「普通」の生き方
大久保佳代子さん(タレント)×村田沙耶香さん(作家)
2018
09.14
恋愛して結婚するのが人生の宿題
村田さんの小説「コンビニ人間」をオーディオブックなどの音声コンテンツを取り扱うサービス「Audible」で大久保さんが朗読したことがきっかけで、出会ったお二人。
「コンビニ人間」は、恋愛、結婚、就職をしないまま、18年間、ひたすらコンビ二でアルバイトを続ける女性が主人公。そのことを周囲から異端視され、常識や固定概念の中でもがくさまは、「普通」とは何か?ということを問いかけてきます。
文庫版の「コンビニ人間」が、文藝春秋より発売中です。
そして、村田さんの新刊『地球星人』が新潮社より発売中。
「コンビニ人間」は、恋愛、結婚、就職をしないまま、18年間、ひたすらコンビ二でアルバイトを続ける女性が主人公。そのことを周囲から異端視され、常識や固定概念の中でもがくさまは、「普通」とは何か?ということを問いかけてきます。
- 大久保
- 親が普通にちゃんとした人で、会社員とパートで、20代で働いて、ちょっとキャリアウーマンみたいになりたいな、でも30歳ぐらいで結婚して普通に生きたい、生きていくものだと思ってたんですけど、こういう仕事をやった結果、普通にも生きられないなと思ってるうちに47歳になっちゃったから、もう、これは普通じゃない、私の人生。
- 村田
- 私も幼少期、中学生くらいの頃までは、自分は恋愛をして結婚して出産するのが人生の宿題だと思ってたんです。でもそうじゃない生き方があることに本を読んで気がついて、恋愛においても、男の子が喜ぶような清純で可愛くて、特定の人の前ではちょっとやらしくて、という女の子になって、みそめられて結婚をしなくてはいけないと、すごい思っていて、死ぬほど女性でいることがめちゃめちゃ苦しかったんです。でも本当に自由でいいんだって本を読んで思うようになり、それで小説家という職業になったら、うちの親も専業主婦なんですけど、小説家はなんとなく一生独身で、ずっと小説を書いてる職業だっていう激しい思い込みがあって、もううちの子は、結婚とか孫は望めなくなったみたいにすごい諦めが早くて。
- 大久保
- 本当ですね。
- 村田
- それで私自身は言われずにのんびりしてしまいました。
- 大久保
- わかります、のんびりというのは(笑)。何をもって普通っていうのが、わからないけど、さっき村田さんが宿題って言って、結婚して子供を産むって、それに似ていて、私は人間のメスとして生まれてきたら、つがいを作り、出産をする、やるべきことをやらないと人として未熟なまま終わるんじゃないか、もう子供は無理だなと思っていますけど、お母さんになった人の方が、やっぱり生物として子育てをし、家庭を得た人間が人間として優れている状況にいたんじゃないかっていうのは、ちょっと思ったりするんですよ。
- 村田
- そうなんですね。私は尊敬はしています。でもあまり違いを感じていなくて、会って話すとあまり違わない感じがして、今より少し若い頃30代前半くらいの頃、どうしても子供が欲しいって言ってる友達と話す時があって、「なんで?」って聞くと「わからない」って言う答える友達が何人かいて、でもなんかしなきゃいけないような気がするって言って、それが本人の望みなのか、なんとなく世界からそうしなきゃいけないと思わされて言っているだけなのか、私にも分からなくて、子供を産んで育てるって本当にしんどいことだから、それが分からないままにして産んでしまうのはすごく辛いんじゃないかと。
- 大久保
- 適齢期になったら、子供を産むべきだという感覚は持っていたからなぁ。でも確かに子供を産んで育てた人が優秀かと言ったら、本当に人によるわけで、人それぞれなのかなってちょっと思ったりもしつつ、普通って難しいですね。
- 村田
- 難しいですね。でも普通って言葉を使う人は、本当に自分自身にも普通っていうことをものすごく課していて、しんどそうだなって思うときがありますか。小説家の友達とか平然と異常の人がいっぱいいるので、その方が自由と言うか。
- 大久保
- 自由のサイクルで生きている人や自由な発想で生きてる人が普通ではなくて、定時に仕事に行って、定時に家庭に戻る生活が普通なのかって言ったら、それはまた違う気がするし、普通がわからないですね 。
人は見かけによらない
- 大久保
- 私の生活は、傍から見たら普通ではないかもしれないけど、すごい普通だなと思いますけどね。今日朝何時に起きて、何時の電車に乗って、この仕事して、もう一個仕事して、帰ってビール開けて飲もうって、朝思うじゃないですか、それがほぼ100%の確率で叶うんですよ。
- 村田
- そうなんですね。すばらしい。
- 大久保
- そうなの。これ素晴らしいと思いながら物足りないとも思っちゃうんだけどね、もっとハプニングあれよ、わたしの生活って思いながら。
- 村田
- でも小説家も本当に小説を書いているだけなんで、平凡な日々だと思います。
- 大久保
- でも頭の中では、とてつもないことを考えたりするでしょ?口に出して言えないこととか。
- 村田
- だいたいあの私、ちょっとザワザワしてないと、布団があると寝てしまうのです。
- 大久保
- ダメだね(笑)
- 村田
- 家を出て、喫茶店に行かないと仕事ができない。
- 大久保
- ちょっと外部を意識したほうが。
- 村田
- ノートに書いているんですが、隣の人が多分ノートを見たら、「殺人」とか書いてあるので、見た目普通の人が仕事していると思いきや、ノートには「殺人」とかあったら、怖いと思われているんじゃないかなと思います。
- 大久保
- だから、はたから見たらわからないよ(笑)。
- 村田
- そうですね。普通の人もよく話を聞いたりすると異常だったりとか。
- 大久保
- そうなの!うちのお兄ちゃんなんか銀行員で家庭をちゃんと持って、銀行員の奥さんと結婚して、実家の横に家を建てて、すごい、普通じゃないですか?でもすごい性欲が強くて、
- 村田
- えー!
- 大久保
- 未だにセクシー女優さんとかそういう系が大好きで、追っかけをしたりとか。それは異常って言っちゃダメよ。もうストレス発散だからいいんだけど、やっぱりわからないなと思って、人の趣味は。トラブルを起こさなければそれは普通だなと思ってあげないと。
- 村田
- そうですよね、普通の人も趣味とか土日の過ごし方とか聞くと、すごい変わってたりするので、普通におだやかに暮らしていそうな人が恨みノートを何冊も書いてるとか衝撃的なことが。
- 大久保
- そんなの聞くと、わたしのほうが絶対に普通。その人が社会的に何も起こしていないなら、普通におさまっていますよね。
- 村田
- そうですよね。犯罪をおこさなければ、みんな普通じゃないかなと。
- 大久保
- っていう結論(笑)
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