時代とともに変化する恋愛観
桜沢エリカさん(漫画家)×谷村志穂さん(小説家)
2016
11.20
恋愛離れが叫ばれる昨今。ご自身の恋愛観と比較しながら、今の時代の”LOVE”をバッサリと斬っていただきました。
恋愛してこなかった日本人
ともに恋愛を題材にした作品を数多く手がけるおふたり。谷村さんは、この夏、北海道の大沼を舞台に、戦後間もなく山梨から嫁いで来た3姉妹をモデルにした小説「大沼ワルツ」を発表されました。これは、実話をもとにした「奇跡の三夫婦」の愛の物語になっています。一方、漫画以外にも、不安や迷いを抱えがちなアラサー世代に向けた人生指南書「女を磨く大人の恋愛ゼミナール」を発表するなど、様々な愛の形を提案されてきた桜沢さん。そんな、「恋愛マスター」であるおふたりは、いったいどんな恋愛をしてきたのでしょうか。
- 桜沢
- 前から思っているのは、日本人は、私たちの親世代まで恋愛をしてこなかった。詩人や小説家とか恋愛をしてきた人もいるけど、一般的の人たちはお見合いで、親が決めた人と結婚をしたりしていて、そういう人たちの子ども、その子どもみたいなところまでまだ恋愛が行き渡っていないのでは?と思うんです。
- 谷村
- もう文化論ですね。
- 桜沢
- まだ日本人は、外国人みたいに恋愛できないんじゃないかなって。
- 谷村
- 昔、クラブで遊んでいた時、外国人の男性は「楽しい?」「この曲好き?」とか、そういって声をかけてくるのに、日本人はクラブなのに「会社員?」とか聞いてきて。
- 桜沢
- そうなの!
- 谷村
- 「何歳?」、「会社近く?」、「出身どこ?」と身上書みたいなところから入ってくる。だから、こんなんのでは、恋愛できないって思っていたんです。
- 桜沢
- ディスコでは一緒に楽しく遊ぼうではなくて、この子がどうなのかと値踏みみたいなことされるじゃないですか。でも、もっと小さいクラブみたいな場所では、そんなこと聞かない人たちはいっぱいいましたよ。
- 谷村
- わかる。一般的には人と人が出会う時に外側から入るっていう感覚はあるなと思うのね。でも、私が書いた小説「大沼ワルツ」は実話がもとになっているんだけど、男女は第二次世界大戦の最中に出会っているの。書いていて面白かったのは、東京で空襲が始まっている時に、寿司店がまだ開いていて、そのお店を手伝っていた女性と客という形で出会っているんです。今、話さないともう二度と会えないかもしれないってことで、2人は、すっと仲良くなるんだよね。そう思うと、今は、のんきで切迫感がないんだと思う。
- 桜沢
- それはそうでしょう。
- 谷村
- 相手について交換可能な感覚があるんだと思うんだよね。私たちの時は、まず好きになっちゃったでしょ?
- 桜沢
- まず好きになりますよ。とにかく男がいるところに行ったら、この中でいけそうなのは誰かって思っていたから。
- 谷村
- そうだよね。
- 桜沢
- 最近はそんなこと思わなくなりましたが。
- 谷村
- 今はね。
- 桜沢
- でも、今の人たちはそんなこと思わないんでしょうね。
時代が違えば、恋愛の形も変わる
- 谷村
- すごく不思議だと思っているのは、食事に行くと、男女がきっちり割り勘しているね。あれは、すごく不思議じゃない?
- 桜沢
- 不思議!
- 谷村
- 計算機まで出して割り勘にしていて、私からすると、この先、どうやってこのふたりは恋愛が始まるのかなって思う。私は、どっちが払ってもいいと思うの。
- 桜沢
- わかる。その場は彼が払ったから2件目は私がとかね。
- 谷村
- そう。
- 桜沢
- どうして、それが出来ないんだろう。最初にいいところを見せないと女の子もその気にならないよね。
- 谷村
- 私の両親は、恋愛結婚だけど、父はお金がないはずなのに必ず1万円札を出すのが好きになったって母が言っていた。
- 桜沢
- 次は、私もそういう人好きになりたい!
- 谷村
- でも恋愛とか結婚観は、時代によって違うと思うんですけど、同じ部分もあってね。だから小説が書けるんです。その時々で美徳にするものが違うという感覚がすごくある。今の時代にとって美徳は何か?とか、嗜みとかそういうものがすごく違う感じがしますね。
- 桜沢
- 今はもう、美徳や嗜みはなくない?
- 谷村
- でも、どこかにはあるんだと思うんだよ。だから逆に言うとすごく厳しくなっていて、「そういうこと言う?」とか「そういうことする?」ということには、すごくナーバス。例えばメールのやりとかもすごく細かいところまで見ている。
- 桜沢
- そうね。みんな空気を読みながら、相手の顔を見ながらね。
- 谷村
- そう。でも顔を会わせた時の笑顔とか「こんにちは」と言った時の佇まいとかには気がいっていない感じがする。どこを大事にしているのかというのが違う感じがする。だから悪いとかではなくて。描く時に何かが違うとすると、その時代時代で、どこがクローズアップされるかですね。
谷村志穂:北海道絶景の地の実話も元にした奇跡の物語「大沼ワルツ」が小学館より発売中
「小学館」公式ホームページ
桜沢エリカ:今も第一線で活躍するベテラン芸能記者を軸に華やかなりし昭和の芸能界の光と影を描いた
「スタアの時代1〜3」が光文社より発売中
「光文社」公式ホームページ