新世代のクリエイターが思う今の”日本”
コムアイさん(水曜日のカンパネラ)×ひらのりょうさん(アニメーション作家)
2018
07.20
水曜日のカンパネラは、先月、新しいEP『ガラパゴス』をリリース。パッケージデザインもユニークで、一時期流行したCDのカラーケースの真ん中にコムアイさんが映ったプリクラが貼ってあるという仕様。この配信の時代に、思わず手にとってしまいたくなるインパクトあるジャケットになっています。
映画「猫は抱くもの」は、現在、新宿ピカデリー他、全国ロードショー中です。
いまの日本の姿を表すメタファーとしての「ガラパゴス」
- コムアイ
- 「ガラパゴス」というEPを出しまして。
- ひらの
- すばらしい、聞かせていただいて、気持ち良かったですね。
- コムアイ
- ありがとうございます。実はこれ、アートワーク全部を未彩さんにやっていただいて。
- ひらの
- 河野 未彩さん。
- コムアイ
- お互いの新作を同じ人がやっているという状態なんですね。
- ひらの
- 僕の「ファンタスティックワールド」という漫画の単行本の装丁デザインも河野 未彩さんです。
- コムアイ
- ね。
- ひらの
- 一緒。
- コムアイ
- 未彩さんとやるのは初めてなんですけど、意気投合して、2、3回打ち合わせしたぐらいで、すごいスムーズでした。1回目で全部決まったぐらいでした。分かりやすかった。
- ひらの
- 未彩さんのすごさを話すと、僕の「ファンタスティックワールド」という単行本は、分厚い本なんですけど、漫画全体が地球にみたいに全部繋がっているようなデザインになっているんです。
- コムアイ
- なるほどね、これ自体地球だったんですね。
- ひらの
- 地球の中が舞台になっているので、その中に入っていくというアイディアをいきなり持ってきてくださったのが未彩さんで、
- コムアイ
- やばい。今回の「ガラパゴス」のジェケットは、ピンクの透明なんです。 未彩さんがやるのはグラフィックデザインというより、素材選びとかを一緒にやっていただくことがすごい多くて、印刷面自体は少ないんですよ、でもピンクの透けてて真ん中にCGがあって、その真ん中に初期のプリクラが1枚貼ってあって、そこがジャケにしようと思ったの。
- ひらの
- そういうことなんですね。あの感じ、「ガラパゴス」というタイトル通り”ザ日本”という。
- コムアイ
- そうですね。しかもそれ「ガラパゴス」というタイトルの前じゃないかな。未彩さんがいろいろ考えてくれて、写真を撮る時もディレクションしてもらって、それもたまたま狙いでした。ちょっと懐かしい感じのテイストになったのはたまたま。
- ひらの
- それとタイトルがあったのも。
- コムアイ
- たまたま。
- ひらの
- そういう偶然の物語が生まれるのってけっこうありますよね。
- コムアイ
- そう。
- ひらの
- このタイトルはどういう風に決めたんですか?
