人生認めたもの勝ち

夏木マリさん(歌手・俳優・演出家)×地曳いく子さん(スタイリスト)

2016

08.14


 
誰も教えてくれなかった「スタイル」の見つけ方を書いた書籍「着かた、生きかた」の中で、ファッションと生き方がいかにリンクしているのか述べている地曳いく子さん。夏木さんと地曳さんが、歳を重ねる中で見つけた自分ならではの”生き方”を語ってくれました。

自分のスタイルが確立した時期



夏木
地曳さんは、自分のスタイルを築いたのはいつ頃でした?

地曳
小さい時に親がウルトラコンサバで、テーラーで作ったものしか着なかったんですよ。でも太っていて、サングラスをかけていた。それがかっこいい!と思って。母は似合うものが少ないから、私にもピンクやレースを着せてくれなくて、小学校5、6年の反抗期が始まる前までは紺、白、水色、えんじ色の服ばかりでした。その後は、Tシャツ染めたり、ヒッピー、ロックな子どもになり、制服時代を通って、反抗して生きていたんです。顔がコンサバなので、コンサバの服が似合ってしまう。私のルーツはトラッド、コンサバ、ロックも好き。混ぜてしまえばと開き直った時ですかね。コンサバとロックの両方がツールですね。夏木さんは?

夏木
昔の芸能人はスタイリストがいなかったから、自分で買って、現場に行くのが大変でした。ヘアメイクも自分。だから失敗もたくさんしました。歌手なので衣装と普段着の落差つけたかったので衣装はセクシーな感じ。失敗を重ねていって、自分の仕事の形が決まった時にファッションは決まりました。歌手で仕事をスタートし、売れない時代はバブリーなイヤな芸能人な感じの洋服を着ていたんですよ。ブランドに頼っていた時代もあって、その後、演劇の時代は、スウェットをずっと着て、93年に印象派というパフォーマンスを始めた時に初めて自分らしくなった。顔も素顔を見せなかったけど、汗だくで自分の踊っている顔がスッピンでけっこう気に入ってるなと思った。その時から着るものもブランドとスポーツをミックスしたり、その辺からカジュアルになって、自分らしくなってきたんです。

地曳
時代もカジュアルになった時だったからタイミングも合ったんですよ。

夏木
10年前にやっと歌いたい歌を歌える時にTシャツとデニムになってきました。自分の生き方と、暮らしぶりと自分のフィロソフィーにファッションが合った時に初めて着るものが楽しめる。洋服は常に課題。

地曳
ほんと課題ですね。


今、大事にしていること





夏木
友人たちは一番大事ですね。自分のこととして考えると、60歳の時にやりきれていないものは何かと思った時に音楽だと思ったので、去年からライブハウスツアーを始めたんですけど、音楽は、今、再び支えとなっています。音楽によって、着るものも変わってきたし、気持ちよくなってきていますね。

地曳
ジャズ、ブルース、ロックの時など歌う曲によってもスタイルが違いますもんね。

夏木
ライブは自分の生き様で、ファッションと同じ。ライブはよくも悪くも自分をさらけだしてしまっているから、曲のテイストよりもライブ自体を私だと思っています。今はブルースとかロックをやっているけど、それにふさわしい出で立ちとか、気持ちいい洋服とか、失敗はまだあるけど、音楽とやりたいことと着ることが、やっと死ぬちょっと前にリンクしてきた。私らしくなってきたかなと思ってきています。

地曳
私は、後どれくらい元気でできるのか考えた時に、見る方の音楽、ライブが好きと改めて感じました。昔、ザ・ローリング・ストーンズの追っかけをワールドワイドでやっていたんです。学生の頃は、自分もアンダーグラウンド系、ノイズ系のバンドをやっていたのですが、50歳過ぎるまでは、小さいライブハウスには足が遠ざかっていました。今の若い子は英才教育を受けていて、音楽シーンもとてもおもしろいんんです。だから最近、気になるバンドがきっかけで、また、ライブハウスに通うようになって、バンTを着て変わってきました。私が好きだったのはこれだった!と、好きだったことを思い出した。ファッションの作り方も若く見える方向でやっていたけど、私にくる質問も「おばさんに見えないようにするにはどうしたらいいですか?」とか、でも、そんなの言っていいのは40歳まで。50歳過ぎてばばあにみえないとかおこがましい!とね。それって自分にも言ってしまって、だから、かっこいいばばあって何かなと思い、これからは、かっこいいばばあ路線を目指します。夏木さん大先輩です。

夏木
洋服も生き方も事実を認めるのがキーポイントで、年齢は記号だと思っているんだけど、この肉体を認めて、だったらどういうお洋服を着ればいいのか?いちばん気持ちいいのはどれか?が大事。

地曳
 それをなかったことにするから昔の人になってしまう。認めた上で今の時代に何が着たいのか、何がしたいのか、認めたもの勝ち。

夏木
認めたもの勝ち。いいお言葉いただきました。


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