舞台の魅力

松尾スズキさん(作家、演出家、俳優)×優香さん(女優)

2017

10.15

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劇団「大人計画」を主宰し、演劇界の奇才として、第一線で活躍する松尾さん。一方、最近では、演劇に挑戦し、新たなフィールドを切り開いた優香さん。そんなおふたりに、演出家として、役者として、全てが、一発勝負の世界に生きる醍醐味に迫っていきました。

間の取り方の難しさ


2014年に三谷幸喜さんによる「酒と泪とジキルとハイド」で初舞台をふんだ優香さん。そして、今年、三谷作品2本目にして二度目の舞台作「不信 〜彼女が嘘をつく理由」でサスペンスに挑みました。

松尾
「不信」という三谷さんの芝居は、どうでした?

優香
楽しかったです。段田安則さん、戸田恵子さん、栗原英雄の4人だったんですけど、こんなベテランの方々の中に入れることが嬉しかったですし、段田さんのことが大好きだったので、稽古場からおもしろくて、段田さんは、すごいなと間近でずっと見ていました。

松尾
俳優も繊細な舞台転換の演出もうまいなと思いました。三谷さんはどんな演出をするのですか?

優香
細かいですね。基本的には自由というか、なかなか台本ができていなかったので、覚えてお稽古場にいくのがやっとで、稽古期間も短かったので必死でしたね。

松尾
セリフに関しては、僕はいまだに怪しいです。

優香
そういう時はどうするのですか?

松尾
怪しいところは何箇所か決まっているんですけど、いちおう作家なので違う言葉を言ってしまった時に他の言葉を補完するようにして本線に戻すのを綱渡りでやってる。

優香
さすがですね。

松尾
実際にお客さんの反応を見て、着地点を変えるセリフもあるんですよ。毎回、微妙に違って、ここでうけなかったら、これ出そうみたいなことで、その場、その場でやっているから怖い。

優香
楽しいですけど、怖いですよね。わたしは、舞台経験が2度しかないので、毎回緊張しますし、いろんなことが起きたりするし、今日うまくできたと思ってもあまり良くなかったとか、今日は、そんなに気合入れてなかった時のほうがよかったよとおっしゃってくれたりとかいまだによくわからなくて、難しいなと思って。

松尾
とくに笑いの入っている舞台は勝敗がわかるじゃないですか。常に笑というクイズを解いた時に正解だって言って笑ってくれるんでしょ。間の取り方が難しいところがあって「マジかよ」と一言だけなんだけど、それが決まる日と決まらない日の差があったりして。

優香
ありますね。

松尾
掴んだはずの「マジかよ」が回を重ねるごとに逃げていく時もあって。特に東京芸術劇場のお客さんは独特な気がする。

優香
どういう感じですか?

松尾
最前列におじいさんが多い(笑)。

優香
なんでですかね。大人な方は多いですよね?

松尾
そうすると笑いが重い。

優香
ありますよね。日によって。誰か一人が大きく笑ってくださる方がいると巻き込んで、大きくなるんだけど、そうでもないなぁとかありますよね。笑ってくれるとほんとうに気持ちがよくて舞台は、こういうところがおもいろんだなぁ。ドラマとか映像はそうはいかないから、舞台はダイレクトに伝わってくるのでお客さんと自分たちが一体になった時にすごく気持ち良いというのがすごくわかりました。


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松尾スズキさんは先日、15年前に初演された作品「業音」を再演。人間の業や執念、情念を描き、観るものに衝撃を与えた問題作を蘇らせました。松尾さんは、作・演出だけではなく、自ら出演もこなし、キャストには、平岩紙さんや宮崎吐夢さんなど、大人計画の個性的な俳優たちが名をつらねています。

15年前の作品を再演してみて



松尾
この間、見に来てくれたじゃない、あれは、すごい悲惨な話だもんね。

優香
そうですね。悲惨だけど、細かく笑えるところがあったり、ああいう舞台って出てみたいと思います?

優香
大変そうだな。松尾さんはどうやって演出をするのですか?

松尾
今回は、7名しか出ていないので、細かったと思う。

優香
出来ないと怒ります?

松尾
そこ?全然怒らないね。

優香
それならやりたいですね!

松尾
でも15年前の再演で、若かったからあんなにたくさん自分の役を書いたと思う。

優香
今やってみると大変ですか?

松尾
辛い。踊りもあるから息切れをどう処理するかっていう問題が。

優香
15年前と別物になるのですか?

松尾
15年前は39歳だったんだけど、39歳の時は39歳なりの力いっぱいでやっているから疲れ方は一緒だと思う。でも、その時は、3週間で、今回は2ヶ月になるからペース配分が違って。

優香
違いますよね。


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