イギリス料理はおいしい!
林望さん(作家・国文学者)×阿川佐和子さん(作家・エッセイスト)
2018
03.11
リンボウ先生の愛称で知られ、小説のほか、古典文学作品の現代語訳も手がける林さん。イギリスの食文化を綴ったエッセイ「イギリスはおいしい」は、ベストセラーになりました。一方、TVや週刊誌で多くの方の本音を聞き出してこられた阿川さん。インタビュアーとしての心得を書いた「聞く力―心をひらく35のヒント」も大ヒットしました。
阿川佐和子さんと脚本家の大石静さんとの共著「オンナの奥義 無敵のオバサンになるための33の扉」は、文藝春秋から発売されています。
数多くの歌曲の作詞も手がけているリンボウ先生。3月31日に、小金井宮地楽器ホールでは、『演劇的組歌曲 悲歌集(ヒカシュウ)の再演』と題するコンサートが開催されます。
念願の初対面
- 林
- はじめまして。おはようございます。
- 阿川
- おはようございます。はじめましてという感じがないんですけどね。
- 林
- 今日は、ダメ元で阿川さんとの対談をお願いしたら、OKをいただいて。
- 阿川
- ありがとうございます。リンボウ先生は「イギリスはおいしい」で世の中に有名になったところが大きかったから失礼ながらイギリスに詳しい名エッセイストでイングリッシュジェントルマンというイメージがあったんですけど、本当は古典の学者さんなんですよね。
- 林
- その誤解は、そこら中にはびこっていて、もともとは国文学者ですからね、たまたま勤め先の学校が1年、外国に行っていいよと言ったので、国文学者だから外国に行ってもと思ったんだけど、
- 阿川
- イギリスはみんながお料理がおいしくないと思っていましたよね。
- 林
- 今もまずいですよ。
- 阿川
- まずいんですか!
- 林
- 観光客が接するイギリス料理は、まずくて、家庭料理はおいしいです。
- 阿川
- イギリスに行った時に、中華料理とインド料理に連れていってもらったんです。そしたら本当においしかったので、「なんだ!イギリスは美味しいじゃない」と言ったら「イギリス人は自分たちの舌に加工しようという気がないから、現場の味が残るの」と言われて「なるほど」と思った。日本は日本人に向いたものに変えていく能力が長けていますよね。カレーライスやあんぱんもそう。イギリス人は頭からそういう気がないから、ほんとうに本場の味が残る。
- 林
- 中国にしてもインドにしても植民地ですからね。植民地から人が来て、それぞれの国の料理を作るので、イギリスの中華料理はおいしいですよね。
- 阿川
- おいしい。感動しました。
- 林
- 日本もおいしいですけどね、日本は洗練されてしまって。
- 阿川
- インパクトに欠けていたり。
- 林
- サンラータンは辛くて口が曲がってしまいそう!
- 阿川
- 麻婆豆腐もイギリスは本格的ですよね。
- 林
- ぼくはお知り合いの方が中華料理とインド料理に連れていった気持ちがすごくよくわかりますよ。
- 阿川
- 間違ってはいなかった?
- 林
- 間違ってはいない。
人に興味を持つ
- 林
- テレビで阿川さんを拝見すると、聞き上手、座談の名手という感じがするんですよね。
- 阿川
- どこが?褒めて!褒めて!(笑)
- 林
- お世辞でなくて。ぼくは、人と対談するのは苦手なんです。
- 阿川
- わたしだって苦手ですよ!
- 林
- いやいやそんなわけない。本当に上手にお聞きになるなぁと。相手が嫌な気持ちにならないでついついいい気持ちでしゃべってしまうような、そういうオーラーが阿川さんにはありますよね。
- 阿川
- もし自分でエクスキューズするならば、ものを知らないんですよ。父に「こいつはバカだ!バカだ!」と言われ続け、兄も優秀だったし、阿川家では劣等生だったから仕事をはじめても大丈夫なの?と言われるような状況ですれすれのところで仕事をしていたので、それがバレるのが怖いというのもありながら、背伸びしたところでも相手にはすぐにわかってしまうので。だから、わたしが対談やインタビューをする時には、無理に背伸びをしても底が知れてることがわかるから、むしろ、その人に興味を持って、知らないんだけど、興味はあります、という接し方をしたほうがいいんじゃないかとある時に思ったんですね。
阿川佐和子さんと脚本家の大石静さんとの共著「オンナの奥義 無敵のオバサンになるための33の扉」は、文藝春秋から発売されています。
数多くの歌曲の作詞も手がけているリンボウ先生。3月31日に、小金井宮地楽器ホールでは、『演劇的組歌曲 悲歌集(ヒカシュウ)の再演』と題するコンサートが開催されます。