空前にして絶後の展覧会

篠山紀信さん(写真家)×矢吹春奈さん(女優)

2016

11.06


 
現在、品川の原美術館で「篠山紀信展 快楽の館」が開催中の篠山さんとその作品のモデルを務めた矢吹さん。この前代未聞、アート史に残るいままでない展覧会のお話を中心にヌードの見方を篠山さんに教えてもらいました。

篠山紀信、人生初の感覚



原美術館で開催中の「篠山紀信展 快楽の館」は、原美術館の中で撮影されたヌード写真が、その撮影された場所に展示されているというもの。出品作品はすべて撮り下ろしの新作ヌード写真で33名にものぼるモデルを起用しています。


篠山紀信「快楽の館」2016 年 ⓒKishin Shinoyama 2016

矢吹
ひと部屋だけ男性のヌードもありますよね?

篠山
オカダ・カズチカさんという新日本プロレスで、一番人気の美男子なんですよ。

矢吹
私も写真を見てステキと思いました!

篠山
すごい肉体でしょ。闘う肉体ってゴツゴツした戦闘的なものなんだけど、あの人の場合は柔かいんだよね。

矢吹
曲線美が美しい。

篠山
そう、美しい肉体なんですよね。彼も原美術館に来てもらって、前庭で撮ったんですよ。コレ見るだけでも女性は来る価値ありますよ。

矢吹
本当にそう思いました。

篠山
ヌードの見方は、人それぞれ違うからね、それは自由。

矢吹
自由に見ればいいんですね。

篠山
そう。でも、今回は原美術館で撮った写真がその原美術館に飾られているということで、この部屋でこんな人がこんなことやっているんだという感覚になりますよ。

矢吹
写真は、等身大くらいの大きさになっていますもんね。

篠山
そう。ものすごい大きく伸ばしてあるから。

矢吹
横に裸の人がいるみたいな感覚で見られるということですよね。

篠山
そうです。だから自分も裸になって、その部屋にいるみたいな気になるわけよ。 ちょっとよく見るとクラクラして不思議な感覚。僕なんか長いこと写真をやっていて、いろんな写真展をやっていながら、これは、初めての感覚ですね。

矢吹
そのクラクラっとする、不思議な感覚。まさに、アートですね。

篠山
それが一番のコンセプトですね。写真展に行くと、小さい写真を額に入れて、”どうだい芸術だから鑑賞しろ”という感じがあるじゃないですか。今回は、そういう感じが全然しない。ひとつの迷宮に迷いこんで体感しているって感じなんですよ。

矢吹
まさにすごい!

篠山
鑑賞ではなく体感ですね。是非、足を運んで、その体感をして欲しいと思いますね。



篠山紀信「快楽の館」2016 年 ⓒKishin Shinoyama 2016

写真を撮る快楽




(森村泰昌の常設展示作品と)
篠山紀信「快楽の館」2016 年 ⓒKishin Shinoyama 2016

矢吹
先生はどうやって、感性を磨かれていますか?いつも撮影すると、なんで、アイディアが次から次へ出てくるのか、すごいなと思うんですけど。

篠山
そうですね。今回は、原美術館が持っている力がすごく大きかったですね。建ってから80年近く経っていて、歴史や地場、土地が持つ力、磁力など、そういうものの上に戦争で焼けることなく残り存在し、古い家具、窓や庭があったりする。その中からいろんな気が出てくるんですよ。だから、肉体的には大変だったけど、アイディアに困ることは何もなかったね。アイディアがどんどん湧いてきて、最後のほうなんか、お願いしていたモデルが来ても作品を飾る場所なくなってしまったんだから。そのくらいにどんどん出来上がりました。作品を作る時は肉体的には大変だったけど、ほんとうに気持ちよかったし、楽しかった。それが、実は僕にとっての快楽なんだね、写真を撮る。

矢吹
そうなんですね。確かに、先生楽しそうでした!

篠山
普通は、どのサイズにしようかと図面や模型で決めるんですよ。だけど、今度の場合はここで撮って、ここの壁に貼るんだって感じで、芝居だと、この人のために書く、「当て書き」とか「当て振り」とかあるけどこれは「当て撮り」だから。

矢吹
それ、初めて聞く言葉です。

篠山
出来たら、それをどういうサイズにしようか、その写真を見ながら、壁の前に立って、ここをもっと大きくしようとか、そういうことまで全部出来たので完璧なんですよ。空間と写真との関係が。まず最初に展覧会を見たいと思ったのが、僕なんだから。これ出来たらどうなるのかなぁって。こんなこと長い写真家人生の中でも初めてで、空前にして絶後。この後もないと思います。こんな歴史のある建物を自由自在に使っていいよ、しかも表現としてはどんなことやってもいいよ、そんなこと言ってくれることなんて、この先おそらくないと思います。

矢吹
先生は、幸せですね。

篠山
ほんと幸せですよ。すばらしいことだよ。



篠山紀信「快楽の館」2016 年 ⓒKishin Shinoyama 2016


展覧会名: 「篠山紀信展 快楽の館」

会期: 2016年9月3日[土]- 2017年1月9日[月・祝]
会場: 「原美術館」
東京都品川区北品川4-7-25 〒140-0001
Tel 03-3445-0651(代表) 

開館時間: 11:00 am - 5:00 pm(祝日11月23日をのぞく水曜は8:00 pmまで/入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日 月曜日(祝日にあたる1月9日は開館)、年末年始(12月26日-1月4日)


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