暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
あなたは、正しく利用できていますか?誰もが暮らしやすい社会を築いていくために設置されたバリアフリー施設と設備ですが、使用者や利用方法によっては、本当に必要なかたが利用できない可能性も。今回は、「必要としている方へ バリアフリー施設と設備」というテーマで深掘りしました。
(青木)
「バリアフリー」の「バリア」は英語で壁のことですから、バリアフリーとは、様々な人が社会に参加する上で障壁になっているバリアをなくすことを言います。足立さん!「バリアフリー施設」や「バリアフリー設備」と聞いて、すぐに思い付くものはどんなものですか?
(足立)
電車やバスの優先席とか、車椅子のかたでも通れるように階段の横にスロープが付いているとか、あとは、エレベーターもバリアフリーになるんですかね?
(青木)
そうですね。最近、バリアフリー施設や設備が増えてきた印象ありませんか?
(足立)
どれも、以前からはあったけど、確かに、最近増えてきているなという印象はあります。
(青木)
そうですよね。社会には障害があるかたや、高齢者、妊婦さんなど多様なかたがいます。でも、これまでの社会は大多数の人に合わせて作られてきたので、そうでない人たちにとっては、「不便さ」や「困難さ」を生む障壁が多い状況でした。そのため、そうしたバリアを取り除いて、誰もが暮らしやすい社会を築いていこうという世界的な流れが起こり、日本も法律を整備するなどして、バリアフリー施設や設備を整えているんです。
(足立)
つまり、車椅子を使用しているかたなどが生活する上で「不便だな」と感じること、例えば、階段とか、道にある段差とか、そういう壁は、これまでの社会が作り出したものだから、今は、そうした不便さを取り除くために、バリアフリー施設や設備が増えてきているということなんですね。
(青木)
ちょっとした段差は気にならないかもしれないですが、車椅子のかたにとっては、ちょっとした段差も大きな障壁になりますもんね。
(足立)
そうですよね。
(青木)
ところが残念なことに、せっかく設けたバリアフリー施設や設備が正しく利用されていないケースがあるんです。例えば、電車やバスなど公共交通機関に設けられている優先席。あの優先席は「高齢のかた」「障害のあるかた、けがをされているかた」「妊娠中のかた」「乳幼児連れのかた」「内部障害のあるかた」、こうした方々が優先的に利用するために設けられています。ですから仮に、足立さんが優先席に座っているとして。
(足立)
日頃は座りませんけどね!
(青木)
そういうかたも多いと思いますが、仮に優先席に座っているとしても、優先席を必要とするかたが近くに来たら、席を譲りますよね。
(足立)
もちろん、譲ります!
(青木)
国土交通省が実施した最新のアンケート結果を見ても、「よく譲る」「ときどき譲る」というかたが80パーセント近くいます。しかし、その一方で、「ほとんど譲らない」「譲ったことがない」というかたが5パーセントほどいるんです。
(足立)
えっ、そうなんですか?5パーセント?譲らない理由があるということですか?
(青木)
ここからは国土交通省総合政策局バリアフリー政策課障害者政策企画調整官の和田光太郎さんと一緒に深掘りしていきます。
(足立)
和田さん、アンケートでは「優先席を譲らなかった」とありますが、どんな理由なのか聞いてもいいですか?
