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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2024.01.28

企業も通報者も守ります!公益通報者保護法



企業の不正や違法行為を通報することは、企業とその従業員を守ることにつながります。今回は、「企業も通報者も守ります! 公益通報者保護法」というテーマで深掘りしました。

(足立)
「公益通報者保護法」は、以前もご紹介しましたよね。「公益通報」というのは、従業員が勤めている企業の違法行為を通報することでしたよね。

(青木)
企業の違法行為と言うと、例えば「自動車修理工場で自動車をわざと傷付け、保険金を不正請求する行為」や、「会社が不正なデータを使って国の認証を取得する行為」などです。

(足立)
昨年、似たようなケースがあって大問題になりましたよね。

(青木)
また、このほかにも、「無許可で産業廃棄物の処分をする行為」、それから、「報告の義務がある事故が起きたにもかかわらず行政機関などに報告を行わない行為」などもあります。このような企業の違法行為を公益通報により明るみにすることは、企業がその違法行為を改めるきっかけになり、それにより私たちの安全が守られ、社会に利益をもたらすことになります。ですから、該当するようなことがあれば、しかるべき場所に通報してもらいたいんです。

(足立)
でも、なかなか勇気のいる行為ですよね。自分が通報したことがばれてしまうと、会社での立場が悪くなったり、辞めざるを得ない状況に追い込まれたりする可能性もありますよね。

(青木)
だからと言って通報しないでいると、企業の違法行為は放置されたままになって、重大な事故が起こってしまうかもしれません。そのため、2006年に「公益通報者保護法」が施行されたんです。

(足立)
前回番組で取り上げたのは、この法律の一部が改正されたときでしたよね。

(青木)
はい。2020年に一部改正され、2022年から新しいルールが施行されているんですが、残念なことに、まだ十分に浸透しているとは言えない状況です。そこで番組では、改めて基本のルールと、改正された新しいルールを深掘りすることにしました。ここからは、消費者庁の公益通報・協働担当参事官付企画官の安達ゆりさんと一緒に深掘りしてまいります。

(足立)
安達さんは漢字は違いますけど、私と同じ「あだち」姓なので、今日は安達さんのことは安達企画官とお呼びさせていただきます。安達企画官、改めて公益通報者保護法の基本的なところから教えてください。

(安達企画官)
はい。「公益通報者保護法」とは、従業員が勤め先の不正行為を通報したことを理由に、解雇や降格、不自然な異動など、お勤め先から不利益な取扱いを受けないよう、通報者が守られるための条件などを定めた法律です。この法律で保護される通報者とは、企業などで働く従業員です。

(青木)
お勤めの人であれば、正社員、派遣社員、アルバイト、パートタイマー、業務委託先の従業員や派遣社員など、どんな雇用形態であっても保護されます。

(安達企画官)
これに加えて新しいルールでは、企業の経営に携わっている役員や、退職して1年以内の従業員も保護の対象となりました。

(足立)
辞めてからのほうが通報しやすいというのはありますよね。通報者の範囲が広がったんですね。

(青木)
これにより、退職金が支給されないなどの不利益処分からも守られるようになったんです。ただし、不正行為であれば、どんな通報でも守られるというわけではありません。「公益通報者保護法」で保護されるには、いくつかの条件があるんですよね。

(安達企画官)
はい。公益通報として法律上の保護の対象となる通報は、刑法や食品衛生法、建築基準法、労働基準法など、「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる」およそ500本の法律の違反のうち、刑事罰の対象となる行為です。これに加えて、改正後は行政罰につながる違反行為も対象になりました。

(足立)
通報先も決まっているってことですよね。

(安達企画官)
はい。公益通報の対象となる通報先は3種類です。一つ目は「お勤め先の内部通報窓口や上司」、二つ目は「行政機関」、三つ目は「報道機関など」です。

(足立)
勤め先には通報しづらいかたもいると思いますが、外部になら通報しやすいということもありますよね。

(安達企画官)
ただし、外部に通報する場合は、通報先によって、書面や証拠などが必要になり、注意が必要です。通報を検討しているけど、「条件を満たしているかどうか分からない」、「そもそもどこに通報したらいいか分からない」など、疑問点がある場合は、消費者庁に「公益通報者保護制度相談ダイヤル」を設けていますので、お問い合わせください。

(青木)
「公益通報者保護法」は、通報者が保護されるための条件を定めた法律ですが、その一部が改正され、事業者に対する義務も加えられたんですよね。

(安達企画官)
はい。改正された法律では、従業員が301人以上の企業や法人に対し、従業員などからの不正に関する通報に、適切に対応するための体制、いわゆる、内部通報制度を整備することが義務付けられました。具体的には、従業員のために内部通報を受け付ける窓口を設置すること、通報に対して調査をすること、また、通報で発覚した違法行為を止めることが求められています。

(青木)
企業の内部通報制度の整備は、2022年の6月から義務になっています。また、従業員数300人以下の中小事業者の場合は努力義務となっています。ところが、足立さん!帝国データバンクが昨年11月に行った調査によりますと、従業員が301人以上の企業で、「体制整備義務に対応している」と答えたのは、およそ6割。なんと4割の企業は、義務であるにも関わらず、まだ対応していない状況なんです。

(足立)
それって、法律違反ですよね?

