欲張らない働き方
大久保佳代子さん(タレント)×村田沙耶香さん(作家)
2018
09.28
テレビで見かけない日はないくらいの活躍をされている大久保さん。そして、芥川賞を受賞された村田さんの小説「コンビニ人間」は、英語、ドイツ語、フランス語、韓国語など、18ヶ国語で翻訳され、世界的にも注目されています。
文庫版の「コンビニ人間」が、文藝春秋より発売中です。
そして、村田さんの新刊『地球星人』が新潮社より発売中。
好きなことを続ける
- 大久保
- 村田さんは、小説家になりたくて、目指して勝ち取ったという感じですか?
- 村田
- 書くのが本当に好きだったので小学生の頃からなりたかったんですけど、食べていける世界だと思っていなかったので、何かバイトをしながら小説をずっと書いていければいいなと思っていました。
- 大久保
- 小説を書くのをやめようと思ったことはなかったんですか?
- 村田
- 高校生の頃はスランプで書けていなかったんですが、大学生でまた書き始めてからはずっと書いています。
- 大久保
- もう書けない、筆が進まないからやめようとか、しんどいじゃないですか?
- 村田
- やめようと思ったことはないですね。恵まれていると思います。食べていけるかはとりあえず置いておいて、小説は鉛筆とノートがあればどこでも書けるので、好きなことはずっと続けられる。年をとっても続けられることなので。
- 大久保
- なんかすごい素敵。いいな。お金はそこまで気にせずに書いていければいいなっていいですね。私はお笑い大好きな子供で、漫才ブームの中、ビートたけしさんが大好きな子供だった。その分、お笑いは神聖なものだと思っていたので自分がなるなんて恐れ多いと思っていたけど大学生のときに相方に「お笑いサークル入ろうよ」といわれて。私は自分というものがあまりなく、嫌じゃないので「いいよ」と返事をした。大学を卒業するときに「最後記念だから事務所のオーディション行こうよ」っていわれて入り、やめる勇気も別になく、それこそOLで経済的にもまかなって、やっているうちにレギュラーが決まり、だらだらやっていたらこうなっていたので、それこそ私もまわりの人や相方に恵まれて、ひっぱってもらった。でも褒めるとしたら、それに適応できている自分もすごいな。だから私は今まで一切目標も持ってこなかった。持ったところで自分らしくないし叶うと思えないので、そのままです。でも天職かといわれたら天職なのかな。どの仕事だって、絶対嫌なこともあるし、辛いこともあるし、それがなるべく少ない方がいいなと思うと、天職なのかなあ。
- 村田
- そうですね。私はもう小説に関しては仕事なのか趣味なのかいまだにわかってなくて。
- 大久保
- その言葉だけ聞くと、すごく幸せだと思うけど。
- 村田
- 好きなことでたまに小遣いがもらえるというような。
- 村田
- そうですね。もちろんしんどいこともあったりとか、あまりにしんどくて気絶したこともあるんだけど。でも小説家と違うのは相方さんがいるのが憧れです。小説家は、担当の編集さんはいますが、大体移動が激しいので、いなくなってしまうので。
- 大久保
- でも、村田さん相方さんとか向かないと思う。
- 村田
- そうですか?
- 大久保
- 今は一人一人の仕事も多いし、確立しているからだけど、やっぱり、コンビを組んでる人達は、ふたりでひとつの人生を歩んでいるに近いから、うまくいってる時はお互い私もすごいけど、あなたもすごいねって認められるけど、うまくいっていない時は、どちらかって言ったらあんたが悪いんじゃないのってなりがちなので、コンビは、なかなか難しいんですよ。
- 村田
- そうなんですね。
- 大久保
- 村田さんは、マイペースっぽいから。
- 村田
- なんかかなりマイペースだと思います
- 大久保
- 人に何か言われたり、こうしてとか嫌だと思うんだけど。
- 村田
- ああしてとかこうしてとか言われても、すごく素直に聞こうと思うんですけれど、いつのまにか全然違うことをやってることがあって。
- 大久保
- それ言ったほうからすると腹たつよね(笑)。
ひとりで楽しむ時間
- 大久保
- 休日はあるんですか?
