コミュ二ケーション能力の高め方
山崎直子さん(宇宙飛行士)×ふかわりょうさん(タレント)
2018
04.20
2010年、スペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗し、日本人2人目の女性宇宙飛行士として任務を果たされた山崎直子さん。物資移送責任者としての物資移送作業全体の取りまとめ、国際宇宙ステーションや、スペースシャトルのロボットアームの操作などを担当されました。
山崎さんが搭乗した「ディスカバリー号」のクルーは全部で7名。閉鎖的な空間で様々な国籍のクルーとずっと一緒の時間を過ごします。一方、MCとして、人々をまとめる力が必要とされる、ふかわさん。多様性が求められる今、おふたりは、「コミュニケーション」というものをどのように捉えているのでしょうか。
宇宙に行けるとしたら
- 山崎
- わたしは宇宙に行った時に、はずかしながら子供の時にやっていたお琴を演奏しました。ミニチュア版なんですが、野口 聡一さんも一緒だったので、野口さんが横笛を弾いて、わたしが琴を弾いて一緒に「さくらさくら」を合奏したんですね。あとは、俳句を作りまして、みなさんも俳句を応募してくれたりしたんですけど、ふかわさんが宇宙に行かれたらどんなことしてみたいですか?
- ふかわりょう
- 音ってどのように耳に入ってくるのですか?
- 山崎
- 宇宙船の中は普通に1気圧の空気があるので、音は一緒です。普通に会話もできるし、音も通じます。ただ宇宙空間に出ると、空気がないので静かな、無音の世界のはずなんです。
- ふかわりょう
- 空気がないから振動しない。
- 山崎
- 振動すらもないですね。
- ふかわりょう
- 無重力状態のところで、ふわふわしているイメージがあるじゃないですか。ああいう感じで音がふわふわしているのをキャッチしたいですね(笑)。それは科学的には無理ですよね?
- 山崎
- そうですね。でも不思議だったのは宇宙空間には空気がないので音がなければ匂いもない、と思っていたんです。でも船外活動した人たちが宇宙船の中に戻ってくると、その宇宙服からなんとも言えない匂いがしてくるんですね。
- ふかわりょう
- え?
- 山崎
- 船長さんいわく、これが、”smell of space”宇宙の匂いだとしか言えないんですけど、ちょっとどことなく、甘酸っぱいようなちょっとこげたような匂いで、NASAの人とかと話していると、宇宙空間はまったく何もないわけではなくて多少、ちょっと分子もあって有機物もあって、ギ酸エチルというものが、こうした甘酸っぱい匂いをしているとか、あと若干、原子量酸素とかもあるんですけど、それが焦げ臭い匂いをしているとか、それが宇宙服についてくるので、若干、匂いが伝わってくるんじゃないかと。
- ふかわりょう
- 素朴な質問になってしまうんですけど、シャボン玉を船外に出したらどうなりますか?
- 山崎
- どうなりますかね。これまだ誰もやったことないですね。空気がどんどん膨らんで風船みたいにボン!と破裂してしまうのが先か、あるいわ、一瞬でミイラみたいに乾燥して縮こまってしまうのが先か、どっちが先でしょうね。
- ふかわりょう
- それをもしわたしが宇宙に行ったら、やってみます。
- 山崎
- 実験第一号で!
- ふかわりょう
- はい。
培ってきたコミュニケーション力
山崎さんが搭乗した「ディスカバリー号」のクルーは全部で7名。閉鎖的な空間で様々な国籍のクルーとずっと一緒の時間を過ごします。一方、MCとして、人々をまとめる力が必要とされる、ふかわさん。多様性が求められる今、おふたりは、「コミュニケーション」というものをどのように捉えているのでしょうか。
- ふかわりょう
- 山崎さん、国境を越えて、いろんな方と接していますよね?壁を感じたりすることもあると思うんですけど、どうですか?
