「伝える」こと

大宮エリーさん(脚本家)×鈴木杏さん(女優)

2016

07.10


 
作家/演出家/画家など活動の幅を広げている大宮エリーさんと女優の鈴木杏さん。ともに、表現の中で「伝える」こと仕事にされているおふたりですが、ご自身の気持ちをどのように伝えているのでしょうか。


「言葉」を使った仕事


大宮さんは、2012年に、個展「思いを伝えるということ」展を開催。”思いを伝える”ことのせつなさや悲しさ、喜び、などの感情を訪れた人が再体験できるようなインスタレーション作品を発表し、話題となりました。



大宮
自分がこういう仕事をしているから、何でも言える人だと思われているけど、プライベートでは自分の気持ちが言えなくて、すごいイヤなこともイヤと言えない。あと、劇やコンサートの後に楽屋を訪れるのもキライなのよ。上手に感想が言えなかったり、自分の気持ちがうまく伝わらなかったら嫌だなと思って行くのが嫌になる。そういうのを直したくて、自分なりに努力していることがあって、それをイメージしたものをインスタレーションにしたの。

鈴木
電話のインスタレーションの作品は、みんなの声が優しくて、泣きそうになるくらいホッとした。

大宮
「孤独の電話ボックス」だ。私は、電話が苦手で、辛い時に寂しいとか電話できない。自分が落ちている時に電話がかかってくると出られない時があって。

鈴木
私も出られないわ。

大宮
暗いテンションだと心配されるし、暗いのが移ってしまうと思って。でも、たまたま出てしまったことがあって、相手から「もしもし」と言われているんだけど、ずっと私は、黙っていた。そしたら、だんだん「もしもし」が気持ちよくなってきて。心をノックするトントンみたいに。真っ暗い海の中、灯台がこっちだよと言っているような気がした。がんばってきた人は弱音吐けないから、そういう人には人気があったんだよね。杏ちゃんも言えないタイプなの?

鈴木
時と場合によるけど、言えないことのほうが多いかも。すごく考えてしまう。自分の思っていることが人に伝えるほどのことなのかな?とか、シェアしたい気持ちはあるけど、足踏みしちゃうことが増えてきた。20代前半は、根拠のない自信もあったけど、30歳を手前にして、もう少しひとつひとつを大切にしたくなってきたから、気持ちをシェアしたり、伝える時に言葉とか伝え方を大切にしていきたいと思うと、だだ漏れが少なくなって・・・。言葉というものが難しいと思うようになってきた。



人との距離感





鈴木
最近、演劇の現場にいることが多いけど、すごく厄介な作業だと思う。人が動いて、人がしゃべるから人との関係を描いているから、ものすごく人というものにどんどん入り込まないといけない。なんで、こんな大変な作業をわざわざしているんだろう?よっぽど人が好きな人じゃないとできないと思う。

大宮
人に興味ある?

鈴木
人に会うのは好き。演劇は、人が好きな人が集まっていると思う。緊張するけど、演劇の現場にいると守られているような安心感があるんです。

大宮
演劇の人たちは、みんな、よく一緒に飲んでいるよね。それは映像の世界と違うかもね。

鈴木
エリーさんは、人に興味ありますか?

大宮
人に会うのがそんなに好きじゃない。好きだけど、気をつかうし、人に会いたいけど会いたくない。

鈴木
寂しがり屋の独り好きだ!

大宮
そうだね。会いたいなとは思うけど、自分からは誘わないね。

鈴木
私も自分から誘わなくなってきた。

大宮
以前、なんでいろんな人と話せるんですか?と言われたことがあって、人に対して興味はないけど好意はあるの。街にある中華料理店に入ると、わたしに対して興味はないじゃない。そこで、話して「うまいです」っていうとそこで、好意が生まれる。あっちは私に対して興味はなくて、ただ好意しかないから、そういう時は話が弾むし、自分はそういうスタンスかも。

鈴木
見ず知らずの人と話すのは楽しい。犬の散歩をしていて話かけられたり、タクシーの運転手と話すのもけっこう好き。

大宮
私だめ。すごい話すけど疲れちゃう。緊張しちゃう。

鈴木
緊張するけど、人に話しかけられる人ってすごいなと思う。いい意味で。

大宮
仲いい人が多いよねとか言われるけど、そんなことがなくて、偶然なんだよね。

鈴木
偶然をキャッチするのが上手なんだろうね。





大宮エリーさんの個展
「シンシアリー・ユアーズ ー 親愛なるあなたの 大宮エリーより」
「公式ホームページ」
期間: 2016年5月28日(土)〜2016年9月25日(日)
会場:十和田市現代美術館


鈴木杏さんご出演の舞台
「母と惑星について、および自転する女たちの記録」
「公式ホームページ」
公演日程: 2016年7月7日 (木) 〜 2016年7月31日 (日)
会場: パルコ劇場


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