仕事をしていて最高の瞬間

有村 昆さん(映画コメンテーター)×湯山 玲子さん(著述家)

2016

04.17



映画コメンテーターの有村 昆さんと著述家の湯山 玲子さん。
多くのメディアで積極的に情報を発信されているおふたりが考える
今の時代に求められる仕事力とは?

仕事をしていて最高の瞬間


有村
仕事をしていて一番嬉しいのは、紹介した映画を観てもらって、「おもしろかった!」と言ってもらえること。
僕が映画評論家と名乗っていないのは、年に映画を1本から2本しか観ない人は日本人の半分くらい、約6千万人いるんですよ。
映画を好きな人は何もしなくても観るので、そういう方に向けて、さらに深く映画評論をするのは別の先生にお願いして
僕は6千万人に向けて、わかりやすい、キャッチーなマスに向けた解説をしています。
彼らが1本でも多く映画を観るほうが映画全体の売上げに貢献できるので。

湯山
それって社会性ってことだよね。それも、評論に入っていると思う。
例えば、今の世の中、女性たちはいろんな悩みを抱えているので、そういう人たちに刺さる映画だったら、彼女たちとブリッジする言葉を言ってあげないと
いけない。生活者ではないと映画は紹介できないと思う。




有村
よく女性でSFが苦手な方も多いと思うのですが、実は、SFは、人種差別やセクシャルマイノリティーなどの問題をエイリアンとかに置き換えているだけなんですよ。
映画は壮大なテーマだったりするけど、僕らの中にある問題を映画に比喩して投影しているので、それが伝わればいいなと思います。

湯山
私の仕事で言うと、女性の先輩として、大変なことになっている女性の生き方について語っています。
まだまだ男社会で、私にはいろんなトラップが見えるの!私も今まで実際に男社会でいろいろと噛まれてきて、熊どころかシャチにまで襲われてきたから(笑)。
それに触れた本が「四十路越え」で、読者が本当に人生において役に立ったという声を聞いた時は嬉しかったですね。




有村
僕らは「映画」という作品をいかに調理するかの立場。調理人の腕によって中華にもなるし、和食にもイタリアンにもなる。
人によって料理の仕方も違うように、いろんな意見を聞くのが最高におもしろんですよね。
どんな料理が出てくるのかな?それこそが、映画の文化だと思うんです。


求められているのは「編集」すること


有村
昔は、TVや新聞など向こうから一方的に情報が来ていましたが、
今は、インターネットが出来たことによって、情報をこっちから取りにいく時代だと思うんですね。
取りに行くと無限に情報がありすぎるので、今度はそれらを僕らプロがまとめるのが重要だと感じます。

湯山
ひとりまとめサイト!それ本当に重要ですよね。

有村
例えば、クラシックだったら、何を聞いたら分からない時に湯山さんが「選ぶベスト10」のようにまとめてくれる人がいないといけない。
それが今求められているニーズかなと思ってもいるんですよね。

湯山
編集ってそういうことじゃないですか!有村さん自体が媒体になる。個人が雑誌みたいなものになっているんだろうね。




有村
そうですね。その人が好きだから、観てみよう!という流れがあるのかもしれないですね。それに、私たちは
ラジオやWEB、イベントなどメディアに左右されないので、いろいろ発信ができる。だから個性がより大切なんじゃないかな。

湯山
個性を殺して一般論で語っても、その「まとめ」はあまりおもしろくないですよね。

有村
おっしゃる通りですね!

湯山
「個」が立ったほうが、コンテンツ産業をやろうとしている人には向いているはず。

有村
大型のチェーン店よりも個人店で専門店型のほうがおもしろいですよね。

湯山
昔の仕事のやり方は拡大発展でそれが喜びだった。でも今は、それをやると専門店の良さがなくなってしまう。
だから「成長ないし考え方」って言うのかな・・・。

有村
それ深いなぁ!成長した途端に薄まりますよね。ラディカルでなくなる。

湯山
成長もあるんだろうけど、生き残り方って今、試されているような気がするな。



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