映画と音楽の関係

諏訪 敦彦さん(映画監督)×世武裕子/sébuhirokoさん(映画音楽作曲家、シンガー・ソングライター)

2018

01.28

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多くの映画には、音楽の存在が欠かせませんが、実際に創作する方たちは、映画と音楽の関係をどのように感じているのでしょうか?

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依存関係にはなりたくない


世界的評価の高い諏訪監督。近年では、フランスで撮影した作品を発表しています。一方、世武さんはフランス・パリにある音楽院で映画音楽を学んだ経験を持ちます。

諏訪
世武さんは、いろんなタイプの映画監督をご存知だと思いますが、僕の場合は自分が計算して作り上げる世界にあまり関心がないんですよね。基本、人まかせ。撮影は撮影監督に任せる、音楽は音楽の人に任せる。今回、実は音楽を世武さんにお願いしようと思ったけど、フランスのシステムの問題で物理的な条件が整わずで、僕以外の人が、日本人だと外国映画になってしまうフランスのルールがあって。

世武
フランスは映画を作ることにお金を出してくれる国なので、そういうところありますね。

諏訪
日本人がスタッフに入れないので、どうしても実現できなかったんですけど、実現していたらお任せですね。

世武
最高ですね。そんなことなかなかないんで。

諏訪
僕ね、映画を作って編集している時に音楽のことを考えていないんですよね。音楽を想定してこういう編集にしようと考える余裕がなく、撮ったもので作り上げてしまうのでほぼ音楽の隙間がない状態で編集してしまうんですね。

『M/OTHER』を撮った時も、ぼぼ編集で作り上げて隙間がない。これを鈴木治行さんという現代音楽の作曲家の方に「音楽入りますか?」と聞いたら「なくてもいいけど、入れる可能性もある」と言われ、「じゃやってください」と投げて、音楽をつけてくれて。僕は音楽は、映画にとってとても大きいから、依存関係にはなりたくないというのがありますね。こっちはこっちで音楽に依存しないで独り立ちできるようにがんばるんです。独り立ちさせて、かつ音楽がそこにあるのであれば、それはいい関係になるんじゃないかと。依存すると心地いいけど、そうしたくないのがどっかにあったと思うんですね。でも最近は少し依存してもいいのかという気もしないでもないですけど。
世武
どういう依存かにもよるんですけど、「音楽でなんとかしてください」となっている時は映画音楽作曲家にとって、それはバレるというか、例えば、「ここで泣かしたいからもう少し盛ってほしい」とか簡単なんです、どうやったら人が泣くかなんて、ほとんどの作曲家はわかっているんです。それをやるのは簡単だけど、やり続けてどうなるの?というジレンマと戦うことになるんです。わたしは商業映画も否定していないので全然いいんですけど、そうでないところで映画ファンとしては、キラキラしたようなものがある映画であって欲しいというのはあって。結局、毎年、ベスト映画をあげているのはだいたい音楽も入っていないんですよ。わたしは映画音楽をやりたいけど、それ以前に映画というものを好きだから。


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映画音楽にかける思い


これまで、『ストロボエッジ』や『お父さんと伊藤さん』など数々の映画音楽を手掛けたてきた世武さん。監督たちからのオファーも絶えず、すでに今年だけでも公開待機作として、大人気コミックの映画化『プリンシパル』や本屋大賞を受賞した宮下奈都さんによる小説の実写映画化 『羊と鋼の森』があります。そして、2月には、話題作『リバーズ・エッジ』の公開を控えています。

諏訪
世武さんの音楽は、ひとりで立っているという感じがしますね。

世武
映画音楽をやっている時も映画と音楽と対等でありたいと思っているんですけど。アンサンブルだけど、対等でそれが同時進行にいるみたいなことであってほしいと思っています。

諏訪
僕が映画をやっているのはそれだけですね。自分の世界を実現したいのではなくて、いろんな世界を持った人たちがいる、それを表現できる場だから映画をやるんです。ところで、世武さんの最新のお仕事は?

世武
2月16日公開で岡崎京子さん原作、行定 勲監督の「リバーズ・エッジ」の音楽を担当しました。かなり攻めている作品です。

諏訪
行定さんとはどうでした?

世武
行定さんは、『ピンクとグレー』がおもしろくて、その前から有名な作品があるので知っていましたけど一緒に仕事できたらいいなみたいなことを言っていたら、「トライアルしてみますか?」となり、それを気に入ってくださって、「この映画には第3の亡霊がいる気がしていたけどそれは音楽だった」みたいなことを言ってくれて。行定さんはエンドレスに細かいんですけど、「この時間の中でやってます」みたいな人ではないから、それは好きです。

諏訪
わりと自由に?

世武
一応付けどころもあったんですけど、監督が付けていたのと関係ないのを付けたので。

諏訪
最初に行定さんのほうからアイディアがあったんだ?

世武
自分がイメージしているものを付けていたんですけど、それを聞いて、それだと80年代くらいのフランス映画っぽい、よくある感じだと思ったので、思いついたことを提案したら、その方向で進むことになりました。チェロとノイズギターとピアノの3本だけでやっている音楽です。

諏訪
今回、僕の作品も世武さんに頼んだらどうなったのか聞いてみたいですけど、オリビエという若いアーティストに頼んで、彼には世界があって、アーティストとして自分の音楽活動がメインにあって、そういう人に頼みたかったし、出来上がったときは「え!」と意外性があって、でも、それが楽しいですよね。「あ、なるほど」という音楽ではつまらないですもんね。

世武
そういうことでも受け入れてくれる監督がいるのは幸せなことですね。


諏訪敦彦監督最新作『ライオンは今夜死ぬ』は、1月20日より、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて全国順次公開。

世武裕子さんが音楽を手掛けた映画『リバーズ・エッジ』は、
2月16日よりTOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー。

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