今、持っている若さを楽しむ!
野宮真貴さん(シンガー)×ジェーン・スーさん(作詞家、コラムニスト)
2017
01.08
ピチカート・ファイヴのヴォーカリストとして一世を風靡し、今も、そのスタイルやエレガントさに磨きがかかるオシャレアイコン野宮真貴さん。そして、ラジオパーソナリティとしても活躍し、今を生きる女性たちについてのエッセイを発表してきたジェーン・スーさん。年齢がひとまわり違うおふたりに女性として生きることの悩み、さらには、年齢を重ねることのおもしろさについて語っていただきました。
ジェー・スーさんは、昨年は、現代の消費社会に生きる女性としての苦しみを綴ったエッセイ『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』を発表されました。
野宮真貴『赤い口紅があればいい いつでもいちばん美人に見えるテクニック』幻冬舎より発売中
ジェーン・スー『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり』文藝春秋より発売中
自分のこと「僕」って呼んでいました!
- ジェーン・スー
- 私は、自分が女であることをすごく持て余して生きてきたんですよ。ようやく40歳を過ぎて、まぁいいかと思えるようになったんですけど、野宮さんは、女であることを楽しめない時期はありました?
- 野宮
- 若い時にありましたよ。
- ジェーン・スー
- そうなんだ。意外!いくつくらいの時ですか?
- 野宮
- 高校生の頃。
- ジェーン・スー
- KISSのメイクをしていた時だ。
- 野宮
- 私、ロックが好きでロック少年になりたかったの。自分のこと「僕」って呼んでいたし。
- ジェーン・スー
- え!そんな秘蔵な話を!
- 野宮
- これまだ、言ったことない話。
- ジェーン・スー
- びっくりした。その話、ものすごい勇気をもらいましたよ。野宮さんはそういう時期がなかったんだろうなって思っていたから。
- 野宮
- あったんですよね。その当時、アメリカのThe Runawaysとか日本でも下着ルックを売りにした女の子バンドとか出て来て、そういうバンドにはなりたくなかったの。
- ジェーン・スー
- どのタイミングで、うまくそこから抜け出したのですか?
- 野宮
- 私、洋服もメイクも全部。音楽とともにあるんですよ。Japanというバンドのデビッド・シルヴィアンがキレイにお化粧していて、雑誌の「ミュージック・ライフ」に彼が使っている化粧品が書いてあって、それと同じものを全部揃えたの。
- ジェーン・スー
- まさか、デビッド・シルヴィアンが野宮さんの女への扉を開いたとは!
- 野宮
- そうそう。口紅は、「エリザベスアーデン」とかマスカラは「マックスファクター」とか書いてあるわけ。だから、初めて高い化粧品を買ったのは、デビッド・シルヴィアンのおかげ。
- ジェーン・スー
- 意外すぎる。
- 野宮
- 変わっているよね。
ぼやいている暇はない
ジェー・スーさんは、昨年は、現代の消費社会に生きる女性としての苦しみを綴ったエッセイ『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』を発表されました。
- ジェーン・スー
- 私は、『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり』をぼやき本と思っているんですよ。生きて行くのに器用になれなくて、素直にやれなくて、ぼやいてばっかり。そしたら野宮さんが解決本となる『赤い口紅があればいい いつでもいちばん美人に見えるテクニック』を発表してくださって。
- 野宮
- 今、そういうセットになっていますよね。
- ジェーン・スー
- 自分が何にずっと抵抗をしていたのかと考えると女性らしさとか女の子ってこういうものが好きとか世の中の決められたものに自分がはまれないことに対して憤慨したり、戸惑っていたと思うんですよ。でも、それもわたしもひとつのアイデンティティとして、梃に使っていただけかなっていう気もするんです。マジョリティに入れない私っていうのが、ある種のよりどころになっていたというか、あんまり賢いことじゃなかったなと。だって、やりたいんだもん、本当は。
- 野宮
- だから、ぼやいている時間はないんですよ!私もそうだったけど、40代って一番悩んだ時期だった。若さを失っていく怖さをなんとか補うと思って。
- ジェーン・スー
- 野宮さん、一瞬、美魔女みたいになった時期もあったそうですね。
- 野宮
- そうそう。危うく美魔女になるところだった。例えば、髪質も変わってきたから、時間とお金をかけて補っていたけど、ある日、髪の毛をツヤツヤにしたら、自分の40代の顔とのギャプが逆に老けさせて見せていることに気がついたの。だから、もう少しナチュラルになったんだけど、突き進んでいたら美魔女方面にいっていたかもしれない。そういうことで、40代を悩みながら過ごして、50代になったら、年相応の開き直りとか図々しさとかも身に付いて、振り返ってみるとがんばりすぎていたなぁと思って。それに、50代の私から見るとまだ若さがあったなとも思うんですよ。だから、その時に失っていくものばかりを見てぼやいていると、その時の若さがもったいなくて、かわいそう。その時に持っているものをいかして楽しまないと!というのが50代になって分かったの。
- ジェーン・スー
- それは励まされますね。
- 野宮
- 50代は楽しいよ。40代まだまだ若いんだから、いろんな服を着たり、恋をしたりしないと。
野宮真貴『赤い口紅があればいい いつでもいちばん美人に見えるテクニック』幻冬舎より発売中
ジェーン・スー『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり』文藝春秋より発売中