- 山崎
- 宇宙船の中は狭い空間で、いろいろな国の人、文化も言葉も違う人が一緒に寝泊まりするので、決してスマートな部分だけではないですよね。どっちかというと、人間臭いというか、汗臭い、泥臭いというか、そういったところが欠かせなくて、それがあるからこそやっぱり一緒に生活できるんだなぁという気がします。最初はお互い様子見でぎこちないところもあるんですけど、宇宙に行く前に1年ちょっとかけて一緒に訓練するんです。もちろん一緒にごはんを食べたり、一緒にどこか出かけたり、何かしながらこの人はこういうことが嫌なんだなぁ、こういうことは好きなんだなぁとかそういうのをお互いわかってくると信頼関係の土台ができてきてその上で話していくと例え意見が違ってもそれぞれの意見で捉えられる。よく言われていたのは異文化の人が一緒に会う時は、人と言動は切り分ける。あなたのことは大好きだけど、この言動だけはちょっと直して欲しいなとか、あなたのことを信頼しているからこの訓練のここだけはもうちょっと一緒に改善していこうとかそこは切り分けていこうねということはよく言われていました。
- ふかわりょう
- たしかに大事なことですね。言葉って自分が頭の中で浮かんだことと、口から出たことが必ずしも一致しない時もあるじゃないですか。それが誤解を生んだり、うまく伝わらなくてやりきれない時とかあると思うんですけど、たしかに受け手は、人間と言動を切り離すというのはすごく、今の時代、大事な気がしますね。
- 山崎
- ふかわさんも今、MCなどされていて、いろんな方と接していますけど、いかがですか?心がけていることとか?
- ふかわりょう
- わたしはみなさんを楽器と捉えているので。
- 山崎
- けっこうみなさん個性がある方多いですもんね、
- ふかわりょう
- いろんな楽器でアンサンブルをお茶の間に届けたいなという思いでいるんですけど。ポルトガルに行った時に公用語がポルトガル語なのでどうしようと思ったんですけど、ポルトガルのみなさんはすごく気さくで笑顔のたえない人たちなんですね。ポルトガルを旅して道を聞く時とかお店に入った時にもちろん挨拶は言えるんですけど、そこで感じたのは笑顔だけで十分なんだと思ったんですね。ふだん、すごく言葉に頼って日常生活を送っているけど、根本は笑顔だけでいけてしまうんだなというのをポルトガルに行った時に感じて、もちろん旅行だからというのもあるかもしれないですけど笑顔がコミュニケーションの根本にある気がしたんですよ。そういうのって大事だなと思って
- 山崎
- 気持ちが表れますもんね。
- ふかわりょう
- 普段、油断すると気難しい顔をしてしまうので、笑顔でいたほうがコミュニケーションがとれて、いろんな人と繋がれるんだなぁっていう笑顔こそがログインパスワードだと思うんですよ。
- 山崎
- おー。はい。
- ふかわりょう
- また厄介なこと言いだしたと思っていません?(笑)。
- 山崎
- (笑)。
- ふかわりょう
- 同じことを言うのに、笑顔で届けるのと、しかめっ面で届けるのと全然違うじゃないですか。
- 山崎
- 違いますよね。
- ふかわりょう
- 笑顔で届けないといけないなと。
- 山崎
- 宇宙に行くと、無重力なのでみんなプカプカ浮くんですよね。話す時も真正面で話すだけではなくて、例えば、誰かが逆さま、宙ぶらりんになっていて向かい合って話す、180度逆さまで話していても普通なんです。こうやって話している時に思い浮かべる顔は真正面の顔だけではなくて逆さまや斜めの顔、横の顔なので、だから、しかめっ面で怖そうな宇宙飛行士もいるんですけど、逆さにするとちょっとかわいかったりして。
- ふかわりょう
- それはおもしろいですね。
- 山崎
- また別の方向からみると、おもしろいなというのを思い出しました。
- ふかわりょう
- 経験しないと気づかないですよね。ものすごい怖い顔の人も逆さになってみると
- 山崎
- 愛嬌があったり
- ふかわりょう
- ユニークに感じるんでしょうね。見方を変えるというか、角度を変えるのは大事ですね。
- 山崎
- そうですね。