ロマンスが生まれた現場
松尾スズキさん(作家、演出家、俳優)×優香さん(女優)
2017
10.08
人生を変えた出会い
1980年後半に劇団「大人計画」を立ち上げ、風刺の利いた作風で、演劇界に新たな風を巻き起こしたかと思えば、映画監督やコラムニスト、ナレーターとしてもその才能を発揮している松尾さん。一方、バラエティー番組やコント、司会、女優としてなど、活動の幅を広げている優香さん。
今回は、松尾さんのラブコールによって実現したキュレーターズトーク。実は、松尾さんがご自身の新婚生活を描いた新刊エッセイ「東京の夫婦」の中では、優香さんの結婚についても触れられているんです。
- 松尾
- おはようございます。
- 優香
- おはようございます。
- 松尾
- 「東京の夫婦」という本を出版しまして、東京に住む夫婦の姿や形をほとんど自分の体験を通して書いていて、小説とエッセイの中間くらいのトーンで書いた感じです。
- 優香
- 読みました。おもしろかったです。雑誌の「GINZA」で見ていたのもありますし、改めて1冊になって、帯に星野源さんが、「この本には、僕が大好きな松尾スズキさんがたくさん詰まっています」と書いていますが、ほんと、その通りだと思いました。子供を持たないとか正直にいろんなことが書いてあって、ずしんときたり、ほろっとしたり、笑ったり、すごく素敵な本だと思いました。
- 松尾
- ありがとう。この本を書いていた頃、NHKのドラマ「ちかえもん」で優香ちゃんと共演していて、ちょっとしたストーリーがそこにあったので・・・。
- 優香
- ね、まさかこんなことになるとは。
- 松尾
- そうそう。だから「東京の夫婦」という本を書いている中で東京の夫婦が生まれてきたなぁと思って。
- 優香
- ね。
- 松尾
- だから今日は、優香ちゃんを呼んだんですね。
- 優香
- ありがとうございます。
- 松尾
- あと、単純に友達が少ない。その当時、付き人と偽って、自分の妻を京都・太秦に連れていくという悪事を働いて(笑)
- 優香
- M子さんね。悪事ではないけど(笑)。
- 松尾
- ちょっとずるいことをして。
- 優香
- そうですね。みんな、気がつかなかったですもんね。私は、ホテルが一緒だったので、前もって教えていただいていたんですけど、ほとんどみなさん知らなかったですもんね。
- 松尾
- スタッフに気を使われるのが嫌だったので、後でバレた時にすごい言われましたよ(笑)。
- 優香
- でも、さすがにM子さんは徹底していましたよね。誰にもわからない。
- 松尾
- 付き人感を出していた。
- 優香
- 仕事も丁寧に真面目にやっていましたね。
- 松尾
- 僕のまわりのメイクさんや衣装さんと仲良くなったりして。
- 優香
- 人との距離が上手というか、あまりぐっとこないですし、ちょうどいい距離感で明るくて気がつかえる方ですし、だから、私も仲良くさせてもらっています。
- 松尾
- そうそう。
- 優香
- 松尾さんより仲良くしているかも(笑)。
- 松尾
- 結果そうなりました。ふたりで占いとか行ったりしていたもんね。M子は、けっこう厳しいんですよ。リハーサルをモニターで見て、もっと声をはったほうがいいとか、京都弁の発音が違ったとか言ってくれて、でもそれはありがたいじゃないですか、特に大阪弁に関してはセリフも多くてまったくわからなかったから。それを現場以外の時間にチェックしてくれる人を探していたんですよ。でも見つからなくて、結局、M子に来てもらったの。ふたりで方言指導の方のテープを聴いているうちに彼女のほうが上手くなってしまって。
- 優香
- 先生になってしまったの!
- 松尾
- でも自分で話しているとわからなくなるよね。
- 優香
- とにかくページも長かったですもんね。
- 松尾
- 共演した青木 崇高くんと10ページくらい、しゃべっているシーンがあって、彼は大阪出身だからいいけど僕は不安だったので、彼が休みの日に楽屋に来てくれて、セリフ合わせとか一緒にやっていたの。それで一気に距離が縮まって、それで青木くんとも仲良くなったんだなぁ。そして、青木くんと飲んだ時に優香ちゃんのことが好きなんだなというのがなんとなくわかって、釘をさしておいたんです。”青木、突っ走る
なよ”って(笑)。
高い好感度は損?!
NHKのドラマ「ちかえもん」の共演がきっかけで、俳優の青木 崇高さんとご結婚された優香さん。撮影が行われていたのが、京都とあって、連日、キャストやスタッフたちが一丸となって、濃い時間を過ごしながら、作品を作りあげていったそうです。
- 優香
- あんなにおもしろい作品に出会うのはなかなかないですね。
- 松尾
- 「ちかえもん」は、いまだに言われるねぇ。
- 優香
- 本読みの時からものすごくおもしろかったですもんね。
- 松尾
- そうですね。
- 優香
- この「ちかえもん」で、はじめて松尾さんにお会いしたんですけど、わたしは松尾さんと一緒にいる役だから、松尾さんがものすごく厳しかったり、怖い人だったら嫌だなと思っていたんです。だけど、すごくおとなしくて、照れ屋さんなんだという印象がありました。
- 松尾
- 会う前に僕の作品を見ていたんでしょ?
- 優香
- 舞台を見に行ったりとか。
- 松尾
- そういうのを見ると、確かに怖い人に見られるかもしれないね。
- 優香
- 黙っていたら怖いですよね。顔も怖いじゃないですか(笑)。
- 松尾
- 怖くないよ。かわいい、かわいい言われるわ!
- 優香
- 笑ったらかわいいけど、黙っていると何考えているの?とか言われません?
- 松尾
- ただ、人見知りが全面に出てしまっているんですよね。
- 優香
- でも怖いと思われているほうが楽じゃないですか?
- 松尾
- 思われたくないですね。
- 優香
- 会った時に意外と良い人なんだと思われるじゃないですか。
- 松尾
- そのほうがいいのか。そういう意味では、優香ちゃんは、もともと好感度が高い印象だよね。
- 優香
- 笑っているイメージが強いみたいで、黙っているだけで不機嫌なんじゃないかと思われます。でも普通にしてて、へらへらしているわけにはいかないから。
- 松尾
- たしかにスタジオの隅で優香ちゃんが物思いに沈んでいたら、機嫌悪いかなと思ったりする。損だね。
- 優香
- 損なんですよ。
松尾スズキさんの新作エッセイ「東京の夫婦」はマガジンハウスより発売中です。