(和田)
はい。譲らなかった理由は、「体調不良・けがをしていたから」「自分が優先席を必要とする特性があるから」という回答がある一方で、「譲るべき相手かどうか判断がつかなかったから」「声を掛けるのが恥ずかしかったから」「気付かなかったから」「優先席以外が空いていなかったから」「特に理由はない」と答えたかたが一定数いました。
(足立)
つまり、後半の理由を答えた方々は「本来、優先席を必要としない人」ですよね。それでも席を譲らなかったというのは、ちょっとモヤモヤしちゃいますね。「譲るべき相手かどうか判断がつかなかったから」という回答がありましたけど、優先席に座っているのならば、一言「どうぞこちらへ」と声を掛けてもいいですよね。もしそのかたが必要ないかたであれば断るかもしれませんよね。
(和田)
足立さんのおっしゃるとおりでして、確かに内部障害のあるかたや妊娠初期のかたなどは、外見からは分かりづらかったりします。ただ、「マタニティマーク」や、「ヘルプマーク」を身に付けているかたを見掛けたら、是非、「こちらにどうぞ」と声を掛けていただきたいです。
(青木)
ちなみに「ヘルプマーク」というのは、赤色の下地に白色のプラスマークとハートが描かれているものです。この「ヘルプマーク」は、内部障害があり、周囲の人に配慮を必要としていることを知らせるマークです。
(足立)
そういうマークを付けているかどうかも、ちゃんと見ていきたいですよね。あと、「声を掛けるのが恥ずかしかったから」という理由もありましたよね。明らかに優先席を必要としている人が近くにいるのに、優先席に座り続けているほうが、私としては恥ずかしいかなって気持ちになっちゃうんですが、そうはならないんですね。
(和田)
「優先席を必要としている人に気付かなかったから」という理由もありましたが、優先席に座る場合は、周りに必要としている人がいないか、注意しながら利用するように心掛けていただきたいです。
(足立)
それで、さらに必要としているかたに気が付いたら、「こちらにどうぞ」という言葉が出るとうれしいですよね。
(和田)
はい。また、駅や商業施設などにあるエレベーターを利用するときも、必要としているかたを見掛けたら「お先にどうぞ」と声を掛けていただきたいです。高齢者や障害者のあるかたなどの中には、階段やエスカレーターを使えないかたもいます。また、ベビーカーもよく見掛けますよね。そういうかたにとっては、違う階へ移動するための手段は基本的にエレベーターしか選択肢がなかったりします。ところが、その肝心のエレベーターが混雑していて乗れず、困っているかたが少なくないんです。
(足立)
そもそも、エレベーターは障害のあるかたなどが優先的に利用できるものですよね。優先されるべきかたが乗れないことがあるんですか?
(青木)
実はそうなんです。国土交通省のアンケート調査で、「エレベーターに乗っている際、障害者、高齢者、妊産婦などのエレベーターを優先的に必要とするかたが途中で乗ろうとしたら、目的とする階以外で降りるなど、スペースを譲りますか」という設問に対して「譲ったことがない」「ほとんど譲らない」と答えた人が20パーセントほどいたんです。
(足立)
優先席のときよりも「譲らない」人が多いイメージですね。
(青木)
例えば、商業施設のエレベーターの場合、乗るまでに行列に並ぶケースがあります。そうなると、譲るのをためらってしまうかたが多いのかもしれません。
(和田)
確かに、そういうこともあるかもしれません。一方で、高齢者や障害のあるかたなどの中には、例えば、車椅子やベビーカーを利用しているかたのように、エレベーターしか移動手段がなかなかないんです。このため、階段やエスカレーターを利用できるかたは、必要とするかたが混雑したエレベーターに乗るときや、行列の最後尾にやって来たら、「お先にどうぞ」と声を掛けてほしいんです。
(足立)
確かに、私も、1、2年前に足をけがして階段の上り下りが全然できなかった時期があったんです。もし、あのときにエレベーターが混雑していて乗れなかったとしたら、本当に困っただろうなと思うんです。もし自分だったらと、想像力を働かせて、自分に置き換えて考えてみることって大切ですよね。
(青木)
そうですね。そして、車椅子を利用しているかたなどが困っているのは、エレベーターだけではないんです。駐車場、お手洗いでも困りごとが発生しています。ここからは、想像力を働かせて行動してほしいことを深掘りしていきます。
(足立)
和田さん、「車椅子を利用しているかたが駐車場やお手洗いで困っていること」があるということですが、これはどういうことですか?
