おいしいワインを知る

杉山明日香さん(理論物理学博士・ソムリエ)×福岡伸一さん(生物学者)

2016

10.02


 
分子生物学者の福岡伸一さんと理論物理学博士でソムリエの杉山明日香さんによるキュレーターズトーク。今回は、杉山さんの専門分野でもあるワインにフォーカスにしていきました。

ワインと日本人の関係





旬を知る

杉山
ワインに関しては、知識があったほうが楽しめるとは思っています。例えば、お寿司屋さん行った時に、まぐろを出されて、「大間産のまぐろです」と言われるとテンション上がるじゃないですか。ここのこれがおいしい!とか日本人は食の産地や旬をよくわかっているんです。

福岡
旬というのは上旬、中旬、下旬って10日ってことで、10日ごとにおいしいものが、時間の関数として日本の四季の中で次々と移り変わっていくということ。それを逃さずに、日本人は追いかけてきたわけだからワインとは相性がいい民族なはずです。

杉山
ワインもいつ飲めばいいとか飲み頃があるんですよ。

福岡
あまり知識が多いとおいしくなくなると思われがちですが、おいしいものを見つけ出す上で人生、時間が限られているから浪費はしたくない。できるだけおいしいものをおいしい瞬間に飲みたいし食べたいので探るんです。自分が好きなものが好きであるためにいろんなこと知っているだけ。杉山さんに教えてもらったことですが、ワインが好きなのは自分の好きな銘柄があるから。それを決めるとその銘柄を軸に勉強できるんです。白だったらシャルドネ、赤だったらピノノワールが好きで、それを軸にどこのシャルドネが好きかとか、浮気せずに決めたところにいくのが大事。

杉山
浮気はたまにですね。



シャルドネ講座





福岡
シャルドネについて教えていただけますか? 

杉山
シャルドネはブルゴーニュ原産で、ぶどうもDNA鑑定の時代なのですが、シャルドネの親は、ブルゴーニュで自生していた黒ブドウのピノノワールです。ピノノワールの子どもでシャルドネの兄弟もそのへんのブルゴーニュに・・・。

福岡
だから私が、シャルドネが好きなんだね。

杉山
なんとなくの共通項があるんです。シャルドネは、”あなた色に染まりやすいブドウ”と呼んでいて、白ブドウを男性に黒ブドウを女性に例えて、お話することが多いんですけど、あなた色に染まりやすいというのは、シャルドネは世界中で栽培しやすい品種だからです。それぞれの土地で根付いき、それぞれの土地の土壌や気候を含めて、テロワールと表現するのですが、それをよく反映し、かつ、作り手さんの作り方もよく反映するぶどう品種なんです。樽で熟成させたら、樽の香りがきれいに出やすい品種でもあって、例えば、アメリカカリフォルニア州のナパバレーが一番アメリカの中で有名ですけど、カリフォルニアだとアメリカンオーク樽を使ってちょっと樽の甘めの香りがシャルドネに出ますし、ブルゴーニュの樽だとフレンチオーク樽ですけど、そうすると甘めというよりも香ばしさが出やすいので育ててくれた人のニュアンスが反映しやすいから、あなた色に染まりやすいシャルドネ男子なんです。 適応能力も高く、アメリカだけではなくてニューワールドだとアルゼンチンとかチリでも栽培されていますし、オーストラリア、ニュージーランド、どこの国でも栽培されています。そういう意味で1個の品種の中でいろんな国を試していくおもしろさもありますね。

福岡
シャルドネに合うお料理は何ですか?お寿司ですか?

杉山
樽樽したという言い方をするんですが、樽があまりきいているシャルドネだとお寿司の場合、魚の生くささを助長させる場合もあります。もし、樽のきいたシャルドネだとトンカツとか合いますね。ニューワールドのシャルドネとトンカツを塩で頂くとか、ちょっとレモン絞ってとか最高においしいです。

福岡
食べたくなります。

杉山
逆にブルゴーニュ地方でも一番北にシャブリ地区があるんですけど、ここのシャルドネは、もともと、石灰質土壌でその土壌の中に貝殻とかいっぱい入っているのでミネラル豊富で塩身も強いので昔からフランス人は生ガキに合わせたりとか、海老とか甲殻類とも合うんです。


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