大人の休み方
矢野顕子さん(シンガーソングライター)×伊藤まさこさん(スタイリスト)
2017
11.19
90年代から拠点をニューヨークに移し、音楽活動を続ける矢野さん。一方、暮らしにまるわるスタイリングで知られ、そのライフスタイルにファンも多い伊藤さん。そんな住む場所も生活スタイルも違うおふたりは、どうやって仕事とプライベートのオン・オフをつけているのでしょうか。さらに、仕事を充実させるための「お休みの過ごし方」についても伺いました。
昨年、伊藤さんは、お酒にまつわるエッセイと手軽にできて、簡単なレシピを掲載した「夕方 5時から お酒とごはん」を発表されました。忙しい毎日でも、たまには夕方5時から料理とお酒を楽しむ。実際に伊藤さんご自身も5時には必ず仕事を切り上げるそうです。
矢野顕子さんは、11月29日に7年振りソロ弾き語りアルバム「Soft Landing」をリリース。
伊藤まさこの「AERA」での連載が一冊にまとめられた「おいしい時間をあの人と」は朝日新聞出版から発売中です。
5時以降は仕事をしない!
昨年、伊藤さんは、お酒にまつわるエッセイと手軽にできて、簡単なレシピを掲載した「夕方 5時から お酒とごはん」を発表されました。忙しい毎日でも、たまには夕方5時から料理とお酒を楽しむ。実際に伊藤さんご自身も5時には必ず仕事を切り上げるそうです。
- 伊藤
- わたしは、5時以降は仕事をしないんです。
- 矢野
- そういう風に時間を区切るのもひとつのやり方ですよね。
- 伊藤
- 今日の疲れを次の日まで溜めないようにするには、5時までにやめて、飲んで、寝るというのをずっと続けているんですけど。
- 矢野
- いいな。それは理想ですね。憧れではあるけど、わたしの場合は日が暮れてからが、さぁやるぞ!となってくるので。
- 伊藤
- そのサイクルは人によって違いますもんね。わたしは朝方なので夏は日が昇るとともに8月とは4時半とかに目が覚めてしまい、5時から原稿を書いています。
- 矢野
- 時差ぼけになった時に、そういう風にしてみて、これいいじゃんと思うんですけど、3日くらいで挫折しますね。
- 伊藤
- 夜になってからのほうが創作は集中しますか?
- 矢野
- 小学校の高学年の頃からずっと夜型なんで、なんとかしたいと思っているんですけど。
- 伊藤
- うちの娘も夜型で、「早く寝なさい」とか言ってしまうんですけど「それはママとは違うから」と言われ、まぁそうだよねと思って最近は何も言わなくなりました。人にはサイクルがあるんだということは一緒に住んでいて気づきましたね。わたしは朝から異様に元気ですね。矢野さんはベッドの上で「うー」とか言ってまどろんでるのが、似合いそう。
- 矢野
- なんですか!そんなこと言われたことないです。まどろんでいる時は、半分いびきをかいて、寝落ちしたりして・・・。時々、いいフレーズが浮かんで、これ使える!という時があるので、ベッドの脇に紙とペンは必ず置いてあるんです。
- 伊藤
- そうなんですか!
- 矢野
- 老眼鏡もそばにおいて、そして、書き出して、そうすると、ノッてきちゃってね、書いてるうちに録音しなきゃとなって結局、起きることもたまにありますね。伊藤さんは、お料理のレシピとかあるんですか?
- 伊藤
- どこか食べに行った時に一口食べて、印象的だけど奥の方に感じる味、例えば、この前、和食屋でがんもどきを食べていたら、すごく細かく、さつまいもが切ってあったのが混ざっていて、これはいいなと思って、小さく切ってみようかなとか、日々食べることを考えてはいます。
- 矢野
- 美味しいものを食べたら、作ってみようとなりますか?
- 伊藤
- ついつい思ってしまいますね。
- 矢野
- わたしは作ってみたいなぁで終わりますから。誰か作ってくれないかな?
- 伊藤
- 家にあるものでやるから、出来上がって全然違うじゃんということもあるんですが、
それが、逆におもしろいものに仕上がったりして。食べてくれる人がいるので、お料理はおもしろいですね。
- 矢野
- そうだよね。
- 伊藤
- 勝手なわたしの作品をおいしいって言ってくれる時もあるかもしれないけど、ないときもあって、でも食べてくれる相手がいるからそれは楽しいですね。
何もしない時期を作る
- 伊藤
- 作品を作る時に心の余裕みたいなのはすごく必要じゃないですか?わたしの場合は仕事の充実が私生活の充実で生活の充実が仕事の充実なので。
- 矢野
- そりゃそうですよね。
- 伊藤
- なので仕事ばかりになってしまうと自分の中に貯金ができないというか、矢野さんはどういう時にリラックスして、その中でどうやって新しいものが生まれるのでしょうか?
- 矢野
- やっぱり、休む時期がとても大事だと思います。1日、2日ではなくて、発表する時期と何を作るかを考える時期と、何もしない時期が大事。
- 伊藤
- 何もしない時期は、何をされているのですか?
- 矢野
- 作ることに気持ちがいかない。それはそれでいいんですよね。ピアノの練習だけは、運動ですから15分くらいでも弾いたりはしますね。
- 伊藤
- 矢野さんにとって、ピアノはどんな存在ですか?舞台の上だと一体化して見えるんですけど。
- 矢野
- わりとそういう風になりますね。でもお料理でも慣れ親しんだ鍋とかもそうじゃないですか?
- 伊藤
- なるほど。これでないというのはありますね。でもピアノと鍋は違うような気がする。やっぱり知らない調理器具で作るのは緊張しますね。例えば、急に友達の家で使ったことない鍋でご飯を炊こうとすると、火の通りが早そうだから水を多めにしようかなとか工夫のしどころはありますね。
- 矢野
- では、うちで。
- 伊藤
- ほんとうに矢野さんのごはんをずっと作っていたいです。気持ち悪いですよね。ファンすぎて。お抱えの料理人になりたい!
- 矢野
- いいなー。うれしい!わたしは、金持ちになったらしたいことがひとつあって、高い車を買うことではなくて、お抱えの料理人を雇うことなんですよ。
矢野顕子さんは、11月29日に7年振りソロ弾き語りアルバム「Soft Landing」をリリース。
伊藤まさこの「AERA」での連載が一冊にまとめられた「おいしい時間をあの人と」は朝日新聞出版から発売中です。