負の思いを力に変える
荻上直子さん(映画監督)×桐谷健太さん(俳優)
2017
03.12
現在公開中の、荻上監督最新作「彼らが本気で編むときは、」にご出演されている桐谷さん。母親に育児放棄された少女が、彼女のおじとそのトランスジェンダーの恋人に出会い、共同生活をするさまを描く物語です。桐谷さんとしては今までにない役柄、監督にとっては、5年ぶりとなる、この作品。おふたりは、俳優として、そして、映画監督として、それぞれどのような信念を持って、お仕事に取り組んでいるのでしょうか?
『かもめ食堂』、『めがね』、『トイレット』と荻上監督の作品ではお料理のシーンが多く登場し、その都度重要なカギとなっています。映画の中でお料理の監修を務めるのは、フードスタイリストの飯島奈美さん。今作でも、食卓を彩るリンコさんの数々の美味しい手料理が家族団らんのひとときを作り出しています。
最近では、マンガや小説が原作の作品が多い中、今作は、監督の完全オリジナル。試行錯誤を繰り返し、5年の歳月をかけた生み出された渾身の一作となっています。
『彼らが本気で編むときは、』
【公式ホームページ】
生田斗真、柿原りんか、ミムラ、小池栄子、門脇麦、柏原収史、込江海翔、りりィ、田中美佐子、桐谷健太
脚本・監督:荻上直子
2017年2月25日(土)、新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー!
配給:スールキートス
© 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会
ごはんを囲むと家族になる
『かもめ食堂』、『めがね』、『トイレット』と荻上監督の作品ではお料理のシーンが多く登場し、その都度重要なカギとなっています。映画の中でお料理の監修を務めるのは、フードスタイリストの飯島奈美さん。今作でも、食卓を彩るリンコさんの数々の美味しい手料理が家族団らんのひとときを作り出しています。
- 桐谷
- ごはんには、気持ちとか心が入ると思うんですよ。そこが今回の映画でもメインになっているところだと思うんです。子どもの頃を思い出すと学校でイヤなことがあってもおかんのごはんを食べたら、いつのまにか機嫌がよくなっていたみたいな。ごはんがただおいしいだけではなくて、その人にしか出せない味があって、それをオレは感じていたんですね。マキオは胃袋も掴まれていて、それはステキなことだと思う。監督の作品にとってお料理はやはり大事なんですか?
- 荻上
- よく言われがちなんですけど、今回もお料理出したろう!という感じではなくて、人々の日常や日常の先にある孤独感みたいのを描きたいんだけど、その時に必然的に出てきてしまうシーンなんです。今日何食べようかなって思う時に、おいしいものをいつも食べたいですし。ごはんを囲むと家族になったりするんですよ。
- 桐谷
- そうですね。誰かが作ってくれる気持ちのこもったお料理の家族感は強い。どっかの有名レストランのお料理もおいしいし、新鮮のお寿司屋さんもおいしいけど、家庭みんなで囲んだ味もおいしいんです。
「本気」スイッチが入る時
最近では、マンガや小説が原作の作品が多い中、今作は、監督の完全オリジナル。試行錯誤を繰り返し、5年の歳月をかけた生み出された渾身の一作となっています。
- 荻上
- 私はネガティブな人間なんですよ。ものすごく落ち込んで、誰かを恨んでしまったり、悔しかったり、ドロドロしたものがエネルギーになっている気がします。その気持ちは、映画を作らないと浄化できないみたいなところもあって。
- 桐谷
- ずっと撮り続けないといけないですね。
- 荻上
- もちろん。
- 桐谷
- ジャンプするには一度かがまないといけないし。ずっと本気というのもなかなかない。監督が本気の時は映画を作るってことですね。
- 荻上
- これだけ仕事していると、ある程度、脚本は、書けてしまうわけですよ。だけどその先まで持っていくには乾いた雑巾を絞るみたいな気持ちで、ねばらないといけないんですよ。
- 桐谷
- 一滴を。
- 荻上
- 粒が落ちてくるまで待って一生懸命考えないといけないんです。それをやらないとゆるいものになってしまうことは経験上あるので。そこまで持っていくためにするし、撮影中は妥協した時点でそれがずっと引くんですよ。見る度に、一生後悔するんですよね。映画は残ってしまうものだから。でも映画を作っていて一番おもしろいなと思うのは自分の想像だけで書いている脚本が役者さんによって違うところに飛ぶ時があって、いいものを出してくれた時におもしろいなって。役者もそうじゃないですかね。
- 桐谷
- そうですね。でもいろんな感情を持った人間になるから、自分の真ん中にすぐ戻ってこられるのは大事だと思います。楽しい気分の役もあれば、落ち込んだり、暗くなる役もあって、振られ続けるとおかしくなる。ある程度、自分にすぐに帰ってきたり、自分の好きな時間を作るのは、大事。散歩したりとか銭湯行ったりとか。
- 荻上
- 銭湯行くんですね。
- 桐谷
- 銭湯大好きなんですよ。あとは美味しいごはんを食べたりとか。何も考えずに気持ちいいと感じる時間は大事。もちろん、その役をやっている間、その役にのめりこんで、プライベートもその役に見せることも役者としてかっこいいと思うんです。でも、終わったら終わりにしないと、本当に力を入れたい時に力が出ないんですよ。だから逆に何もしない時は何もしない状態で力抜いている時のほうが本番になって自分が思ってもいなかった力が出る。そっちのほうが今はいい。でも自分の中にあるものから出していくというか、自分以上のことは出来ない。だからこそ自分を超えていかないといけない。まぁ大変やなと思うことのほうが多いかな。でも、結局やっているのは好きなんだろうし、楽しいからやっているんでしょうね。
『彼らが本気で編むときは、』
【公式ホームページ】
生田斗真、柿原りんか、ミムラ、小池栄子、門脇麦、柏原収史、込江海翔、りりィ、田中美佐子、桐谷健太
脚本・監督:荻上直子
2017年2月25日(土)、新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー!
配給:スールキートス
© 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会