なんだろう?好きになって、付き合ってくださいとか言って付き合って・・・。
- 本谷
- もしかして、自分が相手に影響を与えている感覚がすごい快感で、例えば、仕事に行かずに、自分といることを選ぶのは、自分が相手に影響を与えていて、その時は、ものすごい快感じゃないですか。この人、仕事よりも私を選んだという。その相手が好きなのか、コントロールできたことが物凄い快感なのかわからない部分があるなと思って。今の私の恋愛観は、実はお互いコントロールできていることが恋人達にとってすごく強烈に惹きつけられることじゃないかな。
母親になってみて
おふたりは、ともにプライベートでは、ご結婚もし、お子さんもいらっしゃいます。
- 西田
- 私は子供が全然好きではなかったので、産むまで、結婚にも興味なかったし、誰か近くにいたらいいなくらいに思っていたのが、なんとなく結婚しちゃって、そしたら子供もできちゃったみたいなところがあって、初めて知らない人と一緒に生活して、いつのまにか家族みたいな感じになるもんなんだなぁと思って、子供が好きではなかったけど子供に対して愛情じゃないけど、すごくかわいいっていう言葉が自然に出るんだって思って、そういう自分にすごくびっくりしました。自分の子供を通してすごく変わったって思いました。
- 本谷
- 子供が生まれた事で仕事への向き合い方が変わるとかあるんですかね?私もよく聞かれるんだけど。
- 西田
- 変わったのかな?昔よりあんまりどう見られるとか考えなくなったかな。
- 本谷
- それはそうですね。どうでもよくなりますよね。
- 西田
- なる。
- 本谷
- 自分への執着が薄れるのかな。この子のためにとか、この子に自分の人生を捧げるみたいになったら違うから、何が子供にとって一番いいかなと思ったら、多分、私は私の人生を楽しんでるのがいいんだろうなと思って、子供の人生と私の人生はもう別物という感じですよね。そう思っていないといけないなと思う。
- 西田
- 産んだ時に助産師さんにそう言われた。一生懸命生み落したその瞬間から、彼女は彼女の人生を生きてくから、あなたは、がんばって産んだけど、あなたはあなたの人生をがんばってねって言われて。何か別にこの子のために頑張るとかそういう概念じゃなくていいんだと思ったら、すごい気持ちが楽になって、彼女は彼女なりにどうにかして、生きていくんだなと思って。
- 本谷
- そうですよね。だから母親とは?と考えるようになって、絶対に犠牲になるべきじゃないし、母親の前に自分で自分の人生を持っていないとと思うようになった。
子供が生まれるまでは、その考えもしなかったけど。それが子供にとって一番いい事だと私は今思っているんだけど。
映画『生きてるだけで、愛。』は、新宿ピカデリー他全国で公開中です。