自己嫌悪に陥った過去
西田尚美さん(女優)×本谷有希子さん(劇作家、小説家)
2018
11.02
ナチュラルな存在感で数々のドラマや映画などで活躍されている西田さん。そして、20歳で「劇団、本谷有希子」を旗揚げ、作・演出を手掛ける本谷さん。作家としても数々の小説を発表し、2016年には、「異類婚姻譚」で芥川賞を受賞されました。
この度、本谷さんの小説、「生きてるだけで、愛。」が映画化。そして、作品の中で、重要な役で登場するのが西田さんです。主人公の寧子は、過眠症で引きこもり気味。自分にも他人にも嘘がつけず、まっすぐすぎるがゆえに、理不尽な感情を恋人の津奈木にぶつけてしまいます。一方、津奈木も、そんな寧子に優しく接しながらも、会社では気の進まない仕事をおしつけられ、ストレスを抱え、全てを諦めている青年。芥川賞・三島賞候補作となった小説「生きてるだけで、愛。」は、どのようにして誕生したでしょうか。
今を生きる若者が抱える心情をとてもリアルに描いている本谷さんの作品。今回、映画化された「生きてるだけで、愛。」の主人公、寧子が葛藤する姿に共感する人も少ないないようです。
映画『生きてるだけで、愛。』は、11月9日より新宿ピカデリー他全国で公開になります。
この度、本谷さんの小説、「生きてるだけで、愛。」が映画化。そして、作品の中で、重要な役で登場するのが西田さんです。主人公の寧子は、過眠症で引きこもり気味。自分にも他人にも嘘がつけず、まっすぐすぎるがゆえに、理不尽な感情を恋人の津奈木にぶつけてしまいます。一方、津奈木も、そんな寧子に優しく接しながらも、会社では気の進まない仕事をおしつけられ、ストレスを抱え、全てを諦めている青年。芥川賞・三島賞候補作となった小説「生きてるだけで、愛。」は、どのようにして誕生したでしょうか。
小説は実話?
- 西田
- こんにちは。
- 本谷
- こんにちは。
- 西田
- お久しぶりです。
- 本谷
- お久しぶりです。
- 西田
- 今日でお会いするのは2回目ですね。
- 本谷
- でも、2回目とカウントしていいのかも分からないくらい。
- 西田
- そうですね。
- 本谷
- 一回目は初号試写の打ち上げで
- 西田
- 焼肉屋で同じテーブルで
- 本谷
- 女優席(笑)。
- 西田
- 一緒にお肉を焼いて食べましたね。
- 本谷
- 今日はドキドキしますね。「生きてるだけで、愛。」は、25歳の時に書いた作品で、主人公の寧子も同じ25歳で、「私」という一人称で書いた小説なので、どうしても読む人はそのまま本谷有希子を想起する構造になっているんですけど、寧子が結構エキセントリックな女性として書かれてるので、この小説で私のイメージがすごくついたらしくて、そこから私自身エキセントリックな女性と思われる時代が長く続いたような。
- 西田
- 違うんですか?
- 本谷
- 違うと思うんですけどね。
- 西田
- 私はそうだと思っていた!寧子のキャラは、独特で、ピュアですごい儚い感じもして、でも強さもブレてない芯があって、本谷さんなのかなと私も思っていたんですけど(笑)。
- 本谷
- でも実際に、寧子みたいに部屋でずっと寝ていて、起きたらもう暗くても、死にたくなる、何やってたんだ、みたいな感じの生活をしていた時があったんですよね。高校卒業と同時に上京してきて、2年間ぐらいバイトしかすることがなくて、何もしてない日々が積み重なって、どんどん自分が嫌になって、何をやっているのだろう?みたいな時期は確かにありましたね。人のせいにするところとか、すごく傲慢で同棲している男性、津奈木に対して文句をつけたりとかは私から取っているかもしれない(笑)。自分からと人から取っているのが混ざっている気がしますね。
スーパーでパニクる?!
今を生きる若者が抱える心情をとてもリアルに描いている本谷さんの作品。今回、映画化された「生きてるだけで、愛。」の主人公、寧子が葛藤する姿に共感する人も少ないないようです。
- 本谷
- 小説の中で書かれていること、自分が布団で寝ている間に、この明るい中、どうして、自分は、起きて公園に行くことができないんだろう。それがもしできるようになったら、もう素晴らしい世界だし、そのためだったら何でもやるのにみたいに、自分も布団の中で思ったことを今思い出しました(笑)。
- 西田
- やっぱり本谷さんなんだ!(笑)。
- 本谷
- いやいやいや。でもそれをすごく強く思ったことがあって、なんで他の人が何の苦もなく当然に出来ていることが、自分にはできないんだろう、どんどん自己嫌悪みたいなものにはまって抜けられなかった時はありましたね。
- 西田
- 私もみんなが簡単にできることが、なんで自分にはできないんだと感じたことはあります。
- 本谷
- あります?
- 西田
- たくさんあります。それで、夫に八つ当たりすることもあるから。申し訳ないなって思うけど、でも次の日になったら忘れて、お互い流しているけど、やっぱりありますね。
- 本谷
- この小説を読んで、寧子の気持ちがわかったという声がすごく多くて、自分でも意外と言うか、別に共感が好きでもないから、共感されて嬉しいかどうかまた別問題なんだけど、こういう気持ちを抱えてる人が多いのかなぁ。
- 西田
- 何気にやっぱりみんな表に出さないだけで多いと思います。寧子がスーパーに買い物に行くシーンは、ちょっといいところを見せようと思って、頑張っちゃって、すごい健気で可愛くて、だけど、うまくいかないんだよっていうジレンマ、もどかしい感じがたまらなくなって、すごいいいシーンだなと思って。
- 本谷
- 西田さんはないですか?知らないスーパーとかに行った時に食材がどこにあるのか分かんなくて、パニクること。
- 西田
- ある!
- 本谷
- もう限界限界ってなる時。
- 西田
- 私はいつものスーパーに変えます。もう無理と思って、急いで買い物したかったのに、移動していつものスーパーに行く。
- 本谷
- あの時に自分にかかる負荷、糸こんにゃくが探せない、どこにあるのかが分かんない時のパニックとストレス。何が起きているのかわかんないです自分で。
- 西田
- わからない。
- 本谷
- あと5分間、これが続いたらもう限界だと思って、たまにスーパーで本当に泣きたくなるんです。
- 西田
- (笑)。
- 本谷
- ほんとうにストレスで!今はそういう状態になった時にいつものスーパーに行けばいいことを覚えたので、離脱できるんですけど。
- 西田
- 覚えてよかった。
- 本谷
- 若い時はまだ、わかんなくて。
- 西田
- 一生懸命合わせようとがんばってしまうのかもしれないですよね。
- 本谷
- 同時に、こんな買い物もできないのかと自分を責めて、今は、いろんなことがだいぶ出来るようになりました。
映画『生きてるだけで、愛。』は、11月9日より新宿ピカデリー他全国で公開になります。