ファッションの移り変わり
夏木マリさん(歌手・俳優・演出家)×地曳いく子さん(スタイリスト)
2016
08.07
お仕事で世界各地を訪れている夏木マリさんとスタイリストの地曳いく子さんは、他の国々と比べて、日本人のファッションをどう見ているのでしょうか。
日本のお揃い文化
- 夏木
- 欧米の方々は賢い洋服の付き合い方をしていますよね。
- 地曳
- そう!堅実なのか、ケチなのか。日本やアジアの人は、髪の毛の色や肌の色にそんなに差がないですが、欧米の人は生まれた時からブルネットもいるし、ブロンドも黒もいるし、肌も目の色も違う。小さい時から、みんなと違うことがわかっていて、人は人、自分は自分で育つと思うんですけど、日本は、なんとなく一緒じゃないですか。
- 夏木
- お揃い文化で教育されるからね。人と違うと叩かれる。私は、東京生まれだけど、一時期、まだツクシやオタマジャクシがいた大宮に引っ越したんですよ。母がファッション好きだったから私に1週間違う色の服を着せたら、七面鳥と言われていじめの対象になったんですよ。まだ昭和だから、いじめられる対象は洋服でした。それは欧米にはないですよね。
- 地曳
- 私は、下町生まれなので、どんな変な格好しても、”あのコ変わっている”で終わっていました。下町だから許された格好だった。
- 夏木
- その後、いじけましたもん。色や形が違うのは嫉妬の対象だったんだなと。
- 地曳
- とりあえず、みんな同じ格好をさせておきたい。制服を着たらみんな同じようになるけど、逆に海外の人が制服を着たら元から持っているものが違うから個性的になるんですよ。
ファッションのグローバル化による影響
- 夏木
- 今、海外に行く時に普段着ている服をそのまま持っていきますよね?昔は、旅行用の服があったのに。
- 地曳
- よっぽど温度差があるところ以外は、そのまま行きますよね。
- 夏木
- 昔は、新しい靴をおろして、靴づれをしていたのに。
- 地曳
- 機内持ち込みもそのままですよね。
- 夏木
- 旅を重ねるうちに、ある日気がついたんですよ。なんで、はりきってパッキングするのかと。普段のまま行ってもいいんじゃないかって。
- 地曳
- 足りなかったら向こうでクリーニングに出せばいいですしね。
- 夏木
- 昔は日本しかない、海外しかないものがあったけど、今では、世の中、どこでも同じものが溢れています。
- 地曳
- 今はネットで何でも買えますし。
- 夏木
- それが、おもしろくないっちゃ、おもしくない。
- 地曳
- グローバル化がいいんだか悪いんだか。
- 夏木
- よっぽど秘境の民族衣装ではない限り、この前、新宿で見たお洋服がパリにあったらがっかりするじゃないですか。
- 地曳
- 昔は掘りにいく感覚があったんですけど。
- 夏木
- 昔は、誰よりも先に紹介したいという思いがあった。
- 地曳
- 旅にそのまま行くようになったのは、スマホがでてからだと思います。昔はガイドブックもコピーしたけど今はなんでもスマホで調べられるので、持っていくものがぐっと減ったんですよ。
- 夏木
- ファッションもスマホの時代になった時に一歩止まって考えないといけなかったはず。
- 地曳
- 今みたいにお話をしながらでも洋服は購入できる。だからものが増える。本当は、減らしていける方向にいけたのに。そう思うと、この10年は、世の中のファッションが変わる大きなうねりの中にいたと思いますね。