- コムアイ
- それも急で「ガラパゴス」にしようと思いますとか言って、
- ひらの
- 急だなー。
- コムアイ
- その前に降り立った言葉が、「この国は好きじゃないけど、この島は好き」みたいなことだったんですよね。
- ひらの
- なるほどね。
- コムアイ
- そういうことをタイトルにしたいけど何かもっと一言でないかな、それちょっとネガティブな部分も入っているから、そのまま使うのは嫌だから、どうしようかなと思って。四季があるとか、島としていろんな文化が発達して、文化圏としては大好きなこのエリアなんだけど、その国とかシステムとかが好きじゃないムードとか、なんか重力みたいなものも感じるから、どっちもガラパゴスだったら言えるなと思って、ガラパゴスにしました。
- ひらの
- それすごく腑に落ちるな。
両極端の文化を持つ日本
- コムアイ
- 日本で育った文化は、マキシマムとミニマムを繰り返す波の度合いが両方すごいと思います。それは秋葉原でも一緒だし、渋谷の街並みでも景色でもそうだし、お茶の文化は、すごいミニマムじゃないですか、これひとつしかなくてごめんなさいみたいな。
- ひらの
- 茶室もすごくコンパクトで。
- コムアイ
- そうそう、小さくてシンプルで何もなくてみたいな。なるべく、何もないですっていうのがかっこいい。でも、前はなんか凄かったんですって、もうとにかくバッキバキみたいな(笑)。
- ひらの
- 奈良の大仏さんとかお寺もすごかったってね。ギンギラで、びっかびかに光っていた。
- コムアイ
- イエーイ!みたいな(笑)。お金の匂いぷんぷんみたいなお茶会が流行っていたらしいんですよ。どれだけ、いい着物を着てくるかとか、どれだけ遠くから輸入した茶碗使ってるかとか・・・。
- ひらの
- めちゃくちゃ派手ですね。
- コムアイ
- マキシマムにいって、ちょっと疲れて、それで出てきた、シンプルがたまたまはまって今ずっと続いてるみたいなんですけど。
- ひらの
- カウンターカルチャーが一気に盛り上がっていく感覚。
- コムアイ
- それが西洋だともうちょっとバランスがいいかなと思うんですよ。どっちにも行き過ぎない気がするんですよ。
- ひらの
- どっちもやりすぎちゃう。
- コムアイ
- そう、どっちもやりすぎちゃうのが東京とか日本の好きなところかなと思います。
- ひらの
- それすごいいいですね。はっとしました。
- コムアイ
- それって自分の中にもないですか?何か作るときとかにマキシマムにしがちとか?
- ひらの
- 色を使ってしまいますね。蛍光色とか好きだけど、アニメーションになってくると、小さい動きとかをかっこよくみせる良さみたいなのがあるから。
- コムアイ
- そうそう。両方自分の欲にも感じることがあります。色味のバランスとかも。自分だとそれが行きすぎちゃう、あの色もこの色も全部入れちゃえ!みたいな。
- ひらの
- それはカラーで漫画を書いているので、すごくあります。使えるインキ全部使っちゃえーみたいな感じ。それはだんだんわかってきて、ちょっと落ち着いた色にしたほうがいいのかなみたいな。
- コムアイ
- やっているとだんだんわかってくるんですか?
- ひらの
- だんだん、勉強になってくるというか、特にヨーロッパとかだと、街並みがすごく昔からあって変わらないじゃないですか、日本は、地震があって、建物も長く残らないから、飛行機から見ると不思議な、それはそれでかっこいいという感覚もあったりとか。
- コムアイ
- 小学生の頃からとんでもないところに生まれちゃったなと思っていて。
- ひらの
- マジですか?
- コムアイ
- わたしが育ったのが田園都市線なんですよ、田んぼとか畑がなかったので、憧れて、高校生になってから、地方の村とかにお邪魔して、農作業させてもらうのが幸せみたいな、ちょっと嫌な感じの(笑)。
- ひらの
- それはすごい。
- コムアイ
- おじいちゃんやおばあちゃんが誰も畑をやっていなくて、みんな都会に住んでいる人たちだったから。
- ひらの
- うちの近く、春日部は、何もないし、田んぼしかないし。
- コムアイ
- でも田んぼって情報量がすごい多いじゃないですか?
- ひらの
- 実はね。
- コムアイ
- 生き物めちゃくちゃいるし。それは、ひらのさんと関係していますよね。
- ひらの
- ありますね。一回、東京に行って、高校生の時にニュージーランドに留学させてもらったんです、そこですごい「ロードオブザリング」の世界、バッキバキのファンタジー世界に行って、綺麗な海とか見て、多種多様の人種の人達と交流して、帰ってきたら田んぼの米の匂いがめちゃくちゃするっていうことに気づいて。
- コムアイ
- そうなんだ。
- ひらの
- この匂いは、ここにしかない感覚があって。
- コムアイ
- おもしろい。田んぼって米の匂いするんだ。
- ひらの
- すごいですよ。夏はもう米臭い、腹減りますよ。
- コムアイ
- マジで!
映画「猫は抱くもの」は、現在、新宿ピカデリー他、全国ロードショー中です。