”クラッシック”と出会い
岸田繁さん(ミュージシャン)×反田恭平(ピアニスト)
2017
07.23
ロックバンド「くるり」の活動と並行して、本格的なオーケストラ作品「岸田繁 交響曲第一番」を発表された岸田さん。一方、幼い頃から、英才教育を受けていたわけではない反田さんは、奨学金で日本の名門音楽校に進学し、チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に主席で入学されました。
父親とドラクエのおかげ
- 反田
- 岸田さんのクラッシックの関わりとは?
- 岸田
- 子供の頃に家でレコードがかかっていて、ベートーベンの7番とか9番とか、チャイコフスキーのピアノコンチェルト、あと、なんでかわからないけど、リムスキー=コルサコフとかショスタコーヴィチとかロシアものがけっこうかかっていて、今、僕、ショスタコーヴィチとか好きなんですけど、子供の時はわからないじゃないですか。気持ち悪って思っていて、チャイフスキーもキャッチーだけど重いと思っていて、親父がレコードかけている中でたまにハワイアンとかビートルズをかけるのを待っていたんですよね。年末、第9のコンサートには連れて行ってくれました。第9は頭の中で流しながら歩いているくらい好きになって、その後にゲーマーだったんでドラクエをやりだして、杉山先生の美しい音楽を聞いて、ああいう曲を書きたいなとか思うようになったりしたけど、楽器もやっていないし、教育も受けていないので、杉山さんがたぶんモチーフにしたようなドビッシーとかワーグナーとかバロックっぽいのをちょこちょこ聞き出して。今でも好きで身にしみたのがグリーグの「ホルベルク」とかビザーの歌劇とかバルトークとか物悲しい民謡っぽい旋律が入っているもの。ウイーンぽいクラッシックが好きになったのは大人になってからですね。
音楽にはイメージが大事
反田恭平さんは、名門、桐朋学園大学音楽学部に入学したのち、ロシアに留学。その2年後には、日本でデビューアルバムを発表します。またデビューリサイタルは、サントリーホール2000席が完売するなど今もっとも注目されているピアニストの一人。ピアニストといえば、幼少の頃からストイックに練習するイメージがありますが、反田さんの場合、そうではなかったようです。- 岸田
- ピアノをはじめたのはいつ?
- 反田
- はじめて触ったのは4歳くらいですね。11歳までずっとサッカーをやっていたんですよ。でも、試合の途中で手首を骨折してしまい、痛かったんで、サッカー選手は、無理だと思って、ピアノだったら痛い思いしなくていいかなと思って。でも手の小指を骨折して手術もしたんですよ。発表会の時に8本で弾いていました。そういう時のほうが落ち着いていて、いい成績でした。
- 岸田
- 音楽のイメージがあるんでしょうね。おれも左薬指骨折しているんですよ。友達に浣腸して(笑)。
- 反田
- めちゃくちゃ硬いですね。
- 岸田
- ポキっとなって、リハビリもちゃんとしなくて。
- 反田
- 11歳までほんとに適当に弾いていて、ちゃんとした音楽教室に通いはじめて、先生について、そこからバッハのインベンションとかはじめたので。今年でだいたいピアノをはじめて10周年です。他の子がみんな上手かったのでその間をくっとつめるような練習はしましたけど。
- 岸田
- 今も練習は集中してやられるほうですか?
- 反田
- 基本的に怠け者なので家にいても弾かなくて・・・。
- 岸田
- 場所を変えたりとか?
- 反田
- 追い込み型ですね。悪い性格ですけど。
- 岸田
- 僕もそうです。
- 反田
- 無意味な練習をしている人ばかりだったんですよ。時間の無駄としか思えない。だったらなぜ弾けないのかを考えて、休んでコンディションを整えてからまたやればいいのに。僕は譜面を図形に見立てるんですよ。普通に音階があがっていたらそれはクレッシェンドになるわけですよ。彼らは意思表示を残していて、そこは描いたものを考えて弾いて、イメージと違ったらなぜ違うのか、それをどんどん繰り返す。筋トレと一緒で筋トレを毎日しても筋肉はつかないわけで、体の筋肉を壊して休んでいる時に再生させて新しいものができる。それと同じで毎日弾いていても筋肉つかないし、頭の脳みその休憩も必要ですし、僕はテレビ見ながら歯磨きできない人間なので。
- 岸田
- おれもわりと似ています。もっと怠け者ですけど。野球が好きなので、野球の試合のデータを見直したり、一流のアスリートがどうしてきたかという話はいろいろあってすごい練習をする人もいるし、でも人によっては追い越されたくないからとか偉そぶりたいからという理由で、例えば2時間しか練習しなかったとしても18時間やったと言ってしまったりとかそういうことってあると思うんですよね、先ほども反田さんおっしゃっていたけど、クレッシェンドするのはフレーズが絶対にそうなるってことって。音楽をやっていてどういう風に時間を使うかという時に楽器と向き合うことも大事だとおもうんですけど、その楽器を弾き込むよりも頭の中で弾いてみるとか、あるいはその楽器を生まれた背景を学んで感心してみるとかそういうことを、どれだけバランスよくできるかっていうのが大事。
- 反田
- イメージ力は大事だと思うんですよ。
- 岸田
- そうですね。体が動かなくなってきたらリハビリ的な練習が必要になってくるとおもうですけど、若いうち動くうちはイメージが音になりますよね。