- 村田
- 一応、土日休みと決めていて、お休みの日は、友達と過ごすか、もしくは一人の時は喫茶店巡りをしています。
- 大久保
- 喫茶店をはしごするんですか?
- 村田
- 仕事する時もお休みの日も喫茶店をはしごしてます。
- 大久保
- 喫茶店に入って、その時間はどうやって過ごすんですか?
- 村田
- いつもメモ帳を持ち歩いているので、今書いてる小説とは全く関係ないことをメモしたりするのが好き。元からいろんな設定を考えるのが好きです。
- 大久保
- お休みのようでやっぱり小説には関わっているから、本当のお休みではないけど、それが苦じゃないなら。
- 村田
- 楽しいですかね。やっぱり、友達と過ごすというのが一番多いかもしれないです。小説家の友達と「なんとかの会」というのをいくつかやっていて「日本酒の会」とか、「紅茶の会」とか、この前やったのは「着ない服愛好会」。クローゼットの中にあるけど、買ったけど、派手すぎるとかの理由で着ない服を着てみんなで集まるという会です。
- 大久保
- 日の目をみさせてあげて。
- 村田
- 「大丈夫だよ。似合っているよ。着なよ!」みたいなことを言い合う会です。すごくよかったです。
- 大久保
- おもしろい会をしていますね。確かにタンスにあるなぁ。
- 村田
- 派手すぎるとか。
- 大久保
- 確かにありますね。
- 村田
- おすすめですね。
- 大久保
- 一人で外に着て出る勇気はないけど、そういう目的があって集まればね。けっこう有意義に過ごしていますね。私なんてすごいも、趣味がないんですよ。翌日休みだと思ったら前日、大体飲むんですよ。それこそ仕事仲間、いとうあさこちゃんとか女芸人の子と飲んで、昼過ぎに起きて。でも、ワンちゃんを飼ったら生活がガラッと変わって、朝5時半ぐらいに、5キロぐらいのが、みぞおちにジャンプしてくるんですよ。散歩に行きたいから一回外に連れていって、ウンチさせて、戻ってきて二度寝するでしょう、二度寝してテレビを見ている間に、2、3時ぐらいになって。最近ね、恥ずかしいけど、犬を連れて、散歩という体で、ワンちゃんのちっちゃいカバンに、おしゃれな水筒に焼酎とソーダ入れて、おじさんが一人ぐらいしかいないような公園に行って、犬をリードで遊ばせながら麦焼酎飲む。これすごいいい時間。ほろ酔いになってきて、うちの愛犬パコ美は、帰りたがるんだけど、それも無視して、お日様も風も気持ちよくて、ただただ時間が過ぎていく。向こうで一人で座っているお爺さんを見て、定年したのかな?とか色々考えながら、お酒飲むと泣けてくるんで、ちょっと涙ぐんだりして、帰ってくるっていう休日ですね。
- 村田
- でも素敵ですね。
- 大久保
- 素敵ですか?冷静に考えてください。これ素敵ですか?人生でいったらなんの前進もない。誰かに連絡して「今日空いてる?」とか「今日夜ご飯どう?」とかが面倒くさくなっちゃって、だったら別に一人でだいたいほろ酔いになっちゃえば、同じぐらいの楽しさは持っていけるなって最近思って。
- 村田
- しかも、外が気持ちよくていいですね。
- 大久保
- 外はいいですよ。お日様浴びてくださいね。
- 村田
- お日様浴びます。
文庫版の「コンビニ人間」が、文藝春秋より発売中です。
そして、村田さんの新刊『地球星人』が新潮社より発売中。