年齢を重ねたからこそわかる”和”の魅力

牧瀬里穂さん(女優)×山本浩未さん(ヘアメイクアーティスト)

2017

09.17

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知らないことを知る楽しみ



山本
わたしね、10代の時にずっとお琴を習っていたの。

牧瀬
意外!

山本
もう弾けないよ。

牧瀬
それはご両親から言われて。

山本
自分から習いたいと言って。わたしは広島の出身なんだけど、地元がお琴の生産地だったの。

牧瀬
そうなんだ。

山本
だから身近にお琴教室があって、お友達が習っていたりして。だから和のことはわりと好きで、母がそういう人で、お茶のお稽古も実は高校生の時からやっていたの。

牧瀬
そうなんだ。

山本
だから着物を着たりとかは、嫌いではなかったですね。

牧瀬
楽しいよね。わたしは幼稚園の時にバレエと日本舞踊を習っていて、母にどっちかにしてと言われて、バレエを選んで、ずっと15年くらいバレエをやっていて。そして、東京に来て、この仕事をはじめて、勉強のために見に行ったのが歌舞伎で、すごく楽しくて。

山本
最初から?

牧瀬
うん。演目も楽しかったし、ビジュアル的に、すごく地味なものだと思っていたものが、お着物とか和の色ってすごく華やかだったから、そこで、着物にはまってしまって、着物が着られるようになりたいと思った。

山本
それが20代のはじめ?

牧瀬
20代のはじめ。そこで着付けを習わず、なぜか日舞を習い始めて、月に8回くらいどうにかお稽古に行って、お名前もいただいて、踊りのお稽古をすると所作ができるようになるので、着物が楽になるからやってよかったなぁと思って。そして、結婚してから、これからどうやって生きていこうかなと思った時に、お茶を習いたいなと思って。30代後半でお茶とか出されても、「よくわからなくてすみません」と言っていることが、もうそろそろ年齢的にあわないかなと思って、お茶を点てるというよりも呑み方くらい、畳の歩き方くらい習得したいと思って習い始めたら、また、はまっちゃって一生懸命お稽古したという感じ。

山本
すごいよね。最初の頃、週に2回くらい朝の6時くらいから行って、1日中お稽古したりしていたんでしょ?

牧瀬
そうなの。先生がきっちり教えてくださる方だったので。

山本
NIGOくんもすごいこだわるし、その点は、ふたり、共通しているなと思ったの。

牧瀬
そうかな。

山本
とことんこだわるじゃないけど、いいなと思ったものは極める。

牧瀬
夫を見ていると、わたしは、まだまだ浅いって思っちゃうけど。

山本
でも、お茶のお道具のこととか、お茶っていろんなものが関わるでしょ、例えば、焼き物もお花も、そういうのを本当にこつこつと勉強するんですよ。展覧会に行ったりとか、本をちゃんと読んだりとか。わたしなんか、ただそういう空間にいることが好きなので、お稽古しても、みんなを見て「なるほど」みたいな感じで、深く追求しないけど、里穂ちゃんは、深く追求する。

牧瀬
習うとか、人から教わるとか勉強するとかが好きみたい。いろんなことを知ったり、見に行ったりすると、わたしは、何にも知らないんだと思うことが嬉しいみたい。

山本
新しいことを知ることがね。

牧瀬
仕事の時は、頭がいっぱいいっぱいになるじゃない。その世界だけで生きて1日終わってしまうけど、他の世界に向けると、わたしは、何にも知らないし、楽しみのほうが大きい。それが独りでふらふらしてしまう原因です。


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ちょっとだけ変えるアレンジが大人を素敵にする



山本
和の趣味は、わたしたち共通しているから、わりと一緒に楽しめよね。

牧瀬
着物部ね。

山本
部員2人の着物部。わたしたちはちゃんとしたい方だから、基本的なベーシックが好きだよね。

牧瀬
好きだし、ある程度大人になったからきちんとしないと、ちょっと遊び心を持った着物とかもう着られなくなってきているから、きちっとしたものをきちっと着たところの遊びをどこかにプラスしないといけない年齢になってきたのかと思ったりする。

山本
大人は、いろいろ型崩れしてくるわけですよ。その型崩れ具合がその人の味になると思っているの、見かけも中身も、型崩れしてきた時にそのまま着ると若い時はかっこよかったんだけど、大人になると、しまらないというか、だらしなくなってしまう。

牧瀬
そう、全部がまとまらなくなってしまうから。

山本
だから着物をぴしっと着たりすると、気持ちがいいというか、なんかしっくりくるよね。

牧瀬
20代だったら、半襟のレースとか付けたり、帯も変わり結びとかしてもよかったかもしれないけど、この年齢になるときちっとしたものをきちっと着るのが大事なのかなと思う。

山本
歳を重ねるとそれが楽しいし、それが綺麗に見えるって、そのきちっとした中にゆとりがある。この前、観劇に行った時に、里穂ちゃんがすごくいい着方をしていて、お茶の時ではないからゆるめに着てみたんだよねとか言って、すごいできるこの人!と思って。

牧瀬
お茶のお稽古の時は、あまり襟を抜かずに着ているから、観劇の時は、襟をゆったりさせた。

山本
TPOで分ける。着物の着方もひとつではなくて、そうやって意識すると、メイクもそうだと思う訳、メイクやスキンケアもみんなルーティーンで、いつもこうだからとやるんだけど、ちょっと変えてみようという、そのちょっと変えるっていうのが素敵につながるかなって気がするのよ。

牧瀬
たしかにね。

山本
今日は、仕事だからアイライン長めに引いてみようかなとか、今日はこの洋服の色だからアイカラーの色を変えてみようかなというそのちょっとだけ変えるアレンジが実は大人を素敵にするというかね、そんな気がするんですよ。

牧瀬
なるほどね。なんで大人って変えられなくなってしまうの?

山本
めんどくさくなってしまうの。

牧瀬
若い時、ベストの時、ほめられたものをずっと引きずってしまうじゃない、それを変える勇気をどうしたらいいんだろう。

山本
若い時は好奇心旺盛だし、時間もあるし、やる気もあるわけですよ。でも大人になるとある程度いろんなことを経験してきたから、このくらいでいいかなみたいなのがあるんだよね。でもそのまんまいくとつまらない感じになってしまう。日々、見かけも考え方も変わっているのにそこだけ、このくらいでいいかなだと変わっていかないからバランス悪くなるでしょ。そのへんを意識したらルーティーンが楽しみになると思っている。

牧瀬
確かに。自分で気づくことも大事だし、友達からの辛口のアドヴァイスも聞かなくてはいけないということ?

山本
そうね。自分自身、聞く耳は持ちたいといつも思っているけどね。


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