年齢を超えた関係
野村訓市さん(エディター、ライター)×村上虹郎(俳優)
2018
05.25
世界中を旅して、カルチャー、建築、音楽、ファッションなどに関する記事を発信。また、空間プロデュースなど多岐にわたる活動をされている野村さん。一方、村上さんは、第67回カンヌ国際映画祭・コンペティション部門出品作品『2つ目の窓』で俳優デビュー。その後、映画『武曲 MUKOKU』の演技で、日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞するなど、今もっとも注目を集める若手俳優のひとりです。
今回、おふたりが、携わっているのが、ウェス・アンダーソン監督最新作「犬ヶ島」です。ベルリン国際映画祭で、銀熊賞監督賞を受賞したこの作品は、日本を舞台に、失踪した愛犬を探す少年と犬たちの壮大な旅と冒険を描く全編ストップモーションアニメーション。日本人ボイスキャストとしてRADWIMPSの野田洋次郎さんや夏木マリさん、渡辺謙さん、そして、今日のキュレーターズである、村上虹郎さんが参加。さらに彼らをキャスティングし、自らもキーマン役の声を務めたのが、野村さんです。
映画『犬ヶ島』は、全国ロードショー中です。
出会って4年
- 野村
- うっす。
- 村上
- どうもどうも。
- 野村
- ふたりが最初に会ったのは、青山のカフェでみたいな嘘を言ってもしょうがないけど
- 村上
- 笑。
- 野村
- 最初いつだったっけね?
- 村上
- 俺の記憶にあるのは訓ちゃんの事務所に行った時かな。
- 野村
- お母さんと?
- 村上
- そうだと思う。連れて行かれて。
- 野村
- 何年前かな?
- 村上
- 4年くらいかな。
- 野村
- 4年でこっちはちょっとずつ、小ちゃくなっていくんだけど、虹はどんどん大人になっていって同じ4年間とは思えないというか、象の時間とアリの時間くらい違うんじゃないか。もうこっちは大きくなることはないから、ウエストは出てくるかもしれないけど。だいぶ大人っぽくなったもんね。
- 村上
- そう?最初に会った時は、17歳だったからね。
- 野村
- 今は?
- 村上
- 21歳かな?
- 野村
- 21だもんね。擦れたところがなくて元気なのがいいなと思っているんだけど、自分的には落ち着いたとか思っている?
- 村上
- どうだろう。生まれは東京だけど、神奈川や沖縄、カナダに行ったりしてて、訓ちゃんもそうだけど、俺はもうちょっと若い時に東京にいなかったから、わりと田舎と都会の半々みたいな人間形成をしてきていて、東京にちゃんと来たのが17歳だから、やっと東京に慣れたというか、ワクワク感がいい意味でなくなったかな。もちろん知らない街もたくさんあるけど、
- 野村
- でもきっと会った時にワクワクしている感じが目とかからもバリバリ出ているのが、虹の魅力というか、おもしろい子だと思ったきっかけなのかな。
ウェス・アンダーソンの素顔
今回、おふたりが、携わっているのが、ウェス・アンダーソン監督最新作「犬ヶ島」です。ベルリン国際映画祭で、銀熊賞監督賞を受賞したこの作品は、日本を舞台に、失踪した愛犬を探す少年と犬たちの壮大な旅と冒険を描く全編ストップモーションアニメーション。日本人ボイスキャストとしてRADWIMPSの野田洋次郎さんや夏木マリさん、渡辺謙さん、そして、今日のキュレーターズである、村上虹郎さんが参加。さらに彼らをキャスティングし、自らもキーマン役の声を務めたのが、野村さんです。
- 野村
- ウェスから日本で映画を作ることになったから手伝ってくれという話から始まって、手伝うというのは便利な言葉で、いろんな意味があると思うんだけど、今回の場合は、「ちょっとこのカバンを持つのを手伝って」ではなくて、気づいてみたら「引っ越しの梱包から棚に物を置くまで手伝え」くらいの手伝いだったんですけど、自分がキャスティングをすることになって、10代の役で虹が一番最初に頭に浮かんだ。声の質とか、もちろんみんなも知っているし、ウェスにすぐに言って、声を録らしてもらって送ったら、ウェスも虹の声をすごく気に入って一発で役が決まった。でも、最初は、何をやっているのかわからなかったでしょ?
- 村上
- 台本もらえなかったからね、何やっているのかわからないよね。
- 野村
- 秘密主義だし。こっちも説明したいけど、言えないもどかしさもあるんだけど、でも虹だけじゃないから、これ、ハリウッドの人たちも同じ。
- 村上
- アニメーションでない時もそうなの?
- 野村
- 「グランドブタペストホテル」の撮影に行って、撮影初日からいたんだけど、最初の3日間しかいなかった人はたしかその後の話を知らないと思う。
- 村上
- 笑。台本はあるんでしょ?
- 野村
- ある、でも見せないというか、言い方悪いけど、将棋の駒みたいなもので、監督だけが将棋盤が見えていて、どこに虹郎を置いて、攻めていこうかというのがわかっているんだけど、僕らは盤の上にいて全体を見せてもらえないからわからないわけ。でも完成した時に、「はい、これでした!」と言われて「あー俺はここにいたんだ」っていう。
- 村上
- 感動度は高いよね?
- 野村
- 高い人もいるし、こんなに小さいのかと思う人ももしかしたらいるかもしれない
- 村上
- 笑。
- 野村
- ただ例え、自分が小さなピースだったとしても、あのビジュアルの中の自分がここにいるんだっていう喜びはある。あの映画を見てウェスは、どんな人だと思う?
- 村上
- すごい変わりもので、めちゃくちゃ几帳面だと思うし、それは訓ちゃんから少し話きいているのもあるけど、イメージで言うと、「ダージリン急行」とかメイキング見ているからどんな現場でも白いセットアップを着て、いつも同じブランドのスーツを着ている感じ。
- 野村
- たぶん国によって違うんだけど、同じニューヨークのテーラーで計測していて、生地変えで毎回、オーダーするわけよ。冬はコーデュロイでとか、ただコーデュロイの幅は、5mmとかすごい細かいの。あとシアサッカーで5色作ってくれとか、シャツはフランスの「シャルべ」っていう有名なシャツメーカーがあるんだけど、そこで、毎回ダース買いをするわけ。新しい生地で、で全部、W.Aのイニシャルが入っている。
- 村上
- W.Aって入っているの?
- 野村
- 几帳面な人だけど、どこか抜けているというか、穴があいているのが気づかないとか、無頓着なところがある。そのアンバランスなところが全て、自分が好きな映画に向かっていて、だから夢中になると、すごく几帳面で、もしかしたらいわいる神経質というか整頓しないとダメな人なのにそういう人が無頓着になってしまうくらい入り込んでしまうから。
- 村上
- 怒っている時、見たことある?
- 野村
- 声をあらげてというか熱弁しているところは見たことあるけど、「僕はこうしたいんだ!」みたいな。ただそれは自分がそうしたいことを伝えたいから、あらげているわけではなくて10何年知っているけど、怒ったところは見たことないかな。俺がいつもくだらないことを言っていたり、酔っ払っているのもあるかもしれないけど、でも、無駄なことをするよりも物を作るほうにかけちゃう人かな。
映画『犬ヶ島』は、全国ロードショー中です。