(和田)
はい。スーパーマーケットや商業施設などの駐車場には、車椅子に乗っている人がデザインされたマークが描かれている駐車スペースがありますよね。
(足立)
ありますね!青い下地に白で車椅子マークが描かれているものや、車椅子マークだけが白で描かれているものがありますね。
(和田)
はい。このマークが描かれた駐車スペースは、バリアフリーに関する法令上、「車椅子使用者用駐車施設」と言われ、車椅子を使われるかたをはじめ、障害のあるかたに譲るなどの配慮が求められる場所です。この車椅子のマークは、「障害者のための国際シンボルマーク」と言って、車椅子使用者に限らず、障害のある全てのかたが利用できる建物や施設を示す世界共通のマークです。
(足立)
あれ?車椅子マークは、車椅子使用者に限らず、障害のある全てのかたが利用できることを示すマークですよね?でも駐車スペースの場合は「車椅子使用者用駐車施設」と言うんですね。
(和田)
はい。特に、車椅子を利用されているかたは、車に乗り降りする際、車椅子を車のドアの横に着けて、ドアを大きく開ける必要があります。ですから幅の広い区画がないと駐車しても乗り降りができないんです。そのため、その駐車区画の幅は、3.5メートル以上設けられることとされているんです。
(青木)
ところがですよ、足立さん。やはり、この車椅子使用者用駐車施設にも、本来、必要ではないのに、「一般利用者用が空いていなかったから」とか「急いでいたから」という理由で止めてしまう人が一定数いるんです。
(足立)
それはダメですよね。いくら、そのときは空いていたとしても、後から車椅子のかたが来たら、どこにも止められないですもんね。
(和田)
はい。そういうことを想像していただくことが非常に大事なんです。そのため、車椅子マークが描かれた駐車スペースには、一般のかたをはじめとする幅の広い区画を必要としないかたは駐車しないように、ご協力をお願いいたします。
(足立)
「ちょっとの間だからいいだろう」と安易に考えてしまうかたもいるかもしれないですけど、電車みたいに、見付けたら譲るということが駐車場はできないので、その「ちょっと」が、本当に必要としている人に大きな負担を掛けていることを想像してみてほしいですよね。
(青木)
和田さん、お手洗いも、車椅子のかたなどは幅の広いスペースが必要ですよね。
(和田)
はい。そのため、多くの施設には「バリアフリートイレ」があります。バリアフリートイレとは、高齢者や障害のあるかたなどの利用に際し、適切な配慮が必要なトイレを総称しています。従来「多機能トイレ」などと呼ばれていたものも、バリアフリートイレと総称することを推奨しています。このバリアフリートイレも、本来必要のない人に使用されるなどして、ここしか使えない車椅子使用者などが困ることがあるそうです。
(足立)
バリアフリートイレは主にどういったかたが使われますか?
(和田)
「車椅子使用者」などのように広いスペースが必要なかた、「オストメイト」用設備が必要なかたなどが使われます。「多機能トイレ」として整備され、おむつ交換台等の乳幼児用設備が設置されている場合には、乳幼児連れが使われる場合もあります。
(青木)
「オストメイト」というのは、人工肛門等保有者が使用するものですね。
(足立)
「オストメイト」という文字はよく見るんですが、果たしてこれがなんなのか?というのを今回、初めて知ったかもしれないです。
(青木)
そういったかたにとっては、本当に必要な設備ですからね。
(足立)
確かに、どのかたもバリアフリートイレでないと、用を済ますことができないんですね。
(和田)
はい。しかし、着替えなど本来必要のない人が使ってしまうことや、「多機能トイレ」として整備され色々な機能が集中し、利用が集中してしまう結果、車椅子使用者などが使いにくくなることがあるんです。
(足立)
バリアフリートイレは使ったことがなかったので、そうした困りごとがあること自体知らなかったというかたもいるかもしれませんし、利用するかたはそういった点も注意して適切に使わないといけないんですね。
(青木)
バリアフリー施設や設備が設けられているのは、その施設や設備がないと困るかたがいるからなんだ、ということを忘れずに行動しなければいけません。
(和田)
社会には、様々な困りごとを生み出す障壁、バリアがたくさんあります。それらを取り除き、誰もが暮らしやすい社会を築いていくために、バリアフリー施設や設備の適正な利用にご協力をお願いします。
(足立)
今日の話を聞いて、電車やバスの優先席に座っていたら、必要なかたが来たら譲るという、私だったら当たり前だと思っていたことを、なかなかできない理由を持っている人がいるということに驚きました。皆さん、是非、優先席に座った際には、必要とされるかたを見掛けたら譲りましょう。そして、エレベーターもそうですよね。車椅子のかたなどがいらっしゃったら、どのタイミングであっても、譲るということを心の中に留めておいてほしいなと思いました。
(青木)
私が印象に残ったのは、「車椅子使用者用駐車施設」についてです。ちょっとの間だからいいだろうと、安易に考えてしまう人がいる。これも分かるんですけれども、そのちょっとが、本当に必要としているかたにとっては、大きな負担になっている。やっぱりここは、想像力を働かせることが大切ですね。
【 関連リンク 】
・心のバリアフリー / 障害の社会モデル / 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000014.html