「撮影者」と「被写体」を超えた信頼関係

篠山紀信さん(写真家)×矢吹春奈さん(女優)

2016

10.23


 
写真家の篠山紀信さんと初のヌード写真集「春奈」を発表した女優の矢吹春奈さん。伊豆の温泉旅館を舞台にエネルギッシュにシャッターを押す篠山紀信さんの前で矢吹さんは、堂々と女優魂を見せつけました。

愛とリスペクトを持って挑む





矢吹
おかげさまでとても反響がいいです。

篠山
よかったですね。

矢吹
表紙の表情がとても褒められます。どうしてこんな表情を撮ることができるんだろう?先生は、普通のカメラマンさんでは撮れないような表情とか精神面を引き出してくれました。

篠山
僕は、撮っている時、モデルさんに対しては、世の中にこの人以上にキレイな人はいないって思っているからね。最高のリスペクトと、本当に一番いいところを撮ってやろうという善意のカメラマンなんですよ(笑)

矢吹
撮られながら先生の愛を感じます。

篠山
そうでしょ。溢れるごとく愛を注がないと、こんな表紙のような表情にはならないんですよ。撮影に関しては、だいたい5分、10分経つと、自分が裸でいるのかどうかも忘れちゃうよね。

矢吹
この撮影の時も裸でいるのが普通になってしまい、撮影初日でもう裸になりましたよね。

矢吹
付けている着衣よりも裸が撮りたいと思いますか?

篠山
そうね。服を着たり、メイクをしているのは、その子のイメージがついてまわるけれども、一糸まとわず脱いでしまえば、その人しかいないわけだから。その人のいいところを引き出すためには脱いでもらったほうがいいんですよね。

矢吹
私は、先生とお会いして、ヌードを撮っていただいてから、ヌードの強さをすごく感じました。

篠山
そう。だから、その人の心根とか心情がストレートに出て来るから、服を着ていたり、いろんなことするよりは、その人っていうのが強く出てくるよね。


カメラマンは指圧師





矢吹
撮影の時、先生は撮影現場の雰囲気作りはどうされているのですか?

篠山
この人を撮るんだって決めたら、ここが魅力的だよなって相手を好きになるんですよ。そうすれば相手もこの人は危害を与える人じゃないと思う。

矢吹
私も安心して撮ってもらえました。

篠山
カメラは悪く撮ろうとか、いやらしく撮ろうと思ったらいくらでも凶器になりますよ。やっぱり、撮っている人がそういう気持ちではなくて、この女性をほんとうに美しく、優しく包んで、当人が見てもみんなが見ても最高の写真として見られるようなものにしようと、その基本的な気持ちがないとダメだよね。

矢吹
だからなんですよね。私、撮られている時、安心感と光に包まれながらシャッター音がしているみたいな感覚でした。

篠山
そうでしょ。”カメラマン、指圧師説”っていうのがあって、指圧してもらっている時にツボをキュッキュッと押してもらったら、気持ちよくなるじゃない。

矢吹
あります。あります。

篠山
カメラも”カチャ”と、そのツボで押してくれたらすごく気持ちよくなっていくじゃない。

矢吹
なりますね。

篠山
それが下手なカメラマンだと、ただバチバチ撮って、ツボも何もないだよ。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるだろってやるだろう。あんなの当たりっこないんだから。

矢吹
先生、そんなにシャッター押さないですよね。

篠山
押さない。押さない。あっという間に終わるし。

矢吹
確かに早いですね。



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