(安達企画官)
はい。改正された法律では、体制整備義務に違反している企業や法人には、消費者庁が行政措置を行うことができることを定めていまして、助言や指導、勧告を行い、勧告に従わない場合はその旨を公表します。

(足立)
なぜ、こうした法律があるのに、まだ対応していない企業があるんでしょうか?

(安達企画官)
理由はいろいろあると思いますが、一つには、体制を整備する必要性が、まだよく理解されていないのかもしれません。公益通報者保護法が求める内部通報制度は、企業自らが、職場の不正を早期に発見・是正して、取引先や消費者からの信頼を守り、その結果、企業と従業員を守る制度です。従業員が不正行為を通報しやすいように、専用の窓口を設け、不正行為に関する通報に対して調査・是正する体制の整備が必要なんです。

(足立)
この法律は、通報者を守る法律であると同時に、企業も守る法律なんだということを、改めて言っておきたいですね。

(青木)
実は、消費者庁は、昨年12月に中規模企業を含む事業者1万社にアンケートを送付し、現在、対応状況を調査しているところで、その結果を4月に公表する予定なんです。

(足立)
まだ対応していない企業は急いで体制を整えないといけませんね。ただ、何から始めたらいいのか、分からない企業もあるんじゃないですか?

(安達企画官)
そうした企業を支援するため、消費者庁では、「内部通報制度導入支援キット」と名付けて、内部通報制度の導入に役立つ資料や動画を作成し、昨年12月に消費者庁ウェブサイトに公表しています。導入支援キットにある経営者向け動画では、内部通報制度の導入意義や手順を5分程度で解説していますし、従業員の研修に利用できる動画もあります。

(青木)
導入支援キットには、企業が策定しなければならない「内部通報への対応に関する内部規程」や、内部通報受付時に使用する「通報受付票」のサンプルも用意されています。

(足立)
具体的なサンプルがあれば、とても助かると思います。例えば、そのサンプルを元に、企業ごとにアレンジして作れますよね。

(青木)
ところで、足立さん。改定されたルールのうち、まだお伝えしていない、非常に重要なルールがあるんです。前回もご紹介したんですが、覚えていますか?

(足立)
非常に重要なルール?安達企画官、どんなルールでしたっけ?

(安達企画官)
はい。それは、従業員からの内部通報に対応する担当者の守秘義務です。企業は、内部通報窓口を設置すると同時に、通報の受付や調査を行う担当者を「従事者」として指定する必要があります。この従事者は当然、通報者が誰かを知り得る立場にあります。通報者が誰であるのか、決して、その秘密を漏らしてはいけないんです。

(足立)
従事者には守秘義務があるんですね。もし、その従事者が守秘義務を破ってしまったら、どうなるんですか?

(安達企画官)
違反した場合は、その従事者個人に対して30万円以下の罰金が科されます。

(足立)
しっかりした罰ですね。

(青木)
これは、企業の義務違反ではなく、あくまでも従事者個人の義務違反なので、罰も従事者個人が負うことになるんです。直接名前を漏らさなくても、通報者を特定させるような情報を漏らした場合も義務違反となるので、注意が必要です。

(足立)
改正された法律は、企業や従事者に対して、大きな責任を課しているんですね。裏を返せば、それだけ、通報者の秘密が守られるようになったということですね。

(安達企画官)
公益通報者保護法の広報により、消費者庁では、お勤めのかたが職場で「何かおかしい」、「職業倫理に照らして間違っている」と思うことがあったら、組織や経営者に対しても声を上げることを推奨する企業文化の醸成を促しています。こうした企業文化は、「スピークアップ・カルチャー」とも呼ばれています。経営者の皆様には、企業と従業員を守るためにも、内部通報制度を導入し、従業員の方々に、「是非、声を上げてほしい」と積極的に呼び掛けていただきたいと思います。

(足立)
今日は、前回よりさらに詳しく教えていただいたんですが、企業の内部通報制度の整備は、2022年の6月から義務になっているにも関わらず、4割の企業が体制整備をできていないところが気になりました。もしかしたら、どうやったらいいか分からない企業もあると思うので、そういう企業のかたには、「内部通報制度導入支援キット」があることを伝えたいと思いました。内部通報制度の導入に役立つ資料や動画を一式作成したものが、消費者庁ウェブサイトに公表されているので、内部規程のサンプルも見て、企業ごとにアレンジして、自分たちの企業に合った窓口を作っていってほしいなと思いました。

(青木)
「公益通報者保護法」は、通報者を守る法律であると同時に、企業も守る法律なんだという部分が印象に残りました。企業側もこうした意識改革があることで、体制の整備が進んでいくのではと思います。


【 関連リンク 】
・はじめての公益通報者保護法 / 消費者庁
 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/hajimete