人生に飽きることがいちばん怖い

野口健さん(アルピニスト)××藤巻亮太さん(ミュージシャン)

2018

10.19

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藤巻さんからのラブコールで出会い、登山や海外旅行を重ね、交流を深めていく、10年来のつきあいになるお二人ですが、近年、野口さんは、東京から、山梨へ拠点を移し、新しいライフスタイルをスタートしています。山梨と言えば、藤巻さんの地元でもあります。

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環境を変えることで見えてくること



藤巻
健さんは、最近、山梨にお家を借りて、

野口
今、事務所は、山梨ですよ。

藤巻
それってすごいですよね

野口
その前までは、永田町、その後、新宿、河口湖。このギャップ!

藤巻
思い切りましたね。

野口
西湖からちょっとあがった5〜10分のところで、明治24年にできた木造の小学校の2階をリフォームして、そこに去年の冬から入っているけど、冬は、寒すぎてやばかったね。寒すぎて。

藤巻
標高が多分1000Mぐらい?

野口
1000M弱くらいかな?

藤巻
まぁ寒いですよね。

野口
寒い。事務所はそれだから、せっかくだから、住むところも探して、見つけたのが、築240〜250年の古民家。古民家と住んだことないんだよね。考えてみると畳のある部屋にもあまり住んだことがない。

藤巻
健さん、小さい頃から中東にいらしたりとかね。

野口
ほとんど中東だったからね、だからこんな顔になっているの!

藤巻
(笑)。

野口
いまどきの日本の家も畳なかったりするよね。マンションでもね。

藤巻
今はないですよね。

野口
なんで山梨かって言うと東京の事務所は、便利、でもずっと自分でやっていて、今もう20年弱。マンネリ化してくるし、飽きるしね、人生で一番怖いのは人生に飽きることでしょう。

藤巻
深いですね。

野口
その時にたまに、がらっと環境を変えるのもいいかなかなと思ってね。定期的に富士山で活動をしているし、根拠はないけど、あと5年間本気でやれば、多分ゴミの問題が解決すると思う。いま、18年目で、最後の追い込みじゃないけど、思い切って富士山麓行くかとか言ってね、最初は、人がずっと住んでいない古民家だったので、12月に引っ越したから、落ち込むくらい寒くて、家の中にテント張ったり、寝ていると顔の上に風がビュービュー、そこから窓を2重にしたりとか、ないもない古民家だったから自分の色を付けていくのはおもしろい。

藤巻
僕、行かしてもらいましたけど、健さんは世界中を旅されているから、そこでいろんなお土産を買ってきていて。

野口
アンティークが好きだったから、ガラクタみたいのが大量にたまっていたんですよ。

藤巻
すごいですよね。アフリカの置物があったり、チベットのものがあったりと・・・

野口
それらをどう演出していくか、この空間がまた違う世界になるかということをいままで使わない脳みそを使ってね、ずっと考えてる。休みの日は東京からすぐに古民家に行くんですよ。

藤巻
癒しの時間が増えましたか?

野口
最初は癒しと言うより、わくわく。何もない古民家に行って、座って、どういう風にしていけばどんな世界が生まれていくかっていうことを、頭の中で絵を描いていくのね。空間デザインじゃないんだけど、それがすごく面白くて。意外とアフリカの古いアンティークが日本の古民家に合うの。

藤巻
合っていますよね。野口健カラーに染まってますよね。

野口
染めすぎたかな。


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ソロになってからの心境の変化


そんな野口さんですが、長い友情関係を続けている藤巻さんの創作活動からも、多くの刺激を受けているようです。

野口
曲を作る時は、詩が先なのか、メロディーなのか、どっちが先なの?

藤巻
僕はメロディーが多いんですけど、メロディは適当に作るんですよ。口を開けながら変に「わにゃわにゃ」言いながら作るんですけど。

野口
知ってる!アフリカとか、あちこち一緒に旅行に行くでしょ、横にテント張って、ボロンとはじまって歌うのかなと思ったら、「♪ボロン、ボロン〜ボロロロン〜」あれがずっと続くよね。あれ横で聞いていて、めっちゃ、ストレスだよね!

藤巻
(笑)。作っているのを聞くのは、ストレスですよね。

野口
やっと出来てきたのかなと思ったら、また「♪ボロン〜」に戻るの。横で聞いていると早く次いってくれよ、みたいな。

藤巻
そりゃ思いますよね(笑)。作曲中は聞くものじゃないですよね。

野口
作曲って孤独だね。

藤巻
ああいうことが好きじゃなきゃ無理ですよね。

野口
そういう意味ではアフリカとかアラスカとかヒマラヤで藤巻亮太さんの「♪ボロン、ボロン〜ボロロロン〜」を聴けるなんてなかなかそうはないよね。

藤巻
すごく大自然の中でね、やっぱり、ギターを弾きながら、作ろうと思ってるわけじゃないんですけど、気持ちがいいもんですよね。最近思うんですけど、音楽とかも最初からこういうものを作ろうとか、こういうテーマで作ろうと思って、作ることはあまりなくて、作りながら気づかしてもらえるようなものがやっぱ一番面白くて。

野口
最初から決めてかかると、想定を作っちゃうんだろうな。枠を作ってしまうでしょ。

藤巻
枠で作ったものは、基本的に過去なんですよね。過去のデータベースにアクセスして、それを焼き増しただけで、クリエイティブではないような気がするんですよね。だからそういうのを打ち破ることが音楽をつくる楽しみだから。自分自身も何がでてくるんだろうという楽しみで、曲を作っている時が一番良くて。

野口
スタジオにこもってひとりでずっと、「♪ボロン〜」と。そりゃ出てきたら走るよね。最近、サッカー少年だもんね。

藤巻
一時期、煮詰まった時期があって、それで健さんに30代で出会って、世界中を旅させてもらったりとか、あとはサッカーチームを作って、フットサルは一人ではできなくて、5対5でやるので、10人いないとできないんですよ。だから友達ができていって、同年代ぐらいのミュージシャンではない友達ができるんですよ。それはすごくありがたくて、やっぱり僕だけではなくて、いろんな人がいろんな分野でいろいろと戦って、いろいろ悩んでいるのを横で見ながら、そういう彼らに共感することを覚えると・・・。

野口
刺激を受けるとね

藤巻
これがまた歌を作るヒントに、特に藤巻亮太とソロになってからはそういうものがすごく曲のテーマになってきましたね。


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